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宇宙PBLに本気で挑戦 【週刊新陽 #8】

こんにちは。札幌新陽高校の赤司です。

今号は、探究コースの3年生が取り組んでいる『宇宙PBL(Project-Based Learning)』についてご紹介します。

担当の細川先生にお話を聞いてみました!

細川先生

インタビュー:新たな挑戦の『宇宙PBL』

- まずは・・・宇宙PBLって何ですか?

ズバリ「宇宙」をテーマに探究するプロジェクト型学習です。

宇宙はまだまだ解明されていないことも多く、それ自体に「問い」があふれています。だから生徒自身が課題を設定し、それを探究していくPBLのテーマとしてふさわしいと考えました。

また、未来を考えた時、「宇宙×〇〇」という仕事も増えるのではないかと。生徒たちにとって宇宙は身近なものになっていくと思います。

- どうやって始まったのですか?

去年の12月に『辛坊×ホリエモン 宇宙はこんなに近かった!!』というテレビ番組を観たのがきっかけです。北海道で宇宙開発に取り組む堀江さんと、辛坊さんが宇宙について語っていたのですが、その時「これからは宇宙だ!」と思い立ちました。そこから他の先生たちにも声をかけて準備を始めました。

- どんなふうに進むのでしょうか?

全ての教科で横断的に、1年間かけて取り組みます。探究コースとしても、一つのテーマで1年というスパンは最長です。

また、体育や家庭科など実技系の科目にしっかり関わってもらうのも新たな挑戦です。新任の久末先生(家庭科)もとても意欲的で、教科をこえてみんなでアイデアを出し合っています。

とはいえ、1年間宇宙だけということではなくて、教科ごとに良いタイミングを見ながらメリハリをつけてもらう感じです。

- 具体的にどんなことをするのですか?

今はインプット学習です。6月まで全ての教科で知識を得ていきます。
先日は、連携校である佐賀の東明館高校と合同でNEC様のオンライン講演会がありました。来週はオンライン調理実習で宇宙食を作ります。宇宙ビジネスコンサルタントのスペースアクセス(株)代表の大貫様による講演会も予定しています。

7月には中間報告を行います。偶然、宇宙PBLに取り組む他校さんと繋がることができたので、合同発表会を企画中です。

そのあとはグループ学習に入ります。7月〜10月までは、4人1チームで「宇宙×〇〇」をテーマに探究します。〇〇はなんでもありで、生徒が相談して決めます。

11月〜12月は3チームが合体して12人1チームとなり、グループ学習を発展させていきます。そして最後は49人全員で、卒業制作となるようなものを。

- 創るんですね?

プロダクトや作品、コンテストへの参加、企業との商品開発、など、スタイルはなんでもいいのですが、全4ターム通してアウトプットがあるようにデザインしています。探究コースのアドミッションポリシー「多様な人と協働し、新たな価値を創り出すという強い意志」に合わせて、新しい価値を創るという体験は意識しています。

NECさんから3Dプリンターをお借りしたので、早速コップを作ってみたんです。まずは教員で実験的に。かなり盛り上がって、学校が施錠される時間ギリギリまで粘ってしまいました。

早く生徒たちにも作らせてあげたいです。3Dプリンターが使いたいから学校に行く、という生徒も出てくる気がしています。リアルな場でリアルな体験ができるということがモチベーションにもつながるのではないかな、と。

- 生徒たちのワクワクする様子が浮かびますね!宇宙PBLをやるのは3年生とのことですが、これまでの2年間の学びはどうつながると思いますか?

まず、コンテンツの掛け合わせで発想が広がることは考えられます。SDGsアイヌについて探究してきた生徒たちなので、「宇宙×SDGs」だったり、アイヌPBL宇宙PBLを掛け合わせるとどんなものが生まれるのか、楽しみです。

それから、デザイン思考ミネルバプログラム(*)で学んだことを宇宙PBLの中で活用するという場面も出てくると思います。すでに、「自己抑制力が働いてる」という脳の実行機能に関わる言葉が休み時間に飛び交ったりしてます(笑)。
(*)ミネルバ大学のカリキュラムの一部を高校生向けにリデザインした「学び方を学ぶ」プログラム。脳神経科学に基づいて設計された連続的なセッションで、新陽高校の探究コース2年生(現3年生)が昨年度参加した。

- これまでの点と点が繋がっていきそうですね。ちなみに、生徒たちはどんな分野に興味がありますか?将来の夢などは。

進学先としてリベラルアーツを考えている生徒は多いような気がします。心理学や脳科学に興味がある子も。自然オタクの先生の影響を受けて、自然を学びたいという子も増えました。

進路については、探究コースの生徒は先を見据えて選ぶ傾向が強いと思います。こういう仕事に携わりたい、こういう分野に興味がある、といったところから進学先を探す。探究コースや教育に関わりたい、なんて言う子もいます。

- 宇宙PBLの話に戻りますが、困っていることや課題はありますか?

やはり完全オンライン授業の中で、登校しない環境でのPBLという課題はあります。でもオンライン上でも思いを形にできることはありますし、オンラインだからできることもある、と思っています。色々な事例も参考に、試行錯誤しながらやっていきたいです。

- 最後に、あらためて細川先生の宇宙PBLへの想いを聞かせてください!

最初に言った通り、1年間かけて全教科でやるフルPBLは初めて。生徒も教員も未知の領域への挑戦です。「これをやり遂げられたら、宇宙一に本気で挑戦したと胸を張って言える」と生徒とも話しています。

宇宙PBLが、より大きく、より深い学びとなって、生徒一人ひとりにとっては高校3年間の集大成になればと思っています。

東明館高校と合同オンライン講演会

5月25日、佐賀の東明館高校と合同での宇宙講演会に、私も参加させてもらいました。

前半は、人工衛星搭載機器の開発に携わったNECスペーステクノロジーの猪又様と、英語の先生でありながら宇宙教育セミナーで講師を務めるなど宇宙分野で有名な東明館の山下教頭先生による講演でした。

宇宙事業の話からご自身のキャリア、生き方にまで広がるお話は大変興味深く、聞き入ってしまいました。お二人の魅力にすっかり生徒たちも感化されたようで、質問や感想でzoomのチャットも賑やかでした。

後半は、東明館と新陽高校の生徒が混ざってグループセッション。

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今年の3年生は、東明館の生徒さんたちと関わるのは今回が初めて。でも「Jamboard普段から使ってますか」という最初の質問が、最後には「将来、何になりたいとかある?」とかなり踏み込んだ会話に発展していたところを見ると、あっという間に打ち解けたようです。

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終わったあと、一人の生徒に感想を聞いてみたら「同じ探究同士、なにか近いものを感じて楽しい時間でした!これからももっと関わっていきたいです。」と答えてくれました。

学びの場におけるコイノベーション(協創)

細川先生の3Dプリントの話を聞きながら、We-Steinsのオンラインスクール『COILS SCHOOLツリーハウスの学校』での一幕を思い出しました。

東は福島、西は岡山、そしてオーストラリアのシドニーからオンラインで集まった小学生が、建築家や大学院生と繋がり、場所と時間を超えて協創するプログラムです。(詳細はリンク先コラムをご覧ください)

学びの場において、イノベーションを起こせる人材の育成のためには協創(Co-Innovation)するプロセスが重要です。そしてそのプロセスで、大人も子どもも真剣に楽しめるかがコイノベーションを生む鍵だと思っています。

新陽高校・探究コースの宇宙PBLでは、先生と生徒のワクワクが伝播し合い、時空を超えたコイノベーションがたくさん生まれそうで、これからも目が離せません。


【編集後記】
細川先生は、探究コース3年の担任を受け持つ国語科の先生です。新陽高校の先生たちは本当に多才&多彩なのですが、特に国語の先生たちは変わり者が多い(←褒めてます)。そういえば、自分の高校も国語はキャラの濃い先生が多かったような・・・。
STEAM教育に関わっていると理系科目や芸術系の先生とお話することが多いのですが、教科横断やプロジェクト型学習の要となりやすいのはもしかして国語の先生なのではないか、と思っている今日この頃です。

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