見出し画像

ファーストペンギンとして不条理に挑戦し続けることを決めた卒業生の話。 【週刊新陽 #21】

すっかり涼しくなり、朝晩は重ね着しないと風邪をひきそうな札幌です。

連日30℃超えだったのが嘘のようにお盆前には一気に冷え込み、そのあと最高気温20℃前後をキープしつつ時々夏日があって、また涼しくなる。こうやって北海道の秋に向かっていくのでしょうね。

そんな夏の終わりのある日、卒業生が学校に顔を出してくれました。

在校当時から面識はあったもののちゃんと会話したことがなく、いちどゆっくり話を聞いてみたかった新陽生の1人で、私からのリクエストに快諾して来校してくれたのです。

「新陽、変わりましたね」

今年3月に卒業した米田尚輝(よねた なおき)さんは、在学中に国際ロータリーの国際親善大使としてアメリカ留学した新陽生。

彼を卒業後も応援している高石大道先生と一緒に、インタビューは始まりました。

画像1


- 学校に来るの、ひさしぶり?

ひさしぶりです。なんか懐かしいですね(笑)。新陽、変わりましたね。

- え!変わったと思う?(ちょっとドキドキ)

はい。メディアで以前よりも見る気がするし、SNSなどの発信多いのかなと。Webサイトもガラッと変わりましたよね。

- 卒業生がそういう変化に気づいてくれるのは嬉しい。どんなイメージか、もう少し聞いてもいいですか?

カリキュラムも単位制になると聞きました。変わったというか、進んでいる感じがします。Webサイトは外資系コンサルみたいな・・・多様性とかオープンな感じ。いいですよね。

- それは過分な評価をありがとうございます(笑)。受験生はもちろん、在校生や卒業生、それから新陽に関わってくださる多様な方とオープンに繋がりたくてサイトをリニューアルしたので、その感想は正直すごく嬉しいです。ところで、米田くんは今なにしてるんですか?

いろいろです(笑)。

最近のメインは、荒井ゆたか事務所のインターンですね。選挙に向けた戦略を作ったり、ボランティア統括したりしてます。

それから、Thornという、児童虐待という社会課題をテクノロジーで解決するNGOでもインターンしています。ThornのCEOを説得して財団を作れることになったので、その準備もしています。(インタビュー直後、インターンから、国際戦略作成チームのメンバーに昇格したそうです!)

それから国際ロータリーでグローバルアンバサダーの活動も。これはロータリーのビジョンを達成するための活動を行うために、世界で5人選ばれるんです。

僕は国際ロータリーのおかげで留学したけど、もっと「挑戦できる留学プログラム」にするために変えられることがあると思っていて、そういうことを提案したりしてます。恩返しになればいいなと。

本気で挑戦することの意味を探しに留学

- 新陽在学中、留学した理由を教えてください。

実は、もともと自信がなくて、何をしたらいいか分からないままサッカーばかりやってました。高校は、「本気で挑戦する人の母校」というキャッチフレーズと校長の荒井優さんに魅了されて新陽に入学し、本気で挑戦する意味を探し続けていました。

色々な人に会ってみたいと思って留学を考えたとき、最初にトビタテ!留学JAPANに挑戦したんです。

その時会った鳥居さん(株式会社公文教育研究会)に、「どこの国に行くべきかまだ分からないです」と正直に言ったら「わからないことも良い答えの一つだよ」と言ってもらえて。トビタテ!に挑戦すると決めてから、世界が広がったと思います。

結局、国際ロータリーの交換留学プログラムでアメリカに行きましたが、トビタテ!で自分の留学プランをゼロから練ったことは、すごく良い経験でした。

画像2

《ロータリーのジャケットを着て見せてもらいました》

- 現在、海外の大学に進学するために準備中と聞きました。

留学中の経験から、大学では、貧困や児童虐待という問題を解決するためにビジネスを学ぼうと思っていたのですが、今は、国際関係学・開発学を専攻するつもりです。この分野はイギリスが起源で、だからこそレベルも高いのでイギリスの大学を目指しています。

様々な社会課題は、いろいろな状況が絡み合った結果起きていて、たとえば貧困と誘拐は根っこのところで繋がっていたりします。

誰も解決できていないし、自分もまだ解き方を見つけられていません。だからそれを探すために大学に行きたい。そして同時に、その解決の方法や必要な知識を学びたいんです。

「この問題は僕らの世代で終わらせる」

- 社会問題に取り組もうと思ったきっかけは?

留学中、自分の誕生日に友達が誘拐されました。

一緒に遊んでいた広場で解散したその時、彼女は2人の男に連れ去られてしまったんです。一瞬の出来事でした。

追いかけたけど追いつけなくて、1週間後、ホストファミリーから彼女が遺体で見つかったことを知らされました。しかも臓器を抜き取られゴミ箱に捨てられていたと・・・

アメリカに行って英語ができなかった僕に親切にしてくれて仲良くなった友達で、その事件は本当にショックだったし、思い出すとつらい。今でも時々あの場面が夢に出てきます。

それから色々調べたら、『子どもの誘拐(失踪)』というアメリカの社会問題についてだんだん分かってきて。臓器売買とか、性被害に遭って戻ってきた子が社会復帰できないことも知りました。

そこからNGO団体Thornに出会い、Thornに参加することになったんです。この問題は、正直、事実と向き合うだけで苦しくて目を背けたくなることも多い。でも、

彼女の死を無駄にはしたくない。
誘拐、性虐待、人身売買は僕らの世代で終わらせる

と思い、『誘拐や性虐待から戻った子のサポート』と『この事実をもっと社会に知ってもらうこと』を目的に財団を作ることを提案しました。ThornのCEOに30回くらい話をして、最終的に承認してもらいました。

(詳しくは、米田くんのnoteをぜひお読みください。)

不条理な世の中。でも諦めない。

- とにかく米田くんの行動力がすごいと思います!新型コロナウイルスに関する情報をまとめた州のWebサイトも作ったのですよね?

留学中に新型コロナウイルスがアメリカに上陸して、学校もパニックになりました。

様々なデマ情報が出回っていて正しい情報が必要、と思っていたところに、自分がCOVID-19に感染してしまったんです。でもどのサイトにも、感染したらどうすれば良いか、どのようにして他の人に感染させてしまうのか、などの情報がなかった。

ならば自分で作ろう!と思いました。

すぐに友達に声をかけて、情報を集めて整理し、2週間でサイトを構築し、ワイオミング州に提供しました。

その後、州の保健局が引き継いで、僕たちも特別対策室に加わりました。今もそのサイト(以下)は使われ続けています。

他の州でどんどん感染者数が増える中、ワイオミング州だけは感染拡大を抑えられたとして、州から表彰も受けました(僕が恩賞をもらうくらいなら医療従事者の方々に回してほしいと辞退しましたが)。

一方、保健局の特別対策室で構築に参加している最中もアジア人や高校生であることで批判や嫌がらせをされたし、街ではCOVID-19に関わる偏見でアジア人が差別され、僕も銃を向けられたことがあります。

日本にいるだけでは気づくことも経験することもなかった不条理や不平等に、何度も直面しました。

でも、僕は行動し続けた。失敗も何度もしたけど、行動し続けるしかないと思ってやりました。

ワイオミング州の感染拡大を止め医療従事者への負担も軽減できたのは自分が行動したから、という自負があるし、他のいろいろなことも、行動したからこそ挑戦につながり、自分の学びになっています。

チャンスは待つんじゃない、つかむもの。

- 新陽のスローガン「本気で挑戦」をまさに体現してますね。そんな米田くんから、後輩はどんな風に見えますか?

まず、海外留学を考える新陽生が続いていってほしいです。たしかに英語やエッセイは難しいけど、新陽での出会いと原体験は留学にも通用すると思うから。

面白い人がたくさん来たり、インターンなど外に出て挑戦する機会があったり、そういう環境が新陽では当たり前だけど、実は普通のことではないんですよね。単位制になったら、それがもっと広がりそうだと思ってます。

でもみんな恵まれていることに気づいていないんじゃないかな。それに気づかず行動しない人はもったいないです。環境を活かせるかは自分次第。チャンスは自分で取りに行かないと。

例えば、どんなに勉強の出来る大学生がインターンで外に出ても、「インターンで終わる」ことがほとんど。大事なのはインターン生としてその企業で働いたことではなくて、実はその後に何かしらのアクションを起こすことだと思っていて、まさにそのアクションの中で新たな経験や発見、繋がりが出来てくると感じています。

例えば、赤司さんのことだってもっと利用すれば良いのに・・・利用するなんて言ってすみません(笑)。

世界的なコンサルティングファームで働いていた人に高校生が会う機会はなかなかないけど、その人が校内にいるなんてラッキーじゃないですか。赤司さんや大道先生のように外と繋がっている先生たちを、在校生はもっと使ったら良いと思います。

(「いいんですよね?」と確認されたので、「もちろん!使い倒してほしいです。」と答えました。そして、米田くんは9月21日に開かれる探究コース生徒向けのキャリアガイダンスに登壇してくれることになり、そこで『校長や大道先生の上手な使い倒し方』を話してくれるらしい。在校生のみんな必聴です!)

新陽の先生たちは、挑戦しようと自分で行動しさえすれば、本気で応援してくれるし一緒に喜んでくれる。そういえばロータリーでの留学が決まった時、大道先生がめちゃくちゃ喜んでハグしてくれて、ちょっとびっくりしました(笑)。

とにかく本気で応援してくれる先生がいるのは、新陽に入ってよかったと思う一番の理由です。そこは今も変わっていない気がします。

画像4

(本校Webサイトの卒業生ストーリーページにも、米田くんに登場してもらっています。ぜひご覧ください。)


【編集後記】
話はつながり、広がり、気づけばインタビューは3時間を超えていました。米田くんの話を聞かせてもらって、NPO法人テラ・ルネッサンス創設者の鬼丸さんの「僕たちは微力だけど無力じゃない」という言葉を思い出しました。あまりに大きな課題や不条理に向き合うと、「いったい自分に何ができるのだろう」とフリーズしてしまいそうになります。ですが、その葛藤やネガティブな感情をパワーに変え行動すれば必ず誰かが一緒に動いてくれるし、少しでも前に進めば大きな変化につながるということを、米田くんは留学中に何度も経験したのだと思います。これからもファーストペンギンとして先例のない挑戦をしていく彼を、心から応援しています!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?