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自分の未来の選択肢を増やすということ 【週刊新陽 #20】

「なんで勉強しなくちゃいけないの?って、小学4年生に質問されたらどうこたえる?」

と、先日、友人から聞かれました・・・そしてこれ、わりとよくある質問だと思います。

この質問を聞いてふと考えるのは『なぜ、「勉強しなくちゃいけない」と子どもが思ったのか』ということ。「しなくちゃいけない」には色々な背景がある気がするのです。

勉強がつまらないとか、勉強しても成果が感じられずツラいとか、あるいは先生や親から「やりなさい」と言われたり、そのために自分がやりたかったこと(遊びとかスポーツとか)を制限されたり・・・その子が(自分の意思と反して)やらなければいけないと感じた理由は何なのかが気になります。

自分に置き換えても、学んだほうが良いとわかっているけどなかなか手が出せないことや続かないことってあります。でも、学ぶことで新しい世界との出会いがあったり、人の役に立てることが増えたり、やっぱり良いことの方が多いと思うのです。

「なぜ勉強するのか」という問いへの模範解答は、たぶん、ありませんよね。

だからこそ、子どもが何かを学んだことによる楽しいとか嬉しい経験を積み重ねていって、一人ひとりがその答えを見つけてくれたらいいなぁと思います。

全校集会で奨学金をテーマにトーク

8月16日は全校集会でした。Youtube配信のため残念ながら私からは生徒たちの顔は見えませんが、一人ひとりどんな夏休みを過ごしたかな?元気かな?と思いながら話をしました。

さて今月の全校集会のテーマは「奨学金」。

大学に行きたい人が、自分に合う奨学金を5分で見つけられるサービス「Crono My奨学金」を立ち上げ運営されている高瀛龍 (コウインロン)さんからお話を伺いました。

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高さんとの出会いのきっかけは、NPO法人キッズドアの渡辺由美子さん。

キッズドアは子どもの貧困支援に特化したNPOで、昨年出された教育資金に関する小冊子「子どもの夢をかなえる『お金』の準備方法」がとってもためになるのですが、そこにCrono My奨学金が紹介されていました。(冊子の無料プレゼントはすでに終了していますがPDF版がダウンロードできます。)

原体験から社会起業家へ。若者の挑戦を本気で応援!

Crono My奨学金は奨学金の利用者と提供者のマッチングサービスです。

このサービスが生まれた背景には、高さん自身の体験と、奨学金にまつわる様々な事情があります。

実は日本の大学生のうち約4割が利用しているといわれる奨学金ですが、貸与型(将来返さなくてはいけない、つまり借金)の利用者も多いのだそうです。そしてその理由が「自分が使える給付型があるのを知らなかった」。

2021奨学金オンライン説明会

一方、国の提供する就学支援制度の対象規模は51万人(4,880億円)、民間の提供する給付型奨学金は4280制度(約17万人/429億円)あります。

でも、

・奨学金の情報のフォーマットや告知方法がバラバラで検索されづらい
・奨学金を運営しているのが小規模な財団や企業の場合、余力がないため十分に広報されていない
・そもそも、あることを知らないので検索もされない

などの理由で、使いたい人のところに届かない現状。

高さん自身、貸与型の奨学金を利用した経験があり、その返済のために留学を諦めたとのこと。同じような思いをする若者が一人でも減るようにと受給者目線での奨学金プラットフォームの構想は2018年頃から始まっていたようです。

そして、コツコツ集めた奨学金情報や財団・企業と築いたネットワークを、どのタイミングでローンチするか準備していた中で起きた新型コロナウイルスによるパンデミック。若者の未来にも大きな影響が出てしまうと考え、昨年5月、急遽β版がリリースされました。

高さんの挑戦についてはぜひこちらの記事もお読みください。【コロナで進路を閉ざされる若者を救え。日本初奨学金プラットフォーム『Crono My奨学金』の取り組み@キャリアハック】


奨学金リテラシーを高めよう!

My奨学金は無料で登録でき、かつ自分に合った奨学金を簡単な操作で探すことができます。

このサービスがなかったら、生徒や保護者が自分で探すか、学校の先生が調べ尽くしてサポートするしかなく、でなければ機会と出会えず進路そのものを諦めざるを得ない若者が出てしまうかもしれません。

そこでCronoと新陽高校は、奨学金に関する連携活動を行なっていくことにしました。奨学金ソムリエ相談サービスの連携校としては全国の高校で第1号です。

そして、奨学金に関する知識だけでなく奨学金制度への理解や情報収集・活用能力を含めて「奨学金リテラシー」と定義しました。

リテラシー(literacy)とは、もともと「読み書きの能力」や「識字率」の意味ですが、ビジネスシーンでは特定の分野と合わせて「その分野における知識や活用能力」といったニュアンスで使われます。

Crono × 札幌新陽 奨学金における連携活動について

この連携を通して、今後、生徒や教員がCrono My奨学金を使いながら奨学金リテラシーを高めることを目指します。

新陽では外部との連携を積極的に行なっていますが、これは教員や保護者の努力だけではどうにもならない情報収集やノウハウについて外部の力を借りることで、生徒たちの挑戦の機会が増えることが目的です。

同時に、外部や大人からサポートしてもらうだけではなく、高校生との連携が先方のプラスになれば、とも考えています。直接的でも間接的でも、何かに貢献するという経験はきっとかけがえのないものです。

今回も、高さんからは「ある意味まだ開発中のサービスなので、どんどん使ってどんどんフィードバックしてください!」と言っていただきました。

生徒たちには、自分のために使うことが同時に誰かのためになるという体験を通して、そうやって社会は協創していくんだということを感じてもらえたらと思っています。

大学に行くのはなんのため?

奨学金で大学に行く、それは決して手軽なことではありません。

Crono My奨学金を使って自分に合う奨学金が見つかり、奨学金ソムリエのサポートを受けて複雑な手続きをクリアできたとしても、奨学金をもらいながら通い続ける間に満たさなければいけない要件がある場合もあるし、そもそも、学校に通い学び続けることは簡単ではないのです。

それでもなぜ大学に行くか、行かないといけないのか、という問いは(最初の「勉強しないといけないか」と同様に)よく出ます。

この問いを、高さんにぶつけてみました。

「大学に行く必要がない」という考え方もあると思います。今は大学に行かなくてもネットで勉強できるし、大学に行くよりやりたいことがあるならそれを早くやった方がいい。IT系の社長などからよく聞くイメージの意見です。

一方、就職の機会を考えると、日本では今はまだ、大学を卒業しておいたほうがいいのでしょう。お給料も大卒と高卒で違いますから。

その上で個人の経験から言うと、自分は大学に行って良かったと思っています。

大学進学のきっかけは、将来の経済面を考えて経済学を学ぼうと思ったこと、それから就職機会が増えるだろうと考えたことでした。そこで学んだことも役に立っていると思いますが、自分は、一緒に学んだ人との出会いが一番「大学に行ってよかったこと」です。社会人になっても繋がっている大学時代の友人がいて、キャリアに関わっていたりします。実際、共同創業者は大学のゼミの先輩です。

大学での出会いが、私にとってなにより価値があるものだったと思っています。

高さんは、”友達や家族などがいるから幸せになれるタイプ”と自己分析されていて、だから出会いや人との関わりが大切なのだそうです。

最後に、生徒たちへのメッセージとして、こう話してくださいました。

人によって、何が大切か、どういう形で将来を捉えているかは違います。だから自分のそれを知った上で、どうしたいか、進学すべきか、どこに進学するか、を考えると良いのでは、と思います。
まぁ、自分も高校生の頃から考えていたわけではなかったのですが(笑)

***

今年の全校集会は、第一線で活躍する様々な方をゲストスピーカーにお呼びする校長対談企画としています。

今回、高さんにお願いした理由は、奨学金によって進路の選択肢が広がる生徒が一人でもいたらいいなと思ったのはもちろんなのですが、もう一つ、高さんの経験談や想いを生徒たちに聞いてほしかったからでした。

高さんのお話は、期せずして出会いと原体験という新陽が大切にしていることとつながりました。(あとで、事前に打ち合わせして仕込んでいたのでは?と同僚から言われたほどです・笑)

あらためて、人生を変える出会いや原体験ってあるなぁと思いつつ、これからも多様な経験談を生徒たちに届けたいな、と感じました。

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【編集後記】
今号の見出し、そして上の写真は、NYのコーネル大学に留学中の友人が「学校が丘の上にあって、今日の景色があまりに綺麗だったから」と送ってくれたものです。

彼女は以前ホテル業界で働いていましたが、もっとホスピタリティを学びたい!と会社を辞めてコーネルと京都大学の国際連携コースに通っています。
社会人になってからわざわざ大学に行く人は、自分で意味を見出しモチベーションがあって通う人ですが、高校を出て大学に行くのだって本当は同じなはず。行きたいと思えば行けばいいし、行かない選択肢だってあります。何をやりたいかまだ見つからないからとりあえず大学に行くのもアリです。

でもどうせ行くなら、そこでの意味を自分で見つけられたらいいですよね。そして高校は、そこにつながるための時間なのかもしれません。


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