生徒の数だけ学びを叶えるための挑戦 【週刊新陽 #81】
新陽高校が掲げているビジョン2030『人物多様性』には、達成に向けた『10の取り組み』があります。
その最初にあるのが「“生徒の数だけ学びがある”を基本理念とし、誰一人取り残さない教育を実践する」というアクションプラン。10の取り組みはどれも重要ですが、多様な生徒がそれぞれ主体的な学習者として自立し、自ら道を拓いて行くようになるには、やはりこの1つ目が大事だと考えています。
今週は、このビジョン実現に向け新陽が着手し始めた挑戦をお伝えします。
自分の学びは自分で決める
「生徒の数だけ学びがある」は新陽の校訓『自主創造』に基づいた理念であり、特に、今年度始まった単位制のカリキュラムにおいて大切にしているコンセプトです。
このコンセプトを実現するために生徒に取り組んでほしいと思っているのが「自分の学びは自分で決める」こと。入学してから半年、宿泊研修でのコース選択やリクリチャンネル(*)の講座選択、ヒューマンライブラリーのゲストスピーカー選びなど、生徒たちは自分で選ぶという経験を積んできました。
そしていよいよ今月始まったのが、2年次以降の科目選択ガイダンス。自分の学びを自分で選ぶビッグイベントです!
新陽の単位制カリキュラムは、1年次こそ必修科目で固められていますが2・3年次になると必修科目+選択必修科目+自由選択科目の組み合わせとなるため、生徒一人ひとりが選択必修と自由選択から授業を選んで自分の時間割を作らなくてはなりません。
たぶん小学校以来、大人が決めた時間割どおりに取り組むことに慣れてきた生徒たちにとって「自分で選んで決める」初めての経験。そして新陽の先生たちにとっても初めてのチャレンジです。
自分で決めた学びを実現するため、興味関心や希望の進路などから逆算して、自分が学びたい科目、自分に合った学び方、自分らしい時間の使い方など様々に考えながら、じっくりしっかり科目選択してもらいたいと思っています。
一人ひとりが学べる共同体
生徒が自分で選んだ中で自分らしく学ぶこと。それが、「誰一人取り残さない」教育を目指す上でとても大切なのではないかと考えています。
新陽が取り組んでいる『学びの共同体』も、子ども一人ひとりが自分らしく学べることを目的とした活動です。
昨年度から、『学びの共同体』による学校改革を進めてきた東京大学名誉教授の佐藤学先生や北海道大学大学院教育学研究院教授の守屋淳先生を講師に招き、他校や他地域の学校の先生にも参加いただける公開形式で授業研究会を行なってきました。
先週の10月14日(金)は守屋先生をお迎えしての授業研究会。近隣の小中高校の先生も数名来てくださいました。
午前中は全ての授業を公開し、午後は協議会を開催。中でも研究授業と位置付けられた生物基礎(授業者:川岸剛先生)の授業を中心に、新陽の先生たちと外部の方々と一緒に振り返りながらディスカッションを行いました。
この協議会では、
・生徒の学びがどこで発生したのか/どこで止まったのか
・教え合いではなく学び合いになっているか
・分からない子が分からないと言えているか
など、生徒の様子を見取ったところから話し合いを進めるのがポイント。
守屋先生からは「どの子も学びたいという気持ちはある。分からないと安心して言えること、どうしてこうなの?と会話が生まれること、隣の子がなんとなく関わること、などが見える授業だと良いですね。」とのお話がありました。
本来、一人ひとり学びの筋道は違うはず。それぞれの道筋で学んでいけるように学び合いの力を借りようというのが『学びの共同体』の基本的な考え方です。
そこでの教員の役割は、まず目の前の生徒の様子を見て、個々の学びを丁寧に見取ること。「先生たちには授業の中で生徒がどう学んでいるかに敏感になってほしい。そうすれば子どもの学びが保障されていくはずです。」と守屋先生が最後に仰ったメッセージが心に残っています。
学びをデザインする
後日、授業研究会に来てくださっていた札幌市立の小学校の校長先生から、メールが届きました。なんと、「新陽高校の公開授業に参加してきました」と校長便りに書かれたとのこと。5月の授業研究会にも参加してくださった先生です。
5月の公開授業の際は、教員によって協同的な学びへの温度差が感じられ学び合いが起きているクラスは数クラスだったと振り返りながら、今回の感想が書かれていました。
新陽の単位制カリキュラムが自分で選べるようになっているのも、メンターやハウス制を置いているのも、生徒の主体性を発揮する活動をデザインしようとしているから。『学びの共同体』に取り組んでいるのも、生徒が学ぶ場としての授業がどうデザインされと良いか考えるため。
そうやって新陽の先生たちが学ぶ環境をデザインした結果、生徒たちが変化し成長しているのを見取っていただけたのは本当にありがたいことです。これからも、教職員も共同体として学び合いながら、生徒一人ひとりの学びを叶えるための挑戦を続けていきたいと思います。
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