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原石が宝石になる高校〜ポスタープロジェクト完結 【週刊新陽 #161】

新陽高校の新しいポスターが解禁となりました!

このポスターは、有志生徒10名が、クリエイティブのプロである文筆家の松浦弥太郎さんとデザイナーの小熊千佳子さんと共に歩んできたプロジェクトの結晶です。 

自分たちは宝石の原石。そんな原石を発掘し、磨いてくれる場所が新陽高校」というプロジェクトメンバーのメッセージが詰まったデザイン。

『出会いと原体験』を大切にする新陽ならではのプロジェクトで、『人物多様性』をビジョンに掲げる新陽らしいポスターが完成したと思います。

ぜひ多くの方に見ていただけたら嬉しいです。(そして触ってみてほしい!)

生徒の言葉を集めて弥太郎さんが作ってくれたコピー
「自分という石を キラッキラに、
しよう、しあおう。なれる、なってやる。
新陽は、毎日宝石発掘中。」

どこにもないポスターが完成するまで

昨年7月に参加生徒を募り、スタートした学校ポスター制作プロジェクト。

集まった生徒(スタート時は8名、その後増えて最終的に10名)が、「中学生に伝えたい新陽」を考え、言葉にし、それをクリエイティブのプロの方々がまとめてカタチにする、という共同作業を約8ヶ月にわたり行ってきました。

第1回セッション(23年8月):ポスターづくりの極意
第2回セッション(23年10月):「新陽高校さん」ってどんな人?
第3回セッション(23年12月):「宝石発掘」をポスターにしたら
第4回セッション(24年3月):ポスター完成間近、ゼロイチをつくるということ

弥太郎さんと小熊さんのプロフィール、企画の背景、そしてプロジェクト前半(1・2回目のセッション)についてはこちらのnoteをご覧ください。

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3回目のセッションが行われたのは、冬休み直前の2023年12月20日(水)。

前回の帰り際に弥太郎さんと小熊さんが「今度は私たちが宿題をやってくる」とおっしゃったとおり、ポスターのデザイン案が示されるところからスタートしました。

「自由人」
「ひまつぶしの神」
「情緒不安定」
「好きなことに全力投資」
「石を宝石にする力がある」
など、2回目のセッションで生徒から出てきたイメージはどれも独特で、それらがどんなデザインにまとめられるのか想像も付きません。

そしてこの日、小熊さんが持ってきてくださったのは「完成ですか!?」と言いたくなるようなポスター7枚(7種類のデザイン)!クオリティも量も、私たちの予想をはるかに超えていました。

「うわぁ〜!」と興奮気味の生徒と先生に対して、小熊さんも弥太郎さんも至って平然。「これはあくまでもイメージ。この中からみんなに選んでもらって、その方向性で細かいところを作り込んでいくね。」と軽やかにおっしゃって、プロの仕事ってこういうことか・・・!と、感動と同時に、緊張感が漂った生徒たち。

初回に弥太郎さんから「誰に向けたポスターなのか、届けたい相手を意識すること」と教えていただいたことを思い出しながら、「中学生に、新陽の魅力をいちばん伝えられそう」と感じた1枚を選びました。

セッションの後半は、今回のポスターの大きなポイントである『石』に重ねる『顔』をそれぞれ描いてみることに。絵が得意な生徒ばかりではありませんでしたが、「新陽ってどんな顔がある?」と考えたり、友達とおしゃべりしたりしながら手を動かしているうちに、たくさんの『顔』ができました。

弥太郎さんや小熊さんと会うのも3回目。
すっかり打ち解けた生徒たち
カラーの原石をイメージしながら
多彩な顔をたくさん描きました
「POKALDE PEAK/AMA DABLAM」KOKI TAKAHASHI
11月に出版された、小熊さんの手製本による
髙橋励起先生の写真集に見入る生徒たち

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年が明けた3月15日(金)、4回目のセッションに合わせてお昼過ぎに来札してくださったお二人。実はその日の朝の出発ぎりぎりまで、ポスターのデザインについてやりとりしてくださったそうです!

そうやって完成したポスターの最終案。生徒一人ひとりがじっくり見られるように小熊さんが用意してくれたファイルが配られると、みんなドキドキとワクワクが混じった表情で、大事そうに資料を取り出しました。

自分たちが「創った」ポスターのデザインを見て
興奮したり、静かにじっくり眺めたり。
「ポスターの解禁日まで、もう少し
みんなだけの秘密ね!」と小熊さん。
生徒とのセッション直前、みんなの反応を予想して
ワクワクソワソワする大人たち(笑)

最後のセッションを行った後、「あとはプロとして良い印刷でポスターを仕上げていきます!」と仰った小熊さんと弥太郎さん。

4〜5月は、色や加工の確認、表記やフォントなどの細かい修正のために、何度も校正を行ってくださいました。一切妥協なしのお二人の仕事ぶりに触れさせていただき、私自身、とても貴重な経験となりました。

「キラッキラ」の文字はシルバー、
顔の線画は透明の厚塗りニスで盛り上がっています

ゼロイチをみんなでつくる経験

4回目のセッションでポスターの最終デザイン案を見たあと、みんなで8ヶ月を振り返りました。

以下、一部ですが生徒のコメントを紹介します。

本物のポスターが完成して貼られるのが待ち遠しい。中学生がどんな反応するんだろう?と想像するとワクワクする!

一からみんなで作るという貴重な経験をした。やっぱり、とりあえず気になることはやってみるべき、と思った!

これがポスター制作かと思ったら、こういう仕事も面白そう。ものを作る仕事もいいな、と最近思っている。

自分たちが出した言葉がこうやって形になるんだ、と、良い意味の想定外だらけで、発想の転換が何かを生み出すということを体感した。作ることそのものよりも、過程を経験できたのが貴重だった気がしている。

弥太郎さんの「夢中は努力に勝る」という言葉がずっと印象に残っている。ゴールに向けてみんなで夢中になって、イメージを膨らませていくの楽しかった!中学生が立ち止まってくれるようなポスター作りたい、そういう気持ちでやっていたから、好きなことに夢中になれたと思う。

やったことがないことばかりで、最初は戸惑ったり不安になったりしたけど、回数重ねているうちにどんどん楽しいと思うようになっていた。完成したポスターを見て、とても楽しかった、貴重なことをやれた、と実感している。

新陽高校さんてどんな人?と聞かれてびっくりしたけど、考えているうちに、改めて新陽の良さを知ることができたと思う。このプロジェクトに参加してよかった!

デザインの勉強のために参加したのに、最初に「新陽高校さんって?」と聞かれ、デザインの技術などではなかったので、ちょっと違うかも・・と思った。でも今は、考えることがデザインする始まりなんだと感じている。

ちょっと面白そうだな、という軽い気持ちで参加したけど、やってみたらすごく楽しくて、もっと挑戦したいと思った。このプロジェクトを経験してから、新しいことに挑戦するようになった

生徒が一人リフレクションするごとに弥太郎さんが言葉を返してくださって、その対話がとても素敵でした。その言葉、あの時間は、生徒の宝物になったに違いありません。

生徒の感想が一通り出たあと、小熊さんがこんなふうに話してくれました。

コンセプトも、言葉も、素材も、みんなが生み出したもの。だから私は、デザインしたというより、今回は議事録を書いてるような感じ。カタチにするお手伝いはしたけど、言ってみればみんなから出てきたものを配置しただけ。もし新陽高校から発注を受けて、デザイナーとしてポスターを作ったとして、このグラフィックは絶対に作れなかった。

ひさしぶりの感覚、新鮮な気持ちでこの8ヶ月、本当に楽しかったです!

第4回セッションでの小熊千佳子さんの言葉から

2018〜19年に生徒が弥太郎さん監修のもとパンフレットを制作したプロジェクトにも関わっていた髙橋励起先生は、学校のイメージが変わっていたことに気づいた、と言います。

パンフレットプロジェクトを思い出しながら、今回みんなが新陽をどう表現してくれるのかいろいろと考えていたけど、今その想像を遙かに超えてきたポスターに衝撃を受けている。
そして、自分の中で新陽のイメージがアップデートされていなかったことに気付いた。中学生が持つ学校のイメージや、新陽に入学する理由も、この5年で変わっていた。生徒たちがアップデートしてくれていた。
これが中学校に貼られるのが楽しみ!

第4回セッションでの励起先生の言葉から

つくることは、わかること

パンフレットプロジェクトから5年、「また新陽の生徒たちと関われて幸せ」と言ってくださった弥太郎さん。

毎回のセッションでは、クリエイティブに関すること、仕事への向き合い方、あり方や生き方など、いろいろなお話をしてくれました。

最終回(第4回)に弥太郎さんが生徒たちにしてくれたお話の中で、特に私が印象に残ったメッセージを紹介したいと思います。

着地点はまったく予想していなかった。みんなのアイデアや想いを受け取って、僕ら(弥太郎さんと小熊さん)だけではできないものが生まれた。

みんなの言葉の、まとまっていないまとまり。
粗削り。それがいい。
僕たちはそれをまとめただけ。
つくったのは、間違いなく生徒のみんな。

完全に「ゼロイチ」。
本当のクリエイティブって、こういうこと。

大事なのは、知ることじゃない。わかること。
みんなが言葉にして、考えて考えて、なんでと向き合い続けた結果、わかったこと。

ポスターとは、目で見てわかるように世界観を1枚にまとめたストーリー。
一番共有したかったこと。
それが、言葉にすること。言葉を共有するということ。

このポスターを中学校に持って行った時に、なにこれ?と言われるかもしれない。嫌い、と言われるリスクもある。
でも、迷ったとき、安全そうな方に行かないで、ワクワクする方を選ぶ。
新しいものを生み出すってそういうこと。

この体験を、宝物にしてもらえたら嬉しい。

第4回セッションでの弥太郎さんの言葉から
セッションが終わり、生徒たちとの別れを惜しみつつ
笑顔で帰って行かれたお二人。ありがとうございました!
(2024年3月15日)

【編集後記】
全く新しいポスターができました。でも、とても新陽らしい、新陽のポスターとして何の違和感もないポスターだと思います。
弥太郎さんは、「世の中の全ての人に、すばらしいと言ってもらいたいとは思ってない。みんなが『ふ〜ん、すてきね』というポスターはつまらない。『あなたはこのポスター、好きですか?嫌いですか?』と聞いて、意見がはっきり分かれるくらいがいい。」とおっしゃったのですが、月曜日から入試広報担当の先生たちが順次お届けしている中学校の先生方には概ね好評。これから校内に貼っていただき、中学生がどんな反応なのか気になります。

「こんなポスター見たことない!」
届いたばかりのポスターを見ながら
自分が描いた「顔」を探す生徒たち。


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