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対話ってなんだろう?当たり前を問い直す。 【週刊新陽 #26】

新陽高校は前期・後期の2学期制です。

9月28日は前期最終日。終業式とホームルームをオンラインで行いました。

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今回、第3弾となる多様性対談に出てくれたのは神野元基さん。多様性対談とは、ゲストと校長が新陽高校が掲げるビジョン2030『人物多様性』に関わるトークをする企画です。(6月はリクルート・ヒトラボの福田さん8月はCrono(クロノ)の高さんとの対談でした。)

福田さんとの対談で「多様性を尊重するとは自由の相互承認のこと、好き勝手やっていいということではない」という話をしたところ、

「なぜ男子の長髪はだめなのか?長いことで誰かに迷惑かけているとは思えない。」

「多様性を尊重するというなら、校則はもっと自由でもいいのでは?」

などの意見が生徒から寄せられました。そこで、

・お互いの自由を尊重し合うためのルールとは?
・意見が対立するときはどうすればいいか?

についてもう少し話を深めるために、神野さんに力を貸していただくことにしました。

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多様な子どもたちが誰一人取り残されないためのICT

神野さんは網走市出身。慶應義塾大学在学中より起業家として活動し、AIドリルQubena(キュビナ)の生みの親としても有名です。

文科省の中央教育審議会・初中等部会臨時委員や経産省産業構造審議会・教育イノベーション小委員会委員、宮崎市の教育CIOなど、とにかく幅広く活躍されています!

佐賀の東明館学園の理事でもあり、先日は新陽に遊びに来てくれました。

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「GIGAスクール構想は『多様な子どもを誰一人取り残さない』ことがそもそもの目的で、これまでICTがない中で培われてきた学校の当たり前を問い直したい」と語る神野さんと、『生徒の数だけ学びがある』ことを目指す新陽の先生たちの対話は尽きることがありませんでした。

1年1組の生徒たちへ、『未来を生き抜くみんなへ』というタイトルで特別授業もしてくださいました。

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ルールは守るもの。でも・・・

さて、オンライン終業式での対談は、「インターネットやコンピューターが当たり前になった時に、学校のあるべき形ってなんなんだろう?」という問いかけでスタート。

そして、「その問いを考えるのは学校や教育委員会といった大人だけではなく、生徒も一緒に、むしろ生徒主体で考えるのはどうか」と神野さん。

その事例として、今手がけている『ルールメイキングプロジェクト』を紹介してくれました。

校則ってなんだろう?なぜそのルールがあるの?と問い直すためのプロジェクトで、全国100校以上が参加しているそうです。

大事なのは、当たり前を「それってほんと?」と疑ってみること。

ルールは守らなくちゃいけない。でも同時に、見直し続けることが大切。時代や環境が変われば、必要なルールも変わってくるからです。

「ルールはただ守ればいいというものではない。見直して変え続け、みんなが納得したルールを守る。それを学校教育でも学べるといい。」という思いで、神野さんはこのプロジェクトに関わっているそうです。

ルールを見直す時に大切な対話とは

ではルールを見直す時、どんなことに気をつけたらいいのでしょう。

神野さん曰く、見直す人たちが持つべきは「立場が変われば見方が違う」というマインド。

例えば、円錐を真上から見れば「円」に、真横から見ると「三角」に見えます。自分が見えているものだけが正しいとは限らない、と思っておくことが大切です。

立場が変われば見方が違う

自分の見方だけに固執せず、見方を変えるために必要なのが対話。そしてここでのポイントは、自分の意見を率直に出し合うだけでなく、多様な《声》を聴き合うこと。

「対話とは、意見を相手に直接投げるのではなく、その場にポトッと落とすイメージ」という表現がとてもわかりやすいと思いました。

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たとえば、「金髪はOKか?」というテーマがあるとします。

「個性だからいいでしょ」という意見がある一方で「なんとなく金髪こわい」という人もいるかもしれない。その時「金髪を否定された!」と受け止めるのではなく、それぞれの意見をその場に置いてみて、「自分が個性を表現するのにやりたかったことを、コワイと思う人がいるんだなぁ」と思えるかどうか。

それぞれの意見をお互いに理解し合い、折り合いをつけ、どちらも納得する解を導くために対話があるのです。

ルールに関わることって、おもしろい!

対話は、誰かの一言で始まります。

おかしいと思うことがあり、それを世の中に対して「おかしくないですか?」と言えるのはすばらしいリーダーシップ、と神野さん。

まず行動してみる、そうすれば自分をフォローしてくれる人がきっといるはず。あるいは、最初の一歩を踏み出した誰かのフォロワーになるのもいい。仲間を増やすことが、当たり前を見直すパワーになります。

実は、何かを変えるのは面倒くさいプロセスでもあります。「これまでやってきたんだから・・・」と変化に抵抗する人があらわれる場合も少なくありません。

先ほどのルールメイキングプロジェクトでは、学校内で共感してくれる人が少なかったとしても、同じように当たり前を問い直す全国の仲間達とつながることで勇気をもらい、信念を貫いている高校生たちがたくさんいるそうです。

だからもし新陽で、「変えよう、見直そう」と言い出した人が出てきた時、「賛成」か「賛成じゃない」かどちらかの立場には立って欲しい、そう神野さんがおっしゃっていました。「どっちでもいい」はなるべく避けて、と。

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自分に関係ないと決めつけず、自分の生活が変わるかもしれないとアンテナを立ててみてほしい、主体的にルールに関わってみることで新しい発見があるはず、ルールに関わることは絶対面白い!との力強い声に、背中を押された生徒もいるのではないかと思います。

誰かと一緒に生きていくという覚悟

最後に、神野さんから生徒たちへメッセージをいただきました。

「みんなに学んで欲しいこと、そして身につけて欲しいこと。

まず、主体的であること。きみたちがどのように自分の人生を決めていくか、自分のやりたいことを見つけていくか、それが一番大事なことです。

もう一つ、対話的であること。それは人と一緒に生きていくということ。この2つが幸せに一番近づく方法だと思う。

主体的とは?対話的とは?
この2つのテーマについて、みんなで一緒に対話していきましょう。対話とは、誰かと一緒に生きていくという覚悟のことだと思います。

【編集後記】
神野さんのお話は、終始一貫して「誰一人取り残さない」ためにみんなで何ができるか、という思いに溢れていました。誰一人取り残さないルールを作るために対話はとても重要、というメッセージは、リモートでも新陽生たちに届いたと思います。
でも実は、「モテたかったら対話ができたほうがいい!」というアドバイスが一番、生徒たちに刺さったかもしれません(笑)。


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