小林 暢子(EY Japanパートナー)

EY Japanでパートナーを勤める戦略コンサルタントです。世界の流れが大きく変わる今…

小林 暢子(EY Japanパートナー)

EY Japanでパートナーを勤める戦略コンサルタントです。世界の流れが大きく変わる今、「一見変わらない日本」がどう変わるのか、日本人がどう生きるかに興味があります。コンサルタントの現場感と外からの視点を大切に、幅広いトピックを扱います。

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    日経COMEMOは、様々な分野から厳選した新しい時代のリーダーたちが、社会に思うこと、専門領域の知見などを投稿するサービスです。 【noteで投稿されている方へ】 #COMEMOがついた投稿を日々COMEMOスタッフが巡回し、COMEMOマガジンや日経電子版でご紹介させていただきます。「書けば、つながる」をスローガンに、より多くのビジネスパーソンが発信し、つながり、ビジネスシーンを活性化する世界を創っていきたいと思います。 https://bit.ly/2EbuxaF

最近の記事

生成AI:便利さの裏側にあるリスク

生成AIの進歩は日進月歩だ。インターネットの登場に匹敵する技術革新と言われるが、その長期的な影響予測については、人間の生産性を飛躍的に向上させるという楽観論から、AIが目的遂行に邪魔になる人類を滅ぼすという悲惨な結末を予想する悲観論まで、専門家の間でも意見に大きな振れ幅がある。 一方、ホワイトカラーの現場で、生成AIの利用は着実に進んでいる。国内でも海外でもAIを安心・安全に使うために法整備が急ピッチで進められていることは事実だが、便利さに飛びつくユーザーと早期のプラットフ

    • ミドル世代の転職に必要なこと

      株高の陰で、企業による早期退職募集のニュースが相次いでいる。現場での慢性的な人不足を考えると一見不思議だが、特にホワイトカラーを多く抱える組織の多くにとって、高コスト体質は大きな課題で在り続ける。中高年を中心にする人員削減によってスリムダウンと新陳代謝促進の両方を図っているようだ。 日本社会全体としては、雇用の流動化が産業の新陳代謝を促すメリットがある。若い世代により活躍の機会が広がると捉えることもできる。しかし、日本の中高年ホワイトカラーサラリーマンが人生で初めて、何十年

      • 男女の賃金格差:豪政府機関が示すデータと分析の力

        豪州の公的機関である職場の男女平等機関(Workplace Gender Equality Agency, “WGEA”)が従業員100人以上の5,000社規模を対象に男女の賃金格差データを公表した。2023年の賃金格差は19%という結果で、日本の21%(OECDデータ、2022年)よりやや低いものの、OECD平均の12%よりかなり高い数字だ。もっとも賃金差が大きい企業では73%という驚きの格差がある。 従業員100人以上という閾値(しきいち)を超える(日本では301人以上

        • 資本とインターネットが後押しする「勝者総取り」

          歌手テイラー・スウィフトの勢いがとどまるところを知らない。その経済効果はスウィフトノミクスと呼ばれ、2023年3-11月だけで、10億ドルのツアー興行収入があったという。これだけでエルトン・ジョンの18-23年興行収入9.3億ドルを上回るというのだから、スウィフトのBIGぶりが伺える。 今やスウィフト人気はグローバル規模で、幅広い世代に及ぶ。世間の注目は複数のビッグスターに適度に同時分散するよりも、メガスターただひとりに収れんする「勝者総取り」現象が顕著だ。もちろん多様な嗜

        生成AI:便利さの裏側にあるリスク

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          「女性リーダー」が、シンプルに「リーダー」となる日まで

          2024年に入って、注目度の高い大きな組織で、矢継ぎ早に女性の次期トップ就任ニュースが相次いだ。例えば、日本航空次期社長であり、日本共産党の新委員長だ。 このような女性の躍進により、伝統的に男性の縄張りと目されていた政治経済の分野で、いろいろなタイプの女性がリーダーを務めることを喜ばしく思う。男女関わらず優秀な人材が引っ張ることで日本の国力が増すのであれば、リーダー人材の選択肢を人口の半分に限ることは賢明ではない。 実は、時代は準備ができている。多くの女性は男性と遜色ない

          「女性リーダー」が、シンプルに「リーダー」となる日まで

          「自律分散型経営」には、有事への備えが肝心

          ロシアとウクライナの情勢が長期化し、イスラエル・ハマスの軍事衝突も収束を見せないまま2024年に突入した。今年は複数の国で国政を左右する選挙が重なるスーパーサイクルの年であり、地政学的な不安定さは続くことが予想される。 これは、グローバルに事業展開する日本企業にとっては大きな環境変化だ。組織やサプライチェーンを経済合理性の視点だけから組んでしまっては、必ずしも紛争や国同士の対立などに備えられない。そのため、日立製作所のように世界をエリアに区切り、エリアの中である程度閉じた運

          「自律分散型経営」には、有事への備えが肝心

          DE&Iに対する「反動」にどう対処するべきか?

          イスラエルとハマスの情勢に対する米国の態度を受けて、米国内では世論のみならずアカデミアで、学生や教職員を巻き込んだ分断が深まっている。昨年12月、議会の公聴会でハーバード大学を含む学長の反ユダヤ主義に対する発言が玉虫色に終始したという批判が大きなニュースになった。 この問題がクリスマスシーズンを挟んで収まらず、殊にハーバード大学長については、元からくすぶっていた論文の盗用疑惑と相まって、とうとう半年という短い任期で辞任するに至ってしまった。クローディン・ゲイ学長は、ハーバー

          DE&Iに対する「反動」にどう対処するべきか?

          ニッチに終わらないジャパン・バリューを求めて

          海外投資家から日本企業への興味が高まっており、その裾野は広い。中には、海外では知名度の低い、内需中心の「地味な」日本企業への投資を増やす外資ファンドもある。「日本の地方には磨けば光る企業が隠れており、発掘していきたい」という意向があるという。 中小メーカーがある製品群や技術にリソースを集中して、一点突破でグローバルニッチトップを獲得する成功ストーリーは、日本に限らず見られる。記事では九州のしょうゆ会社が取り上げられているが、消費者には目に触れないB2Bの部品などで多い「隠れ

          ニッチに終わらないジャパン・バリューを求めて

          平成の「変革」不発は、令和に生きるか?

          「変革(トランスフォーメーション)」という言葉は、それを聞かない日はないほどビジネス界での人気キーワードだ。しかし、経営コンサルタントとして企業経営陣と接する中、この概念が表面的に使われていたり、漸進的な「改善」を飾り立てた言い換えにすぎなかったりする例も多い。 本来、企業の自己変革とは、世の中や需要の大きな変化に合わせて、自社も今までのなりわいを大胆に変えること-まるでさなぎがチョウになるように、DNAを残しながらも、元の自分と決別することを意味するはずだ。 日本企業に

          平成の「変革」不発は、令和に生きるか?

          宝塚問題に考える日本の「外と内」

          宝塚歌劇団の女性が亡くなった事件をきっかけに、歌劇団という組織の文化やガバナンスの有効性が問われている。子供のころから宝塚劇場に親しんだ一ファンとしても、震撼(しんかん)とさせられる展開だ。 パワハラを否定する歌劇団と遺族の主張は大きく乖離(かいり)するものの、組織の閉鎖性が災いし、劇団員が命を落とすまで追い詰められたという構図は想像に難くない。海外に住む日本人の友達が、日本社会に特徴的な「外と内」という概念が、組織の中で個人が窒息する悲劇の根底にあることを鮮やかに説明して

          宝塚問題に考える日本の「外と内」

          生成AIが当たり前になる世界

          日経フォーラム「世界経営者会議」で「生成AI、日本に勝機は?」と銘打ったパネル(パネリストは、イライザCEO曽根岡侑也氏、エクサウィザーズはたらくAI&DX研究所所長 石原直子氏)を興味深く視聴した。 生成AIの登場により自然言語でAIを使えるようになり、日本でもこの半年で社員から経営陣まで「普通のビジネスパーソン」が、日常的に文書作成、要約、壁打ち相手などを目的にAIを使うようになっているという調査結果が示された。もはやAIを「使うか、使わないか」ではなく、「どのように使

          生成AIが当たり前になる世界

          米国の弱体化は、世界の「たが」を外す

          イスラム組織ハマスによるイスラエル攻撃は、2001年の米国を標的とした同時多発テロとなぞらえられる。強国がテロリスト集団に不覚を突かれるパターンは同じだが、2001年との決定的な違いは、背景にある世界の規律が格段に不安定を増していることだ。 既にウクライナ情勢が始まって1年半以上がたつものの、終わりは見えない。今回のイスラエル・ハマス衝突やその余波が、ロシアや中国の指導層へどのようなメッセージを送るのかが注視されている。 そもそもなぜ世界がここまで不安定化したのか?その答

          米国の弱体化は、世界の「たが」を外す

          バイアスの排除には、物差しの見直しが欠かせない

          日経によると、日経225銘柄のうち女性管理職の比率が高い企業はリクルートの50%。その取り組みで特に目立つのは、22年より管理職候補者の選考基準を「管理職要件」として明文化したことだ。従来は「過去の管理職と同じ働き方ができるかが選考基準になりがちだった」と人事統括部長は述べている。 この転換は、とても重要だと思う。女性管理職が少ないことの一因として、よく指摘されるのは「候補となりそうな女性が乗り気ではない」という女性の消極性だ。その背後には、「女性固有の自信の無さ」があり、

          バイアスの排除には、物差しの見直しが欠かせない

          便利と情緒

          東海道新幹線のワゴンサービスが10月で終了する。それほど新幹線に頻繁に乗るわけではないものの、寂しさを感じてしまう。両親の実家が関西だったので、子どものころ夏休みの行き来は東海道新幹線。せっかくワゴンからアイスクリームを買ってもらったのに車酔いで吐いてしまったり、母が父のお土産に必ずワゴンから静岡のわさび漬けを買っていたり、新幹線の旅の思い出とワゴンサービスは切り離せない。 駅のお弁当や飲み物は充実しているし、これからグリーン車では、スマホからの注文が可能になるという。確か

          エンゲージメントのある観光を目指そう

          今年は「リベンジ旅行」の波に乗って、新しい目的地を開拓しています。夏の国内旅行では、しっぽり温泉の由布院に続き自然「一択」の西表島という、まったく性格が異なる二つの観光地を訪れました。 これらの人気観光地に共通していえるのは、コロナいったんの終焉と共にオーバーツーリズムが再燃していることです。国内に限らず、環境や観光地の魅力に深刻な影響を与える「成功のつけ」ともいえるオーバーツーリズムに、観光地側と観光客側はそれぞれどのように対処すれば良いのでしょうか? 二つの旅を終えて

          エンゲージメントのある観光を目指そう

          格差拡大の阻止には、意図的な仕組みが必要

          6月末、米最高裁が一部大学による人種に基づく積極的な差別是正措置(アファーマティブアクション)を違憲と判断したことは記憶に新しい。アイビーリーグ8校の学長は遺憾を表明したものの、FTコラムニストEdward Luceは、これらトップ校によるアファーマティブアクションは結局、白人特権階級の再生産を助ける仕掛けだと論じている。 米国における経済・社会格差は、株主資本主義の助けを借りずとも自己拡大する傾向があり、回りまわって自ら国力を弱める原因となっていると考える。日本がさまざま

          格差拡大の阻止には、意図的な仕組みが必要