小林 暢子(EY Japanパートナー)

EY Japanでパートナーを勤める戦略コンサルタントです。世界の流れが大きく変わる今…

小林 暢子(EY Japanパートナー)

EY Japanでパートナーを勤める戦略コンサルタントです。世界の流れが大きく変わる今、「一見変わらない日本」がどう変わるのか、日本人がどう生きるかに興味があります。コンサルタントの現場感と外からの視点を大切に、幅広いトピックを扱います。

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    日経COMEMOは、様々な分野から厳選した新しい時代のリーダーたちが、社会に思うこと、専門領域の知見などを投稿するサービスです。 【noteで投稿されている方へ】 #COMEMOがついた投稿を日々COMEMOスタッフが巡回し、COMEMOマガジンや日経電子版でご紹介させていただきます。「書けば、つながる」をスローガンに、より多くのビジネスパーソンが発信し、つながり、ビジネスシーンを活性化する世界を創っていきたいと思います。 https://bit.ly/2EbuxaF

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日本は「外国人嫌い」:バイデン大統領発言を考える

日本や中国における経済の低調を移民の少なさに結び付け、さらにそれを「外国人嫌い」のせいだとしたバイデン大統領の発言は、波紋を呼んだ。 このロジックには二重に問題があると言えそうだが、日本が「外国人嫌い」という批判には、どこか「実は、本当にそうかも・・・」と思わせるところがある。そのため、私を含め日本人として、この発言をよくある政治家の失言と片付けられず、やや過剰にまで反応してしまうのではないだろうか? 私の職場であるEYの東京オフィスでは、多数の外国籍社員が働いている。数

    • コングロマリットのカーブアウト(事業切り離し)に盲点はないか

      「大きいことは良いことだ」とばかりに事業ポートフォリオを肥大化させたコングロマリット(複合企業)が、シナジーの薄くなった事業を「より良い環境で育ってもらう」ために切り出すことは珍しくない。 日本企業の意識も変わったもので、利益を生み出す優良事業子会社であっても、グループの戦略に合わなければ、カーブアウト(事業切り離し)が当たり前の選択肢だ。例えば、日立グループにおける日立御三家(日立化成、日立金属、日立電線)の分離独立はそんな事例にあたる。 日本に興味を持つプライベートエ

      • ジョブ型?メンバーシップ型?模索は続く

        JTC(Japanese Traditional Company)の人事制度といえば、職務内容が曖昧な「メンバーシップ型」だろう。その対極に位置付けられる「ジョブ型」の人材マネジメントは、専門性を磨けるメリットが大きく、社会的にも労働流動性を高める効果があるとうたわれている。メンバーシップ型が「人に仕事をくっつける」のに対して、ジョブ型は「仕事に人を当てはめる」とも解釈できる。 しかし、現場の人気はジョブ型の独り勝ちかといえば、そうでもない。雇う側も雇われる側も、ベストな人

        • 日本経済「躁(そう)の40年」「鬱(うつ)の30年」その次は?

          今年に入り、国内の経済界には明るいニュースが目立つ。日経平均株価はバブル超えを記録し、賃上げと緩やかな物価上昇の好サイクルが認められ、日銀のマイナス金利解除により「金利のある世界」が戻ろうとしている。 巨視的にみると、戦後40余年続いた高度成長期を「躁の時代」、その後30余年の停滞期を「鬱の時代」とするとき、今はその次の時代へ向かう序章と位置付けられる。 戦後から米ソ冷戦にかけては、日本は輸出の伸びが目覚ましく、軍事力よりも民間の活力にお金を回せたラッキーな時代だった。戦

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          プロジェクトマネジメントは「おまけ」ではない

          プロジェクトマネジメントという仕事に、どんな印象をお持ちだろうか?会議の設定をしたり、期日までに各チームの成果物の提出を確かめたりする、いわば「高級雑用係」というイメージの読者も多いだろう。受け身で定型業務が多く「楽そうだね」という印象さえあるかもしれない。 しかし、コンサルタントとして大規模なプロジェクトに関わると、プロジェクトマネジメントは実に本質的な役割であり、その巧拙がプロジェクトの成否を左右することを実感する。 まず、プロジェクトマネジャーは、プロジェクトの基礎

          プロジェクトマネジメントは「おまけ」ではない

          生成AI:便利さの裏側にあるリスク

          生成AIの進歩は日進月歩だ。インターネットの登場に匹敵する技術革新と言われるが、その長期的な影響予測については、人間の生産性を飛躍的に向上させるという楽観論から、AIが目的遂行に邪魔になる人類を滅ぼすという悲惨な結末を予想する悲観論まで、専門家の間でも意見に大きな振れ幅がある。 一方、ホワイトカラーの現場で、生成AIの利用は着実に進んでいる。国内でも海外でもAIを安心・安全に使うために法整備が急ピッチで進められていることは事実だが、便利さに飛びつくユーザーと早期のプラットフ

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          ミドル世代の転職に必要なこと

          株高の陰で、企業による早期退職募集のニュースが相次いでいる。現場での慢性的な人不足を考えると一見不思議だが、特にホワイトカラーを多く抱える組織の多くにとって、高コスト体質は大きな課題で在り続ける。中高年を中心にする人員削減によってスリムダウンと新陳代謝促進の両方を図っているようだ。 日本社会全体としては、雇用の流動化が産業の新陳代謝を促すメリットがある。若い世代により活躍の機会が広がると捉えることもできる。しかし、日本の中高年ホワイトカラーサラリーマンが人生で初めて、何十年

          ミドル世代の転職に必要なこと

          男女の賃金格差:豪政府機関が示すデータと分析の力

          豪州の公的機関である職場の男女平等機関(Workplace Gender Equality Agency, “WGEA”)が従業員100人以上の5,000社規模を対象に男女の賃金格差データを公表した。2023年の賃金格差は19%という結果で、日本の21%(OECDデータ、2022年)よりやや低いものの、OECD平均の12%よりかなり高い数字だ。もっとも賃金差が大きい企業では73%という驚きの格差がある。 従業員100人以上という閾値(しきいち)を超える(日本では301人以上

          男女の賃金格差:豪政府機関が示すデータと分析の力

          資本とインターネットが後押しする「勝者総取り」

          歌手テイラー・スウィフトの勢いがとどまるところを知らない。その経済効果はスウィフトノミクスと呼ばれ、2023年3-11月だけで、10億ドルのツアー興行収入があったという。これだけでエルトン・ジョンの18-23年興行収入9.3億ドルを上回るというのだから、スウィフトのBIGぶりが伺える。 今やスウィフト人気はグローバル規模で、幅広い世代に及ぶ。世間の注目は複数のビッグスターに適度に同時分散するよりも、メガスターただひとりに収れんする「勝者総取り」現象が顕著だ。もちろん多様な嗜

          資本とインターネットが後押しする「勝者総取り」

          「女性リーダー」が、シンプルに「リーダー」となる日まで

          2024年に入って、注目度の高い大きな組織で、矢継ぎ早に女性の次期トップ就任ニュースが相次いだ。例えば、日本航空次期社長であり、日本共産党の新委員長だ。 このような女性の躍進により、伝統的に男性の縄張りと目されていた政治経済の分野で、いろいろなタイプの女性がリーダーを務めることを喜ばしく思う。男女関わらず優秀な人材が引っ張ることで日本の国力が増すのであれば、リーダー人材の選択肢を人口の半分に限ることは賢明ではない。 実は、時代は準備ができている。多くの女性は男性と遜色ない

          「女性リーダー」が、シンプルに「リーダー」となる日まで

          「自律分散型経営」には、有事への備えが肝心

          ロシアとウクライナの情勢が長期化し、イスラエル・ハマスの軍事衝突も収束を見せないまま2024年に突入した。今年は複数の国で国政を左右する選挙が重なるスーパーサイクルの年であり、地政学的な不安定さは続くことが予想される。 これは、グローバルに事業展開する日本企業にとっては大きな環境変化だ。組織やサプライチェーンを経済合理性の視点だけから組んでしまっては、必ずしも紛争や国同士の対立などに備えられない。そのため、日立製作所のように世界をエリアに区切り、エリアの中である程度閉じた運

          「自律分散型経営」には、有事への備えが肝心

          DE&Iに対する「反動」にどう対処するべきか?

          イスラエルとハマスの情勢に対する米国の態度を受けて、米国内では世論のみならずアカデミアで、学生や教職員を巻き込んだ分断が深まっている。昨年12月、議会の公聴会でハーバード大学を含む学長の反ユダヤ主義に対する発言が玉虫色に終始したという批判が大きなニュースになった。 この問題がクリスマスシーズンを挟んで収まらず、殊にハーバード大学長については、元からくすぶっていた論文の盗用疑惑と相まって、とうとう半年という短い任期で辞任するに至ってしまった。クローディン・ゲイ学長は、ハーバー

          DE&Iに対する「反動」にどう対処するべきか?

          ニッチに終わらないジャパン・バリューを求めて

          海外投資家から日本企業への興味が高まっており、その裾野は広い。中には、海外では知名度の低い、内需中心の「地味な」日本企業への投資を増やす外資ファンドもある。「日本の地方には磨けば光る企業が隠れており、発掘していきたい」という意向があるという。 中小メーカーがある製品群や技術にリソースを集中して、一点突破でグローバルニッチトップを獲得する成功ストーリーは、日本に限らず見られる。記事では九州のしょうゆ会社が取り上げられているが、消費者には目に触れないB2Bの部品などで多い「隠れ

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          平成の「変革」不発は、令和に生きるか?

          「変革(トランスフォーメーション)」という言葉は、それを聞かない日はないほどビジネス界での人気キーワードだ。しかし、経営コンサルタントとして企業経営陣と接する中、この概念が表面的に使われていたり、漸進的な「改善」を飾り立てた言い換えにすぎなかったりする例も多い。 本来、企業の自己変革とは、世の中や需要の大きな変化に合わせて、自社も今までのなりわいを大胆に変えること-まるでさなぎがチョウになるように、DNAを残しながらも、元の自分と決別することを意味するはずだ。 日本企業に

          平成の「変革」不発は、令和に生きるか?

          宝塚問題に考える日本の「外と内」

          宝塚歌劇団の女性が亡くなった事件をきっかけに、歌劇団という組織の文化やガバナンスの有効性が問われている。子供のころから宝塚劇場に親しんだ一ファンとしても、震撼(しんかん)とさせられる展開だ。 パワハラを否定する歌劇団と遺族の主張は大きく乖離(かいり)するものの、組織の閉鎖性が災いし、劇団員が命を落とすまで追い詰められたという構図は想像に難くない。海外に住む日本人の友達が、日本社会に特徴的な「外と内」という概念が、組織の中で個人が窒息する悲劇の根底にあることを鮮やかに説明して

          宝塚問題に考える日本の「外と内」

          生成AIが当たり前になる世界

          日経フォーラム「世界経営者会議」で「生成AI、日本に勝機は?」と銘打ったパネル(パネリストは、イライザCEO曽根岡侑也氏、エクサウィザーズはたらくAI&DX研究所所長 石原直子氏)を興味深く視聴した。 生成AIの登場により自然言語でAIを使えるようになり、日本でもこの半年で社員から経営陣まで「普通のビジネスパーソン」が、日常的に文書作成、要約、壁打ち相手などを目的にAIを使うようになっているという調査結果が示された。もはやAIを「使うか、使わないか」ではなく、「どのように使

          生成AIが当たり前になる世界