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大学の近くで、小学4年生ぐらいの少年にもらった絵に描いたような赤い風船が、一週間近くずっと和室に放置されている。

「お兄さん、そんなに欲しいならあげるよ。」

何故そんなものを貰ったのかとか、その子の風船をなぜ欲しがったのかといわれるかもしれないが、別に私はその風船を欲しがっていたわけじゃない。ただ、その風船が場から浮いていたから、見ていただけだ。大学の近くで、小さい子が、風船をもって突っ立っていたら、見ざるを得ないだろう。すると、少年がニコニコしながら、近寄ってきて、風船を渡してきたのである。少年も、やり場に困っていたのかもしれない。
とはいえ、せっかく貰ったものなので、捨てにくい。そんなこんなで、今も和室にいる。

今朝、和室に風船がまだいることを確認しに行くと、やる気をなくしてひもの重さに負けるぐらいの力でしか浮いていなかった。昨日までは、あれほど上へ上へと逃げようとしていたのに。風船の口はほどいていないし、中の空気の量が減った感じもしない。不思議だ。

しかし、それだけのことなので、そろそろ寿命なのかもしれないなあとだけ思って、朝の身支度に戻った。

まあ、頑張って浮こうとしている間は生かしといてあげようという、慈悲の心で、和室に放置することにし、家を出た。

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