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物足りなさが理想的な、休日の昼食

人が全然いない、地元の人以外はわざわざ行くことのない町。そんな住宅地の中にある飲食店で何気なく摂る昼食。いつもの自分とは全然違う暮らしの中に溶け込んだような錯覚を覚えて、それ自体がなんとも言えない体験に思える。
もう20年以上も前、友人の推し活に付き添い、あるアーティストの生家周辺をほっつき歩いたことがある。駅から20分くらい離れた住宅地で、お腹を空かせて飛び込んだ地元のお蕎麦屋。日曜日、「のど自慢」がテレビから流れるお店で書き込んだ、ほんとになんてことない普通のカツ丼のことは今でも時折思い出してしまう。

この週末は、家族と電車で近郊の山宿へでかけた。在来線を乗り継いでも2時間程度で楽しめる小旅行。帰りがけ、乗り継ぎでちょうど時間が空いたので途中下車し、その駅から5分ほどの場所にある、グルメバーガーが楽しめるカフェでお昼をいただくことにした。
古民家をおしゃれに改造したお店でいただける絶品バーガー…に期待したら超肩透かし。脂っこい、バンズもパティも小さい、その割に1500円オーバーの価格。グルメバーガーはグルメじゃないとマックやモスに勝てないぞ。
若干がっかりしつつも、用事もなく降り立った馴染みない町で食べる休日昼食。その物足りなさが、なんか悪くないと感じた。
わざわざ食べに来たいとは思わない。だからこそ、一期一会の店。誰かの日常は私の非日常。ちょっと悔しい気持ちも、旅の記憶とともに昇華される感じもあった。


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