見出し画像

BONDプロジェクトの事業報告書から見る、東京都の問題点② 「書類をチェックしなかった結果どうなった」編。

はじめに

前回のこちらの記事で

「委託から補助にスキームを変える以前の所で、東京都は躓いている」という話をさせていただきました。
どのくらい以前の段階で躓いているかと言えば、
・バランスしていないバランスシート
・様式のなっていない事業報告書
これらをBONDプロジェクトが東京都に提出した際に、内容をチェックして不備などを指摘することなく受領し、承認し、東京都のサイトにアップロードして公開するレベル。
そういった話をさせていただきました。

では、チェックしなかった結果、BONDプロジェクトはどうなっていったのか、第9期~第12期に記載されている「青少年相談・保護事業」を中心に内容を確認してみていきたいと思います。

青少年相談・保護事業

BONDプロジェクトの事業費の中で大半を占め、また実績の件数が明確になっている青少年相談・保護事業がそれにあたります。

第11期 青少年相談・保護事業

上のように各期で青少年相談・保護事業の件数と事業費が記載されていますので、その内容を期ごとにまとめて、検証したいと思います。

各対応件数と事業費の推移

現在公開されている第9期から第12期まで事業報告書の「青少年相談・保護事業」の各対応件数と事業費を表にまとめると以下の通りとなります。

青少年相談・保護事業 件数と事業費の推移

補足すると、「-」は件数の記載がなかった箇所で、また、第9期の事業費は全て空白でしたので第9期事業費は不明です。
ぱっと見でも各対応項目件数はほぼ横ばいなのに対して、事業費は右肩上がりなのが良く解ります。
もう少し解り易くするために、第10期を基準にその後の第11期・第12期でそれぞれのどのくらいの割合で増減が発生したのかをグラフと表にしてみました。

第10期基準の対応件数と事業費の推移のグラフ

第10期の数値を1として作成したグラフで、線グラフが各対応件数、棒グラフが事業費の推移です。
棒グラフの事業費は右肩上がりで伸びていますが、線グラフはほぼ横ばいか、減少しているものも目立ちますね。
なお、緑の「同行は」第12期に記載がないので、0扱いで極端に下がっています。
このグラフの元ネタの数字で見てみましょう

第10期基準の対応件数と事業費の推移の表

上記の表も第10期を「1」としていますので、1を上回っていれば増加、1を下回っていれば減少ということになります。
一番下の事業費は2倍以上に膨らんでいますが、第10期以上の成果が出ているのは電話・保護の2項目で、他4項目はマイナスであることが解ります。

結論的に言えば、グラフと表の結果を見て解る通り、事業費は拡大していますが、相談件数・保護件数はばらつきはありますが、少し減少気味のほぼ横ばいであると分かります。

各対応件数の推移の詳細

詳細の件数を確認してみましょう。

第10期基準の対応件数と事業費の推移の表

(第10期⇒第12期)
Line:-5.5%
メール:-10.7%
電話:+3.79%
面談:-29.5%
保護:+13.5%
同行:-25.8%(ここだけ第11期と比較)

相談件数・保護件数のそれぞれの合計も見てみましょう。

相談件数・保護件数 推移

単純に件数合計で比較(第10期⇒第11期⇒第12期)
・相談事業
  33,771件⇒33,114件⇒31,052件
・保護事業
  1,087件⇒1,090件⇒1,163件
第10期から第12期では保護事業は約7%増(76件増)ですが 相談事業件数は8.1%減(2,062件減)ですね。

上記の通りで、青少年相談・保護事業は、限りなく減少に近い横ばいであることが解ります。

事業費と交付金の推移の詳細

では一方ので青少年相談・保護事業の事業費と交付金の推移はどうでしょうか。

第10期基準の事業費の推移のグラフ

・事業費(千円)
 42,456⇒65,179⇒93,328(119.8%増)

厚生労働省からの交付金 推移(年度)

・厚労省交付金(千円)
 33,000⇒40,000⇒77,000(133.3%増)

第10期から第12期にかけての事業費、2018年度から2020年度にかけての交付金、共に2倍以上に膨れ上がってますね。

各対応件数の推移から見えること

第10期基準の対応件数と事業費の推移のグラフ

グラフの通り、青少年相談・保護事業の対応件数は限りなく減少に近い横ばいなのに対して、事業費・交付金共に2倍以上に増加している状態です。
これを費用の増額の観点でいえば、簡単に言えば「増額した事業費・交付金に見合った対応件数の増加が見られない」になり、一言で言えば「増額の費用対効果が認められない」という話ですね。

実際BONDプロジェクトの内部では色々試行錯誤されているのかもしれませんが、このNPO団体とそれを取り巻く環境では、第10期の対応件数前後が限界であることが窺えます。
なので、第10期以上の事業費・交付金の増額はBONDプロジェクトの相談事業・保護事業ではその増額の効果は認められないと判断できます。
事業費はBONDプロジェクトの話なので増額するのはBONDプロジェクトの中の判断でご自由にどうぞの側面もありますが、交付金を出す側としては結果として効果が認められないのだから、少なくとも第10期分の交付金まで減らした方が良いと気が付くはずです。
そして付け加えるなら、交付金がもらえるという理由からBONDプロジェクトは事業費を増やした可能性もあり、事業費を抑制するという感覚が緩んだ可能性もありますね。
(もちろん公金でそんな杜撰な浪費はしてほしくないですが。)

そして、そんなチェックや検証もないまま、NPOに言われるがままに交付金をどんどん増額しているのではないかと思われる状況が、つい今しがたまで続いているという現実です。

東京都の書類のチェック状況を踏まえると

前回投稿した、「委託から補助にスキームを変える以前の所で、東京都は躓いている」

という状況を考えると、逆説的には「ちゃんと書類をチェックして事業の内容を検証する。これができていれば、前述したような費用対効果が認められない団体に、2年で交付金を倍増させてしまった今の状況は未然に防止できたのではないか?」と考えられるわけです。
また、「スキームを変更するということでお金の流れの透明度が上がります」と言って何かガラス張りの仕組みを作っても、そのガラスの前で監視・検証をする人がいて、何か問題があったらアラートを上げるという仕組みが機能がなければ、そのガラス張りの仕組みには何の意味もありません。

そして、そもそも東京都はチェックできてないわけですから、PDCAサイクルで言うところの「C:評価・分析」と「A:対策・改善」ができていない訳で、そのために実態の伴わない「P:計画」「D:実行」を優先して実施してきた結果、交付金だけがどんどん膨らんでいったと言えるのではないでしょうか?
もっと言えば、その交付金を増額するという「P:計画」「D:実行」は何を根拠に組まれたものなのか?
・当初から想定されていたが見直すことができなかったのか
・ただ「なんとなく」で増額してしまったのか
・何かしらの取引・圧力でもあって数字が決まったのか
もう一度、東京都はこのあたりを検証する必要があるのではないでしょうか?

最後に

いかがでしたでしょうか?
如何に今回のColabo問題、WBPC問題についての対策は、「性暴力や虐待を受けた若年女性に対する支援事業」を「委託」から「補助」に見直す、というようなスキームの話ではなく、そもそもやるべきことができていない問題だということが、「BONDプロジェクト」というたった一つのNPO団体の事業報告書からお解りいただけたのではないでしょうか。

本来なら、東京都がチェックして対策を打っておかなければ、または対応済みでなければいけなかったものを、一般男性である暇空さんの住民監査請求で問題を指摘・明るみにされて、監査で「不備が認められる」として再調査を命じられている状況なわけですから、如何に常日頃から「やるべきことをさせるのか」を考えなければいけないと思います。

「絵に描いた餅」という言葉がありますが、「餅の絵を描く」といういかにもおいしそうに見える計画を書くこと(=予算取りや予算消化)ばかりにかまけて、実際にお餅を食べた(=事業結果のフィードバックとその改善をした)つもりになっているのではないか、東京都知事・議員・職員がみんな揃いも揃って、そんなコントのような話を地で行っているように思えてなりません。

それでは「BONDプロジェクトの事業報告書から見る、東京都の問題点」のお話は以上とさせていただきます。
また、何か気付きがあればnoteに書いていきたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?