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野田里美さんの事、そして器の事。


こんにちは、のぶちかです!

さて今回は野田里美さんの作品について初めてじっくりと深掘ってみる事にします🔍

また、来る6月6日(土)22時よりJIBITAオンラインショップにて作品の販売もスタート致しますので、お買い物前の御参考にもどうぞ。

それではさっそく参りましょう!


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テキスタイルの企業デザイナーから陶芸の道へ

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中学2年生の時に「服のデザイナーになって最後はアパレルを立ち上げるのが夢!」と思っていたと、照れくさそうに語られる野田さん。

当然、その夢を叶えるべく選んだのはアパレル業界。

テキスタイルの企業デザイナーとして存分に力を発揮されていたそうです。

そんな中、「老後の趣味に」と、笑い話の様に会社の同僚と話していて、そのまま通う事になった場所が名古屋の陶芸教室。その時、野田さん24歳。

そこで一緒になった1人暮らしの60歳女性が放った

「これから陶芸家を目指す!」

という発言を受けて「無謀では…?」と少し困惑しつつも、その後に続けられた

「あなた達の年齢なら何にでもなれていいわね」

というひと言に、野田さんの心が陶芸を意識し始められたそう。

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転向そして陶芸本格始動

25歳のある日、上司に「(デザイナーとして)このままじゃダメだよ」と理由も分からぬまま言われた事があり、それをきっかけにふと「デザイナーとしての自分を見つめなおす事があった」と野田さん。

色々と考えた結果、

「この仕事は自分じゃなくても良いのでは?」

という境地に辿り着き、1996年に退社(当時27歳)。

テキスタイルの次に「自分だからこそ」を表現できるものを考え、陶芸を選択。

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その後、陶芸に本気を出すべく窯業学校を入試するも当時の陶芸人気は凄まじく、倍率7倍という壁に不合格。

「よくもこの私を落としたな~(笑)!」

と発奮し、

「それなら独学でなってやる!」

と、独学で陶芸を開始(す、凄い…汗)。

2000年、御主人の東京転勤をきっかけに東京にて陶芸教室のスタッフをしつつ埼玉県草加市で初めて築窯。

2002年、再度御主人の転勤により名古屋へ窯を移築し、翌2003年より岐阜県セラミックス技術研究所に研修生として2年間在籍。

ちなみにこの研究所では週替わりでプロの陶芸家に教えてもらう事ができ、特に釉薬のスペシャリストに教わる事ができた経験が野田さんにとっては大きかったそう。

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そして現在に至るという変遷ですが、

さてこうしてざっと野田さんのこれまでに触れその時々を想像すると、かなり陶芸家になりたい気持ちが強くないとここまでのアクションをし続ける事は難しかったであろうと思うのです。

更に、

中学時の夢が「アパレル立ち上げ!」というスケール感の大きさや、「自分だからこそ!」という、何か強く自己の内なるものを表現をしたいという思いが素養として備わっていた事は、今に至るまで必要な大きい要因だったのかなぁとも。

それらの経緯を知り改めて野田さんの作品を拝見すると、その魅力も更に増して見えてきます。

という事で、次はいよいよ作品に触れていきましょう!

野田さんとの邂逅

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初見は某フレンチレストランでの食事の際。

そこで使われていたのが☝の銀彩リム皿。とにかく端整なその美しさに一瞬で引き込まれ、その後すぐに野田さんへオファーをした事で現在までお付き合いさせて頂いております。

テクスチャへのこだわり

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☝リム部にだけ施された凹凸のあるテクスチャ。ランダムな凹凸が銀彩のこの作業ひとつで器の表情、雰囲気がグッと上がる。

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☝樹木の皮の様にひび割れたテクスチャ。

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☝糸の様にごく細く、しかも狭い幅で等間隔に刻まれた「千刻」シリーズ。

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☝カップ上部と下部でのテクスチャ切り分けパターン。何も施さない上部のテクスチャと比較すると下部の質感に強い奥行きを感じる。

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野田さんの作品で注目すべきはまずはそのテクスチャ。

一般的に陶芸の多くは、「釉質(焼き上がった釉薬の状態)」や「ボディ(素地)の表質」がそのテクスチャを決めている様に観ていますが、野田さんの場合は凹凸を付けたりひび割れさせたり刻んだりと色々な作業を施され、しかもそれが全くうるさい印象を持たずに静かにある点が魅力と観ています。

このこだわりについて野田さんに聞くと、

「なんでもかんでも見せるのじゃなく、何かひとつを見て欲しいと思った。自分にとってそれはテクスチャだった。だから色もシンプルにしている」

とのお返事が。

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見てもらいたい部分が明確で、かつそれを表現として成功させてしまうあたりがさすが野田さん、といったところであります(←生意気のぶちか)。

しかしながら驚いたのは、

「見て欲しいのはテクスチャ」

それなのに、実はロクロ技術も卓越している点を全くアピールされない点。

という事で次章では一部作品を紹介しつつ、野田さんに代わりその点についても触れていきます(レッツラゴー!)。

のぶちかお気に入りの作品紹介

「リム鉢」

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銀彩リム鉢
いきなりですが、のぶちかが野田さんの器で1番好きなのがこの銀彩リム鉢。その理由を挙げますと、先ずはその美しいフォルム!

ベースは洋皿の古典的なフォルムですが、縦横高さ内におけるフォルムバランスの良さ、緊張感を高める薄さ、そして質感を高めるテクスチャなどが、古典領域から野田さん独自の領域にまで昇華してしまっています!

ここに関してはまずもって野田さんのセンスの良さが完全に表出する分かりやすい部分であり、それがまたのぶちかに野田さんを信頼たらしめる大きな要因でもあります。

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次にロクロのお話を。

野田さんの器は全て磁器製ですが、磁器土は粘性が低くロクロで薄く伸ばすにはとても熟練した技術が必要となります。ちなみに某磁器産地にもとても薄い磁器はありますが、予め厚めにロクロをひいてから削って薄くするものも少なくありません。

そこで野田さんに恐る恐る

「削ってますか?」

とお聞きすると、

「ロクロ目を消す為に削りはしますが、その為だけの削りなので初めから薄くひいています」

とのお返事が(ヤッター!!! ← 期待通りで嬉しかった気持ち)。

ちなみにこのリム鉢、リム幅だけでも56㎜あり、施釉後の口造り(口辺)の厚みも2㎜と薄く、しかも、通常は口造りは薄く仕上げてもリムがスタートする腰の部分には厚みを持たせて、焼成時のヘタリ(歪み)が発生しない様に作業する場合がほとんどですが、このリム鉢はなんと口造りの厚みと腰の厚みがほぼ一緒という驚異的な造りなのであります~(ビッシ~)!

もちろん全てこの形状で焼きあがる訳ではないらしいのですが、それにしても完成度が高くてらっしゃる!

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「ロクロがかなりお上手(←ロクロひけんくせに生意気なのぶちか)ですが、(異業種からの転向なのに)凄いですね!」

と、そのロクロの妙技についてお聞きすると、

「私はロクロが下手な方…。ただ独学中にロクロも磁器もどんどん好きになって、とにかくひたすらロクロをひきまくりました(笑)」

と、明るく野田さん。

つまり、センスもあったでしょうがこの点については地道な修練の結果、上手くなったという事で間違いなさそうです…。

やはりどんなジャンルでもある一定以上の反復練習は必要な訳ですね 汗。

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千刻墨銀リム鉢

洋皿フォルムだとどうしても洋食で料理をイメージしてしまいがちですが、このリム鉢の包容力はそんなもんじゃござぁせん!

☝の写真なんて我が屋のジャージャー麺風のアジアン料理ですもの(←たまにオネェ)。

ちなみに写真はありませんが、野田さんはこのリム鉢でうどんも召し上がるそう。

それを聞いて楽になり、我が家も親子丼を盛ったりマーボー春雨盛ったり、何か色々と気取らずガンガン使っております☝

なので、

「こんなオシャレな器、どうやって使ったら良いか分からないわ…」

という方が万が一おられましたらこう思って下さい。

「これは丼(あるいは大き目の鉢)」 

どうですか?

急に料理が浮かんできませんか(笑)?

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☝岡山県倉敷市にある「松家製麺」さんの「釜玉ラー油セット」

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☝マーボー春雨

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☝五目納豆冷やしうどん

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☝ポトフ

シュッとした印象とは逆に、色々な料理のパターンをしっかり受け止めてくれるキャパの大きい野田さんのリム鉢、あたしゃあ大好きでやんす♡

リム皿

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次のお気に入りはリム皿。

リム部にのみ施された凹凸テクスチャは視覚的なメリハリを生むだけでなく、見込みには施さない事でカトラリー使用時のストレスを減らし、器体への損傷も軽減するという機能美も備えています。

美しさは表面だけにとどまらず、裏面にも手を抜かない意匠、作業が施されており、野田さんの美意識が強く垣間見れるポイントでもあります。

銀を焼き付けているので見た目は銀食器の美しさを備え、銀同じく時間と共に酸化していくので経年変化を楽しむ事も出来る、とにかく「美しい」のひと言に尽きるひと品です。

美しさの裏側に

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最近ではあまり珍しくなくなってきた異業種から陶芸家への転向パターンですが、とは言え転向後に陶芸家として力を発揮できるかは別のお話な訳で…。

そんな中、野田さんの作品は初見(2014年)からそのセンスや技量にプロの陶芸家のそれを感じていたので、前身でテキスタイルを扱っておられた経緯を聞いた時は割とびっくりしたのを覚えています。

今は昔とは違い、陶芸に関する情報やハウツーはかなり公開されているし、異業種(特にデザイン系)からでもセンスがあれば陶芸一本でやって来られた方をも凌駕できてしまう。

そんな風に感じていて、

「やっぱりセンスなんですかねぇ?」

と野田さんにお尋ねすると、何か違和感を感じておられるかの様に押し黙られたのが印象的で…。

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その原因は御本人に確認していないのではっきりとした事は定かではないのですが、謙虚にいる為の動作と言うよりはむしろ、

『私のこれまでのあらゆる努力や障壁の超克は、‟センス″の3文字だけでは包括できない』

という事なのかもと想像したりしています。

現に、磁器に関するロクロ技術は、ひたすらロクロをひきまくる事で手に入れてらっしゃる訳で、その他、窯業学校に不合格となってからも、土地が何度も変わっても、粘り強く陶芸家としてのスキルアップに尽力し続けてこられています。

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キャリアも20年以上と申し分なく、転向というよりは既に完全なる陶芸家と言う方が正しいかもしれませんが、いずれにしても野田さんから生み出されるこの美しいラインやテクスチャはその綺麗な印象とは逆に、

「自分でしか表現できないもの」

を達成するまで、あきらめずに泥臭く続けてこられた歴史に支えられている。

そんな風に見ています。

野田さんの器を手にされた方には、そんな背景ごと大事にして頂けたら嬉しく思います。

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使用上の注意

★全てのアイテムに関して電子レンジ・漂白剤は使用できません。
★食洗機は欠ける可能性があるので避けて下さい。
★銀彩シリーズは卵料理(目玉焼、卵焼き、ゆで卵)で使用すると、卵の硫黄成分と反応して黒く変色します。
★黒い器は使い始めは油染みが気になりますが、使用後の油汚れをあえて全体に塗り伸ばしてから洗って頂くと均一に育っていきます。
★経年変化(黄褐色~黒褐色)を楽しんで頂きたい器ですが、もし色味の変化がお気に召さない場合は、メラミンスポンジ、歯磨き粉、消しゴム、銀磨きクロス、重曹粉を水で塗らしてて磨く等の作業で輝きが戻ります。

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