「高須愛子 陶展」オンライン個展前日に、高須さんの事を語りたい。
いよいよから始まります、「高須愛子 陶展」のオンライン個展。
今回はちょっとその前に高須さんの事について語らせて頂きます。
おんとし71歳に宿る力。
イッチンや搔き落としによる技法で可愛らしいクロスやドット、草花紋を描く高須さん。
その作風からかお客様から
「(作者は)若い方ですよね?」
とほぼ断定的に聞かれます(笑)。
しかし、
実際の年齢はなんと71歳。
私の母親よりやや母親なのです(←どういう意味?)。
しかし!
年齢なんてなんのその、高須さんとの会話はとても楽しい♬
例えば、
(☝糸島のアトリエにて。わしの相談に乗ってくれている高須さん☝)
「凝り固まっちゃいけない。いつも市場の動向を見ながらニーズに応える姿勢が必要」
「作った器は自分で使わないとダメ。悪い点も良い点も見えてこないから」
「自分が作ったものに酔ってちゃダメ」
「『黒』の反対は『白』じゃないの、『赤』なの。『白』じゃ飲み込まれるの、『黒に』。だから『黒』は料理を盛っても暗くならないの。映えるのよ」
「見た瞬間に私の作品と分かるものを作らなきゃダメなの」
「パクっちゃダメ。パクリだけはやっちゃダメ」
そして、
「売り手も『これしかできません』じゃ、これからの時代を生き抜くのは大変かもしれない」
「頑張んなきゃ!子供育てなきゃいけないんだから!」
「海外? どんどん挑戦しなさい!(←本当はこんな上から目線じゃありませんがニュアンスとして(笑))」
と、わしへの叱咤激励も(滝汗)。
なんだか陶芸家でありマーケターの様でもあり、メンタルもフィジカルもパワフルで前向きで気持ちが良い高須さんだからつい話が弾んでしまうのです(笑)。
さて、上の高須さんのお話に少し触れると、
市場動向を見るという視点は「売れ続ける事の重要性」を真正面から捉えられた主張であり、
見た瞬間に自分の作品と分かるものを作るという視点は、「オリジナリティーの重要性」の理解が表れた主張と感じます。
そして一見対極に見えるこの2点を共存させる事が、現代において器作り(陶芸)を生業とする者が生き残る上では重要、という見解なのでしょう。
特に売れ続ける事の重要性に関しては、高須さんが周囲の陶芸関係者のあまりにも多くの浮き沈み(少なからず高須さん御自身も苦しい御経験はされた筈)を見てこられた事からきているもので、その中で「陶芸」そして「生きる」という事の厳しさと素晴らしさを何度も経験された事が起因して辿り着いた「覚悟」の様な答えなのだろうと感じました。
アートや創作関係者の中には「売れるものを作る」という事をダイレクトに表現したくない人もいます。
それはそれで悪くないのですが、高須さんにはその点をごまかそうとする姿勢は無く快活で清々しい。
それでいてしっかりとオリジナリティー溢れる作風を表現されるところに、わしが強く惹かれる理由があるのです。
井上萬二先生に支持していた事を隠す高須さん
話が少し硬くなったので柔らかく戻します(笑)。
JIBITAでの個展初日の在廊日、話の流れからふと高須さんが
「萬二先生によく言われてた。『お前は素直で良い。自分が下手だって分かってるから。自分で上手いと思い始めたら駄目だ。でもすぐに上手くなったと思ってしまうやつが多いんだよなぁ』って。私、(陶芸)下手だから(笑)!」
と話された。
その時、わしには高須さんの陶芸上手いか下手かトークは謙遜の類としてそんなに気には留めなかったが、「萬二先生」というお名前には猛烈に引っ掛かって、
「萬二ってあの(人間国宝)?」
と聞くと、
「私、有田(井上萬二先生の窯)で修業してたの。」
と・・・。
マジンガ~!!!?
という事でとても驚き、
「なんで教えてくれなかったんですか~!?」
とお尋ねすると、
「だって関係ないもん。作るものが全てだから。まだ言ってないけど私、陶歴ならまだまだありますよ」
と、超カッコイイお返事が(←わしが高須さんなら常にあいさつ代わりの『萬二先生のところで…』を言いそう、いや、言う)。
その他の陶歴も聞きたかったけど、高須さんのカッコ良さに水を差すのは嫌だったので聞かず、
「じゃあ磁器も(ロクロ)ひけるんですか!?」
と突っ込むわし!
「もちろん。(陶芸に関しては)色々やってきましたよ」
と平然な高須さん。
カッチョイイ~~~!
(☝※陶器より磁器の方が粘性が低く、ロクロが難しい)
その後は、若い頃に世界中の陶芸の産地を巡られた事や、この度の新作の土鍋はその時に見た「ハンネラ(タイの土器)」をヒントにされた事などを話して下さった。
(☝「ハンネラ」をヒントに作られた新作の土鍋。口の厚みといい曲線といい肌艶といいたまらん~泣!)
そんな色々なエピソードを伺うと
「色々やってきましたよ」
という台詞の中にわしはもう精いっぱいの想像力を掻き立て、
「高須さんはあれも知っててこれも知っててあの人も知っててこれもやれてきっとたくさんの失敗も経てその集大成として今の『黒』があるんや~!」
と、ひとり興奮と納得をしておったのです(←昔から想像癖強め)。
鑑賞者(売り手)としてはやはり鑑賞の濃度と充実感を上げる為には、色々なエピソードを聞けるのは嬉しい事なので、最後まで隠し通さず高須さんが色々とお話下さって本当に良かった(笑)。
少しだけ作品紹介
「なんで少しやねん!」
「そこがメインやないんかい!」
というお声が聞こえてきますが、しなやかにスルー致しましてようやく作品紹介をば。
高須さんの作風には大きく3種類あります。
「イッチン」
スリップ(泥漿)をスポイトにとって「ピュッ」と出しながら描く技法をイッチンといい、その為、絵付けと違って描いた部分が立体的になるのが特徴です。
イッチンでは主に「クロス」や「ドット」が描かれています。
「搔き落とし」
搔き落としは、胎土の上に違う色の化粧や釉薬を掛け、その上から削る事により胎土の色を露出させ、模様化させる技法です。
その為、イッチンと違い模様のある部分はやや凹みます。
高須さん場合、スプーンや箸を使う器にはイッチンの凸部が邪魔しない様にこの搔き落としで描いてあるのです。これも「自分の器を使ってみる」事を実践されてる方ならではの配慮ですな☝
「耐熱」
耐熱は直火OK! オーブンOK!です。
種類はグラタン皿☝や
新作のミルクポット(チャイやおかゆも作れます☝)
そして
新作の土鍋フィーチャリングハンネラであります。
しかし、よくぞ2か月でこれだけ新作を混ぜて総点数400点を御用意下さったと本当に感服致しておりますが、それだけにこの度の初個展はファンの方にとってはかなり嬉しくなるラインナップなのでは?と思っております。
見た目は渋カワ、でも作り手は長きにわたって「陶芸」と「生きる事」と向き合ってきた無骨な高須さん。
この面白いギャップを作品を通じてぜひ味わって頂けると嬉しいです。
☟「高須愛子 陶展」オンライン個展はこちら☟
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