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令和の怪作ーー『あつしの名探偵』で理不尽な謎を解明せよ!

 藤井健太郎ふじい けんたろうという男をご存じだろうか。『水曜日のダウンタウン』や『クイズ☆タレント名鑑』といった人気番組の総合演出として活躍している方で、悪意のある内容を面白おかしくする天才だ。彼の番組は下世話なものも多いが、他ではできないような角度でのキツい企画や大きな規模の企画が魅力的で、虜になっている人も少なくない。そんな彼が担当している番組から登場したのが、これからお話させていただく作品。

🔎|『あつしの名探偵』は名探偵なのか?

 『あつしの名探偵』は2023年12月31日にNintendoSwitchでリリースされたアドベンチャーゲーム。本作は毎年年末に放送される『クイズ☆正解は一年後』に関連する作品。この番組は1月に「今年結婚した有名人」「今年離婚した有名人」「M-1の優勝者」などの出題、回答をしたものを年末の生放送で答え合わせをするという長期間に渡るクイズバラエティ番組で、その中で「中古カセットとして秘密裏に全国で10本販売されたゲームのクリア者はいるのか」という出題があり、それを視聴者でもプレイ可能としたのが本作となる。

実際のカートリッジ

 昔からのゲーマーであればパッケージとタイトルから即座に『さんまの名探偵』を思い浮かべるだろう。こちらはタイトルの通り明石家さんまが主人公で、桂文珍が殺された事件を解決するために奔走するという内容だ。
 『あつしの名探偵』も同様にロンドンブーツ1号2号の田村淳が主人公となり、レイザーラモンRGが殺されるところから物語が進んでいく。2023年の年末に放送された番組内容も反映されており、放送後にプレイするのが一番楽しめる作品になっている。

▲『さんまの名探偵』のこのBGMは
すごく印象に残っている

 開発のHappymealハッピーミールはレトロゲーム風のアドベンチャーゲームをリリースしている会社。「ミステリー案内シリーズ」は、どこかで見たことがあるようなデザインが魅力的。めちゃくちゃ良いところに開発してもらったと思う。適材適所すぎる。

⭕|シンプルな操作で地道な捜査!

 同系統のゲームをやったことがある人ならすぐに入りやすいシンプルな操作性。右側にズラッと並んだ選択肢から行動を選んで物語を進める。「はなす」で一通り話したり、「しらべる」で全部調べ終わったりすると新しい展開に進む。結構わかりやすく、特別な効果音が流れた際の「進んだ!」という感覚は懐かしさも相まって良かった。

できることはそこまで多くはない

⭕|番組の内容を取り入れた、奇妙なストーリー

 テレビ番組発のゲームということで、番組内容をふんだんに盛り込んでいるのが一番の特徴。ゲームの始まりは2023年の年始に収録された「レイザーラモンRGの2023年あるある」だし、途中に出てくる鳥は2015年の番組の企画で登場していた九官鳥の「豚ホルモン」だし、番組ファンが「これは!?」と思うような要素が要所要所に差し込まれている。

TBSが主な舞台

 また、登場する多くは芸能人となるが、良くも悪くも少し誇張されてる感じで描かれている。特に、有吉弘行ひろいき矢作兼おぎやはぎは悪意を感じるくらいにサイコパスみのあるキャラクターとなっていた。

誇張されてる

❌|理不尽な謎解きと超高難易度ミニゲーム

 「謎解き」というと少しズレてるかもしれないが、物語を進めるうえで調査する部分に悪意がある。レトロゲーム特有の理不尽さを意識しているのだと思うが、ノーヒントで画面中をくまなく調べないといけない場面があり、それが本当に調べて意味があるのかどうかもわからない状態というのがキツかった。「しらべる」は毎回カーソルが中心にリセットされるため、しらみつぶしで調べようとするとかなり面倒くさい。

 また、ミニゲームで一定の点数を取ることで物語が進む場面があるが、これがまた難しい。内容は非常にシンプルで、指定された色にタイミングよくカーソルを止めるというもの。カーソルはどんどんと早くなり、下部の色分けもランダムとなるため、1マスに止めることを何回も要求されることも多々ある。ここで要求される「一定の点数」というのがかなり難しいもので、それを避ける別ルートとして用意されているのが番組の企画で登場したとある花屋さんの壁面に書かれている言葉を入力するという仕掛け。番組のファン的にもかなり面白い仕掛けだが、プレイヤーによってはこっちもかなり難しいルートになり、ここで攻略が止まってしまう可能性が高い。今では調べればサクッと答えが出てくるのが唯一の救いであり、制作側もネット上で答えが流出するということは想定済みだとは思うが、結構攻めたことをしてきたなと感じた。

地獄のだるま落とし

⭐|番組のテイストがふんだんに詰まった、この番組でしか作れないであろうクレイジーな作品!

 個人的には大満足な一作でした。レトロゲームはもちろん、『クイズ☆正解は一年後』が大好きなファンには非常に楽しめる内容となっている。
 理不尽な部分はあるものの、基本的には全コマンドを試していくことで物語は進んでいくので、「鬼畜」というレベルではないかもしれない。ただ、カートリッジ版ではセーブ機能がなく、パスワードを毎回入力しないといけなかったらしいので、そういう部分は「鬼畜」だったのかもしれない。

66文字

 ゲームとしては、二転三転するシナリオは面白く、番組の特性を活かしたぶっ飛んだ内容は他ではマネできない唯一無二の作品だと思う。クリアまでは初見で約10時間〜15時間程度かかった。結構苦戦した。最後の最後の犯人当てはゲーム中でのヒントがほぼ無いこともあり、番組の方向性やテイストを理解していないと打開が難しいし、おそらく年数が経つほど難易度が上がっていくだろう。良くも悪くも、一番楽しめるのは2023年の年末放送後なので、刺さる層はかなり限られている。完成度が高いが、内容的にも埋もれてしまいそうなのは残念な限り。

ちなみに「とある花屋」とは

 番組の企画でも協力していた花屋さんは新宿にある。……と言っても、最寄り駅は新宿駅ではなく、少し離れた都営新宿線の曙橋駅

 実は、実際にここに行ってからじゃないと記事は公開できないな、と思っていた矢先に運よく来店することができたので公開に至ることができた。近くへ行かれた方は、ぜひともご来店を。

 それでは。

 おわり。




 


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