シュールな世界で走る。俺は走る。『ニッポンマラソン』を走る。勇敢に走る。人気のまま走る。そして、走る。行く。
ベギン
勇敢な
走る…
行く
『ニッポンマラソン』とは
2018年12月17日にSteam、PS4、Xbox、NintendoSwitchでリリースされたレースゲーム。ジャンルは他に言いようがありそうですが、PSStoreの表記がレースになっていたので、ここではレースとします。
本作の魅力は、なんといってもクレイジーな世界観。開発はイギリスのOnion Soup Interactive。洋画や洋ゲーなどで見られる「外国人が勘違いした日本」を理解した上で、あえてそれを目指して作ったとのこと。まさにそれは狙い通りで、コース上の看板や会話のテキスト、キャラクター名、いたるところにその要素が散りばめられています。
かなり人を選ぶ作品だが、興味を持ったなら触ってみても良いかもしれない。PS4版は、7月のフリープレイの対象になっているため、お試しするにはもってこいだ。特に、下記のプロモーション映像を見てピンと来た人は触って損はないはず。
ヘッダーの画像はPSStoreの製品紹介ページより拝借しました。
シュールな世界観についていけるか? ちょっとついていけない
『ニッポンマラソン』にはいくつかモードがあるが、その1つがストーリーモード。プロモーション映像のタイトルと共に映っている4人のキャラクターから1人選び、主人公として操作するモード。前述のとおり、本作は「外国人が勘違いした日本」をベースとしているため、ストーリーモードのテキストは非常にシュールである。レースとレースの間に会話パートがあり、『ニッポンマラソン』の世界観を感じさせるストーリーが展開されます。終始、意味不明なやり取りが延々と続き、容赦なく文字が羅列されていきます。製作者はインタビューで以下のように語っており、意味がわからないのは当然なのだなと感じます。
すぐにグーグル翻訳を使用し、ナンセンスな漢字とひらがなを追加してみました。あえてバカバカしいフレーズを選んで、あまり意味がわからないものにしました。友達に遊んでもらったところ、本当に日本製のゲームだと思ってもらえましたよ!
※インタビュー記事より抜粋
これを把握した上でストーリーを読んでもさっぱり意味がわからない。だが、それが正しいのかもしれない。当たり前のように話は進み、意味不明なことを当たり前のように納得するキャラクターたち。大まかなストーリーは「ニッポンマラソンを通じて出会った仲間が、不正をしている運営の悪事を暴く」というもので、イカれた展開とセリフを置いておけば、ちゃんと作られている。
会話パートにはメインキャラクター4人分の固有ストーリーと共通ストーリーが用意されており、やたらと長い。1人のキャラクターをクリアするのに2時間程度かかる。
そして、私は文字を読むのを止めた。
キャラは可愛かったりするが、騙されてはいけない
意味のない音声と脈絡のないBGMの切り替えに心を疲弊する
レース中はもちろん、ストーリーモードの会話のテキストが表示される際にも音声が再生されます。それらがまた突飛なもので、表示されるテキストとはほぼ関係ない音声が鳴り響きます。以下は音声の一部だが、会話中に入れ代わり立ち代わり鳴り響く。
・集え! 精霊の力よ!
・やったぜ!
・また遊んでね
・かわせるかしら!
また、BGMの切り替えも頻繁に行われます。シリアスな場面と平常時の場面とで一応考えられてはいると思うのですが、ストーリー内ではそれらが頻繁に入れ替わります。なので、急にBGMが切り替わり、割と脳が混乱して疲れます。シュールな文章、コロコロ変わるBGM。
そして、私はイヤホンを外した。
あ、一部コースで聞ける「よろしく頼むぞー」はかなりお気に入り。本作をプレイしている人と会う機会があれば、積極的に使っていきたいセリフである。
ここで再生される音声は「集え! 精霊の力よ!」
ゲームのメインであるレースは面白い
レースについては、正直面白い。というより、個人的に好みなバカっぷり。物理演算による理不尽な負け方やCPUの異常な挙動など、かなり笑える。
システム的にはマリオカートのように、道中にあるアイテムボックスを取って、1位を目指してコースを走っていく形式。各選手は「★」を4つ持つ状態からスタートし、道中「★」を増減させながらゴールを目指す。本作はカメラが1位をメインに表示するようになっており、画面から外れた人、もしくはコース外に落ちてしまった人たちがレースから脱落していく。最初に脱落したら★が「−2」、2番目に脱落したら「-1」、3番目の脱落はペナルティなし、残った人は★が「+1」される。最後の1人になったタイミングで仕切り直しが行われ、再度4人でレースが再開される。★の増減は各プレイヤーの走りっぷりに関係するため、レースの展開によっては多くなる場合もあれば少なくなる場合もある。
レース中のアイテムにはいくつか種類があるが、「アイテムを使う」か「アイテムを食べる」という2つの消費方法がある。アイテムの性能によるが、使えば他人の邪魔に、食べればスピードが上がる。自分の順位、コースの具合、相手の位置を見極めて使い分けるのは面白い。ただ、アイテム種類が少ないので、もっと種類が多ければ駆け引きがあって良かったかもしれない。惜しい。
レース時間は、全体的にゲームのスピードを上げるターボモードを使って約3分ほど。通常だと、おそらく5分以上はかかる。最初は長く感じるかもしれないが、コースの全体像がわかると丁度いいと感じると思う。
コースは全部で8コース。各コースは「外国人が勘違いした日本」をしっかりと形にしており、背景の看板やギミックなどに遊び心があってとても好印象。
謎の看板たち
パーティゲームとしての力が超優秀
先ほど言ったとおり、かなりのバカっぷりを見せてくれる本作。物理演算を使っているため、プレイヤーキャラクターやオブジェクトが想定外の動きをすることがまれによくある。頭が壁にめり込んで動けなくなる、爆発でふっ飛ばされてコース外に行ってしまう、柴犬に噛まれまくって全く動けなくなるなどなど、プレイしていたら思わず「おい! クソゲーか!?」と言ってしまうことでしょう。そのため、気心の知れた仲間内でやると非常に盛り上がると思われます。良くも悪くも、初見だとコースがかなり分かりづらいため、そこも盛り上がる一因になると予想できる。
また、道中で獲得した★の数やゴールの着順だけで結果が決まるわけではない部分がパーティゲームとして優秀であるポイントです。長く走ったり、特定のアイテムを取得することで「ステッカー」という追加点がもらえたり、「人気」というパラメーターによる加点があり、最後の最後に「人気」で巻き返すことも可能というゲーム性が良い。
ランダムに発生するミニゲームがとてもシュール。これによって「人気」が増減するが、マジで謎すぎて良い。
1つ残念な点は、オンライン対戦機能がないことだ。もしオンライン対戦ができるようになっていたら、もっと売れていたんだろうなぁ、という印象。みんな、友達の家に集まってプレイしよう。
インタビューに対して即興で回答を作るミニゲーム
意外にも音楽が良い
本作では、効果音や音声のほとんどはフリー素材となっています。しかし、音楽はオリジナル。良いと感じるのは、ゲーム部分の粗さとのギャップのせいだろうか。いや、違う。特にレース中の音楽はいい感じのレース感があって良い感じ。「Superlove Racing」はステージ1とステージ8のコースで使用されるが、ステージ8で流れるシチュエーションとアレンジが良くて、かなり好きです。なお、下記動画には収録されていないので、実際にプレイして聴いて欲しい。
アーリーアクセス版だが、公式がサントラを投稿していた
ストーリー以外のモードも基本的には面白い
「先頭モード」は各コースを個別に走る、もしくはコースをまとめて走るハーフマラソン、フルマラソンが用意されている。いわゆる練習モードだったり、対潜モードという感じ。まずはここで一通り走って見るのも良いかもしれない。フルマラソンはターボモードで約40分ほどかかるので覚悟しておこう。
「先頭モード」は誤字ではない
「パーティモード」は2種類のミニゲームが楽しめる。ロブスターモードはSASUKEのような雰囲気のモードで、制限時間内にどれだけコースを長く走れるか、というもの。コース中にある「的」を突き破ると制限時間が伸びて、さらに走行距離を伸ばすことができる。アクション要素が強めで面白い。
レースで培った技術を見せつけろ
もう1つはGo-Go-Trolleyボーリング。まぁ、いわゆるボウリングだ。ショッピングカートを球に見立てて、巨大なピンを倒していく。1投ごとに制限時間があり、なかなかにシビア。ランダムに障害物が配置され、簡単にはハイスコアを出すことはできない。ショッピングカートだけでなく、自分自身も球としてピンに突っ込むこともでき、普通のボウリングとは一線を画すモード。面白い。
なかなか難しい
「旅行モード」はコース中に落ちている「旅行ガイド」を取得することでページが解禁されていく収集モード。中身はニッポンを紹介する内容となっているが、ストーリーモードと同様にカオスである。面白い。
ちゃんと読んでいないが、全部こんな感じ
不親切と親切のミルフィーユ
親切な点は、レース時間の短縮のためのターボモードやミニゲームのON/OFF、アイテムの固定化など、割と親切な設定が用意されている。これらを使うにはストーリーモードや先頭モードなどで手に入るお金を貯めなければならないのですが、そこまで高くないので、すぐに買える点も良い。
不親切な点は操作説明不足。ストーリーモード上での操作説明は一切なく、メインメニューのチュートリアルかレース中のポーズ中に見ることができる「操作」から確認するしかないのが残念。もう1つはストーリーのスキップがないこと。レース間のストーリーは結構長くなっており、○を連打してもなかなか進まない。ストーリーモードのレース中にタイトルに戻り、再度ストーリーモードを再開するとレースからではなくストーリーの会話パートから全部見ないといけなくなる。連射キーがあれば別だが、いちいち押さないといけないのはつらい。また、レース中にミスった場合に「レースを始めからやり直す」といったものはなく、レースを最後まで見るか、タイトルに戻って再度会話パートからやり直すかの二択となってしまう。
ミニゲームの項目は、しばらくすると勝手に設定が変わるような気がしないでもない
問題にするべきかもしれない、著作権とは
『ニッポンマラソン』では、テキスト以外にもシュールな画像も表示されます。レース中に1回の走りが長いと「何か悪い」と犬やメイドさんの画像が表示され、走者を脱落させる仕掛けが一気に襲いかかります。それらはまだシュールで笑える要素ではあるのですが、目を疑うものも一部あります。その1つはたこ焼きの画像。隅に「銀だこ」のロゴマークがある。とても許可を取っているとは思えない……。もう1つはバラエティ番組の1シーンと思われる画像。私の記憶が間違っていなければTBSの「オールスター感謝祭」です。こちらも許可を取っているとは到底思えない。実際、スタッフロールにもそれぞれの企業の記載はない。
やっていることやゲーム中の「バカだなーw」という雰囲気に誤魔化されて、こういった部分が怪しいのは残念である。また、これらの画像に触れているページも見つからないため、有耶無耶になっているのではないだろうか。通常は有料で配信をしているのだから、キチンとしてもらいたい。ゲームの世界観的には有りだが、倫理的には無しだろう。正直、該当する部分の画像はゲームの性質上なんでもいいのだから。こんなのでつまづくのは勿体ない作品だと思う。
インディーゲームだからいいのだろうか
好きな人には突き刺さる、異世界ニッポンを走破できるパーティゲーム!
長時間遊べるわけではないが、仲間内でワイワイと笑いながら、ツッコミながら盛り上がることができるクレイジーなゲーム。先に書いているが、オンライン対戦機能がないのが悲しい。ストーリーモードはおすすめできないが、レース部分については理不尽な引っ掛かりや予期しない吹っ飛びなど、笑える要素があって私は好きです。コースについては、個人的にはステージ7やステージ8がお気に入りです。特に、ステージ8の主題歌っぽい曲をBGMとして走るコースはかなり好きで、毎回走るときには力が入ってしまいます。PS+に加入している方は、この機会に少し走ってみても良いのではないでしょうか。
トロフィー取得については電撃オンラインの記事が非常に丁寧で助かりました。プレイする方は、併せてご覧ください。
このクレイジーさはオンリーワンかもしれない
ストーリーモードのダルさはあったものの、
楽しみながらトロコンさせていただきました
まさか!? ゲームセンターで『ニッポンマラソン』ができる(予定)
余談。怪しい筐体なんかではなく、ちゃんと公式的にプレイができる。正確にはまだロケテストをしている段階だ。名前を『ニッポンマラソンターボ』として稼働予定。アーケード用に新キャラクターも用意されているらしい。exA-Arcadia(エクサ・アルカディア)と呼ばれる基盤によって、『ニッポンマラソン』以外にも様々なゲームができるようになるとのこと。他には、ファミコンで発売していたアクションゲーム『ギミック!』がアーケードで遊べるようになる予定。細かい話はわからないので、各自調べて欲しい。稼働したら、ぜひともやってみたいものだ。
それでは。
おわり。
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