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不定期刊『不意味文集』

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「不意味文章」を集めたものです。
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記事一覧

不意味文章「目覚めの朝に」

不意味文章「目覚めの朝に」

 おはよう。

 今日はどうするの?

 ……うん。あぁ。そう。

 それだったらついでに前にお願いしてたやつ。

 そう、それ。

 ありがとう。

 そっか。

 うん。

 うん。

 ……。

 はーい。

 え、うん。

 そっか。

 じゃあね。

不意味文章「蟹・鑢・超元気」

不意味文章「蟹・鑢・超元気」

 これはどこにでもある話。それは大学を卒業したばかりの蟹。大学時代にバイトしていたスーパーの鮮魚売り場を辞めてしまった蟹は、行く当てなく彷徨っていた。無い金をパチンコに注ぎ込むも、騒がしいのは両隣。

 虚ろな目をしながら店を出たところで出会ったのは、同じような雰囲気を出している鑢の姿だった。

 「久しぶりだな」

 鑢はこちらに気づいて声をかけてきた。彼は大学で同じゼミだったのだ。だが、あまり

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不意味文章「運試し」

不意味文章「運試し」

 年が明け、去年一年の行いがどれほどのものだったのかが試される行事がある。それが「御神籤」だ。今年の運勢を占うのではなく、去年の総決算ということ。勘違いしてはならない。
 凶が多いことで有名な浅草寺では「凶30%、大吉17%、吉35%、半吉5%、小吉4%、末小吉3%、末吉6%」という配分となっているらしい。つまり、一番少ない「末小吉」を引くことができれば最高の運勢と言っても過言ではない。単純に字面

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不意味文章「嫉妬」

不意味文章「嫉妬」

 動機は「嫉妬」だった。私と違って、彼女はあらゆることが優れている。才能、金銭、外見、人望。私が彼女に劣っていないところを探す方が難しかった。

 彼女は毎晩遅くに帰ってくる。リモートワークが増えている昨今だが、彼女は朝早くから家を出て、夜遅くに帰ってくる。私は毎日彼女を見ていた。私が彼女だったら。彼女自身に「なる」ことができたのなら、私は何をするだろうか。

 とある雨の日、彼女の帰りはいつもよ

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不意味文章「フェイスレス」

不意味文章「フェイスレス」

 僕には顔がない。もちろん、これは比喩表現。クラスでは浮いた存在。何かあったわけじゃない。むしろ何もなかったからこそだろう。クラスメイトで僕の顔を覚えてる人はいないだろう。やがて僕は「顔がない者」と名乗って活動を始めた。学校の裏サイトを立ち上げ、華々しい人たちの裏側をかき集めてばら撒く。それが僕の快感であり、復讐だった。

 高校3年間はいろんな情報を掌握しながら、クラスでは上手く立ち回っていたお

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不意味文章「2022」

不意味文章「2022」

 「2022」という数字を見て、何を思い浮かべるだろうか。多くの人は「2022年」を思い浮かべるだろう。私は今、2022年の12月2日にいます。
 「今日の」12月2日ではワールドカップの試合が行われ、強豪スペインに日本が勝ち、お祭り騒ぎになっている。「昨日の」12月2日では順当にスペインが勝利した。
 「同じ内容の日常が繰り返される」わけではない。毎日内容が違う同じ日が続いている。前回の失敗を繰

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不意味文章「福袋」

不意味文章「福袋」

 余り物には福がある。

 それは、あまりにも余ったモノたち。

 甘い算段で利を得ようとした甘利物。

 我が蹴鞠で使用していた鞠。

 あ、毬藻。

 Ah Marrie Moon Oh.
 That's right.

不意味文章「酒乱」

不意味文章「酒乱」

 今年の仕事も全て終わり、一週間ほどは翌日のことを考えなくても良さそうだ。我慢してきた酒を浴びるほど飲んでやろう。

 今やってる仕事はいわゆる「IT系」ってやつなんだが、もうイワテラがダメで。のりかえないちゃってられん。で、ファストリモートがしゅryゆのj時代にぞおmとぁやってられんわ。毎日毎日ミーティング。出る話は上場する差のなんだの。そんあ時間あっるんやったら少しでもああ業させてくれ。

 

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不意味文章「鐘の音」

不意味文章「鐘の音」

ゴーーーーン……。

 遠くから鐘の音が聞こえる。これで16度目。年に一度、この音を聞く。それが合図だ。奴らは目覚める。私達にとっての恒例行事

 人々の憎悪が集まり、それが「厳鐘」によって刺激を与えられることで視認することができるようになる。

 蚊のような弱々しい憎悪もあれば、熊のような獰猛な憎悪もある。私達が所属する「楼光神社会」では、各々がカスタマイズした武器を手に持ち、憎悪の討伐に向かう

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不意味文章「屋上」

不意味文章「屋上」

 屋上はみんなのもの。だけど、今は僕のもの。高い場所から校庭にいる生徒を見下ろすのが快感だ。靴と靴下を脱ぎ捨て、足を伸ばす。気持ちが良い。今日は曇り時々雨って天気予報で見たけど、太陽が顔を覗かせている。……あ、そろそろ来る頃かな。

「おはようございます。先生」

 後ろから声をかけられた。彼女は宮下 遥。成績は真ん中ほど。クラスで3番目くらいにモテる。月に1度は遅刻をする。そんな普通の生徒だ。

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不意味文章「舞」

不意味文章「舞」

 私は宙を舞う。くるくると、風を切る。足が上へ下へ、激しく舞う。頭が東西南北どこを向いているのかがわからない。X軸、Y軸、Z軸が秒刻みで大きく変わる。

 「下にあるのはなんだ?」

 そう思っているうちに下は上になる。じゃあ、上にあるのはなんだ。答えは出てこない。さぁ、今度は上が下になった。

 体感時間にして数十分。実際は数秒だろうか。地面に身体の一部が触れたとき、私はもう舞えなくなるだろう。

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不意味文章「光の中へ」

不意味文章「光の中へ」

 12月24日。多くの人の心が浮つき、気が緩む日だ。街は煌めき、老若男女問わずに笑顔が咲く。その傍ら、スーツを着たサラリーマンが忙しなく動き回る。キレイな夜景は、大量の残業にて作られる。

 渋谷、ハチ公前。誰とも待ち合わせをしていない男が静かに佇む。必死にナンパをする若者気取りのおじさん。ギャーギャーと喚く謎の集団。男と似たような雰囲気を持つ者たち。ここには風情も何も無いようだ。

 19時53

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不意味文章「灯台」

不意味文章「灯台」

 私達の道標となる灯台。暗闇の中、神々しく光る。光に向かって行けば、自ずと目的地に着く。そう、思っていた。
 進んでも進んでも、光に近づいている感覚がない。だが、不思議と光に吸い込まれるような気がする。周囲は真っ黒で、足に伝わる揺れだけが、ギリギリ船に乗っているということだけを認識させてくれる。

 あぁ、そうか。「ヘラクレスの塔」。私は光に飲まれてしまった。

不意味文章「足跡」

不意味文章「足跡」

 雪が降った。歩いてみた。振り返ると、足跡が残っていた。私がここまで歩いてきた証だ。もちろん、正面にはまだ私の足跡は刻まれていない。進むべき道は決められていないのだ。どこに行こうと私の自由。ただ、進めば足跡は残る。

 足跡は消せない。だか、足跡に怯えてはいけない。動け。動け。動け。まだ、動けるうちに。