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不意味文章「目覚めの朝に」
おはよう。
今日はどうするの?
……うん。あぁ。そう。
それだったらついでに前にお願いしてたやつ。
そう、それ。
ありがとう。
そっか。
うん。
うん。
……。
はーい。
え、うん。
そっか。
じゃあね。
不意味文章「蟹・鑢・超元気」
これはどこにでもある話。それは大学を卒業したばかりの蟹。大学時代にバイトしていたスーパーの鮮魚売り場を辞めてしまった蟹は、行く当てなく彷徨っていた。無い金をパチンコに注ぎ込むも、騒がしいのは両隣。
虚ろな目をしながら店を出たところで出会ったのは、同じような雰囲気を出している鑢の姿だった。
「久しぶりだな」
鑢はこちらに気づいて声をかけてきた。彼は大学で同じゼミだったのだ。だが、あまり
不意味文章「運試し」
年が明け、去年一年の行いがどれほどのものだったのかが試される行事がある。それが「御神籤」だ。今年の運勢を占うのではなく、去年の総決算ということ。勘違いしてはならない。
凶が多いことで有名な浅草寺では「凶30%、大吉17%、吉35%、半吉5%、小吉4%、末小吉3%、末吉6%」という配分となっているらしい。つまり、一番少ない「末小吉」を引くことができれば最高の運勢と言っても過言ではない。単純に字面
不意味文章「フェイスレス」
僕には顔がない。もちろん、これは比喩表現。クラスでは浮いた存在。何かあったわけじゃない。むしろ何もなかったからこそだろう。クラスメイトで僕の顔を覚えてる人はいないだろう。やがて僕は「顔がない者」と名乗って活動を始めた。学校の裏サイトを立ち上げ、華々しい人たちの裏側をかき集めてばら撒く。それが僕の快感であり、復讐だった。
高校3年間はいろんな情報を掌握しながら、クラスでは上手く立ち回っていたお
不意味文章「2022」
「2022」という数字を見て、何を思い浮かべるだろうか。多くの人は「2022年」を思い浮かべるだろう。私は今、2022年の12月2日にいます。
「今日の」12月2日ではワールドカップの試合が行われ、強豪スペインに日本が勝ち、お祭り騒ぎになっている。「昨日の」12月2日では順当にスペインが勝利した。
「同じ内容の日常が繰り返される」わけではない。毎日内容が違う同じ日が続いている。前回の失敗を繰
不意味文章「鐘の音」
ゴーーーーン……。
遠くから鐘の音が聞こえる。これで16度目。年に一度、この音を聞く。それが合図だ。奴らは目覚める。私達にとっての恒例行事
人々の憎悪が集まり、それが「厳鐘」によって刺激を与えられることで視認することができるようになる。
蚊のような弱々しい憎悪もあれば、熊のような獰猛な憎悪もある。私達が所属する「楼光神社会」では、各々がカスタマイズした武器を手に持ち、憎悪の討伐に向かう
不意味文章「光の中へ」
12月24日。多くの人の心が浮つき、気が緩む日だ。街は煌めき、老若男女問わずに笑顔が咲く。その傍ら、スーツを着たサラリーマンが忙しなく動き回る。キレイな夜景は、大量の残業にて作られる。
渋谷、ハチ公前。誰とも待ち合わせをしていない男が静かに佇む。必死にナンパをする若者気取りのおじさん。ギャーギャーと喚く謎の集団。男と似たような雰囲気を持つ者たち。ここには風情も何も無いようだ。
19時53