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「アド・アストラ」 ブラピが宇宙の果てで見た古いミュージカル映画の題名は?

ブラッド・ピットが近未来に宇宙へと旅立つ映画「アド・アストラ」”AD ASTRA”(19年)。劇場で見逃していたので、WOWOWで鑑賞。
あの音のない、無重力でゆっくり動く宇宙空間を味わうのは、本当は劇場の大画面が一番なんですけどね。

見てて驚いたのは、そこで古いミュージカル映画のことが出てきたこと。今回はその話をしようと思う。

ブラピ扮する宇宙飛行士が、死んだと思っていた父親を探して海王星近くの宇宙ステーションまで行こうとする。火星まで行き交信(地球からだと電波が届かないらしい)した際、クールなブラピが、それまで抑えていた感情が出て、父にこう語りかける。

昔一緒に白黒の古いミュージカル映画を観たよね

ぼくはこのセリフを聞いたとき、てっきりアステア&ロジャースの一連の映画だと思っていた。だが、実は違っていた。そのミュージカル映画とは、「オーケストラの妻たち」(42年)(未公開)だったのだ。

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"Orchestra Wives" (1942)    Illustration by nobu

この作品は、題名そのままに、オーケストラ・メンバーの妻になった女性たちのお話。オーケストラはクラシックではなく、ジャズ・バンドである。

ヒロインのアン・ラザフォードは、トランペッターのジョージ・モンゴメリーを好きになり、結婚しそのままツアーに同行する。先輩メンバーの奥様たちと仲違いになり、バンド解散の危機となるが、最後は円満に解決する。

遊び人のバンドマンに口説かれて即結婚するなんて、今見るとププッと笑ってしまうほどウブな女性の話だが、この映画のキモは、本物のグレン・ミラーが出演し、演技もしていること(タイトル・バックでは「ムーンライト・セレナーデ」がかかる)。それにフランク・シナトラなどに、その後歌われたスタンダード・ナンバー「アット・ラスト」と「セレナーデ・イン・ブルー」が初めて使われたことだ。

そして一番の見どころは、グレン・ミラー楽団演奏の「カラマズーの娘 I’ve Got a Gal in Kalamazoo」をバックに、(天才!)ニコラス・ブラザーズが素晴らしいタップ・ダンスを披露する場面である。 

Reference YouTube

実は「アド・アストラ」で出てくるのは、この場面。宇宙の果てで、無重力の中、ブラピはニコラス・ブラザーズを眺めるのだ。なんともおしゃれではないか(笑)

ブラピの他のキャストの、トミー・リー・ジョーンズ、ドナルド・サザーランドは「スペース カウボーイ」(00年)、妻役のリヴ・タイラーは「アルマゲドン」(98年)にそれぞれ出演していたので、なんか宇宙モノのOB戦みたいだ。
もっと言えば、「オーケストラの妻たち」のシーザー・ロメロは、東宝映画「緯度0大作戦」(69年)に出演していたから、これでSFとミュージカルが繋がったというわけだ(こじつけですな・笑)

てなことで。


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