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【小説】未来から来た女(5)

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洗濯物をベランダに干し終えて、リビングへ戻ったら、悠太はテレビのゴルフ解説者になっていた。「あの距離のパットを外すかね・・・」BSのゴルフ中継の画面に、突っ込みを入れながら大きな、ため息をついているところだった。
「最近、ゴルフ、ご無沙汰だね」「・・・」悠太は返答してこない。
「そういえば、おばあさんのご主人もゴルフ好きだったて言ってた」悠太は、またおばあさんの話しかよッ!ってな厭な顔をした。「でもね、ある事件を境に、ピタッとやめたんだって、ゴルフを」悠太はテレビ画面を観てる姿勢なのだが、耳だけは私の方へ向けているのがはっきりと判る。
「そうそう、バツイチだって!」「誰が?」「おばあさんだよ!ご主人は、優しい人だったけど、女グセが悪くて、浮気でしょっちゅう揉めてたんだって」
 悠太は、ゴルフ中継どころではなくなった様子だ。「それも、数えはじめたら片手の指で足らないって!メタボで醜男のクセになぜかモテたのよ。要するにご婦人にはマメだったんだね。いるでしょ!そういう殿方って」って、言い終えたおばあさんに、突然、オタクの旦那さんは?って聞かれたので、ウチもゴルフは好きな趣味ですけど、ご婦人の方の趣味はありませんって言い切ったんだと胸を張って、悠太を見れば、案の定視線をしっかり外された。
「さすがだよ!あんなラフから、グリーンに乗せてくるんだから・・・」悠太は、ゴルフ解説者に戻っている。「でね、初めは知らんぷりしてたんだって」悠太がチラッと私の顔を見たので、「浮気をよ!ご主人の浮気のことをよ!ご主人にいちいち、問い正さなかったんだって!」私はここぞとばかり、念を押すように「浮気」という言葉を重ねて言った。
「ここで、池!ポッちゃんかよ、そらないよ」悠太は完全に解説者の顔だ。逃げたのだ。私は、構わず俄解説者の背中に、未来から来たおばあさんを覆い被せる。
「ある日のこと、今回こそって、ゴルフバッグとシューズバッグのチャックを細い絹糸で結わいて、泊まりがけだという、ゴルフコンペに送り出したんだって」私は、一気に言いきって大きく深呼吸をした。
「悠太!聞いてるの?コンペから戻って来た、ゴルフバッグとシューズバッグの絹糸どうなっていたと思う?」「・・・」「悠太!聞いてんの?」
「入っちゃったよ!これで、ナインアンダーかよ!コリャ~厳しいね」
 厳しいのはあなたの方でしょう!と私は、悠太を睨み付ける。


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