配偶者短期居住権

 配偶者短期居住権(民法1037条~1041条)とは、被相続人の配偶者が相続開始の時に被相続人所有の建物に無償で居住していた場合に、そのまま、建物の所有権を相続あるいは遺贈を受けた人に対して、無償で居住することができる権利をいいます。

 従前の最高裁判例(平成8年12月17日)で、共同相続人の一人が、被相続人の許諾を得て、被相続人所有の建物に同居していた場合は、特段の事情がない限り、被相続人との間で、相続開始時から遺産分割時までの使用貸借契約が成立していたと推認する、というものがありました。

 しかし、第三者に居住建物が遺贈された場合、被相続人が居住に反対していた場合などに使用貸借が推認されず、残された配偶者の保護に欠けてしまうことになります。

 そこで、配偶者が相続開始時に被相続人所有の建物に無償で居住していた場合であれば当然に成立する権利として創設され、令和2年(2020年)4月1日に施行されました。

 無償で居住することができる期間は、①居住建物について、配偶者を含む共同相続人間で遺産分割をするべき場合には、遺産分割により居住建物の帰属が確定した日又相続開始の時から6か月を経過する日のいずれか遅い日、②それ以外の場合(居住建物が遺贈された場合等)には、居住建物の取得者から配偶者短期居住権の消滅の申し入れの日から6か月を経過する日になります。

 なお、配偶者短期居住権は、具体的相続分に影響は与えるものでないので、配偶者居住権(民法1028条~1036条)とは異なり、相続税には影響しないとされています。国税庁の質疑応答事例にもその旨記載があります。


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