遺留分制度に関する改正

 平成30年相続法改正で大きな改正点の一つに遺留分制度があります。

遺留分とは

 兄弟姉妹以外の相続人に最低限確保されている相続財産の割合です。直系尊属(両親・祖父母など)のみが相続人のときは3分の1,それ以外の相続人の場合は2分の1が全体の遺留分として確保されている割合で、これに法律に従った相続分を乗じた割合が個々の相続人の遺留分になります(民法1042条)

 たとえば、配偶者、子2人が相続人である場合、全体としての遺留分2分の1に、それぞれの相続分、配偶者2分の1,子それぞれ4分の1を乗じた割合である、配偶者4分の1,子それぞれ8分の1が遺留分となります。

遺留分の性質(改正点)

 遺言などで遺留分を侵害された場合には、遺留分に基づく請求をすることができましたが、その請求権の性質が大きく改正されました。

 改正前は、「遺留分減殺請求権」と呼ばれ、この請求権を行使すると当然に物権的効果が生じ、遺贈や贈与の目的となっている財産が、受贈者・受贈者と遺留分権利者との間で共有状態となり、共有割合が、目的不動産の評価額等を基準に決めるため、分子・分母が極めて大きな数字となることが多く、共有状態の解消をするために長期・複雑な紛争が発生し、個人事業主などの事業承継がある場合にスムーズにいかない不都合がありました。

 改正前でも、受遺者・受贈者が価額による弁償を選択できましたが、選択されなかった場合、共有となって、その分割の問題が発生していました。

 このような問題点を踏まえ、平成30年改正で、遺留分に関する権利の行使によって生じる権利は金銭債権とされました。それに伴い、「遺留分侵害額請求権」と呼ばれるようになりました(民法1046条)。

遺留分の算定方法の見直し

 遺留分の算定の基礎財産の価額に算入する贈与の価額について、相続開始前の1年間にされた贈与と規定していますが、相続人に対する贈与については、最高裁の判例は、改正前の民法1044条が903条を準用していたこと(相続人に対する遺贈・贈与についての特別受益の規定、期間制限がない)から、相続人に対する贈与は、時期を問わず、原則としてすべて算入されるとされていました。

 しかし、第三者である受遺者・受贈者は、相続人に対する古い贈与の存在を知ることができず、不測の存在を被るおそれがありました。

 そこで、今回の相続法改正により、相続人に対する贈与についても期間制限を設け、相続開始前の10年間にされたものに限って、遺留分算定の基礎財産に含めることとされました(民法1044条3項)。

第1044条 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。
2 第九百四条の規定は、前項に規定する贈与の価額について準用する。
3 相続人に対する贈与についての第一項の規定の適用については、同項中「一年」とあるのは「十年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)」とする。

相続税法の改正

 更正の請求の特則に関する相続税法32条1項3号の規定が、「遺留分侵害額の請求に基づき支払うべき金銭の額が確定したこと」と改正されています。

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