配偶者居住権4~消滅

配偶者居住権が消滅する場合は、

1 存続期間の満了(民法1036条・597条1項:使用貸借の期間満了)

2 居住建物の所有者による消滅請求(民法1032条4項)

3 配偶者の死亡(民法1036条・597条3項:使用貸借の借主の死亡)

4 居住建物の全部滅失等(民法1036条・616条の2:賃借物の全部滅失)

などがあります。

1 存続期間の満了

 存続期間が定められた場合には、その期間の延長や更新はできないとされています。これは配偶者居住権の財産評価を適切に行うことが困難になるためと説明されています(一問一答新しい相続法30頁 商事法務)。

2 居住建物の所有者による消滅請求

 配偶者が用法遵守義務、善管注意義務に違反した場合、所有者の承諾を得ずに、増改築をしたり、第三者に使用収益をさせた場合には、所有者は、配偶者に対し、相当の期間を定めてその是正の催告をし、その期間内に是正がされないときは、配偶者所有権の消滅させることができます。

3 消滅した場合の配偶者と所有者の法律関係

 配偶者は、所有者に対し建物の返還義務を負います(民法1035条1項本文)。ただし、配偶者が建物の共有持分を有している場合には、所有者は、配偶者居住権の消滅を理由に建物の返還を求めることはできないとされています(ただし書き)。

 また、配偶者が相続開始後に建物に附属させた物がある場合は、収去する権利を有し、義務を負います(民法1035条2項・599条1項、2項)。

 そのほか、建物に、通常の使用によって生じた損耗や経年劣化を除いた相続開始後に生じた損傷がある場合には、配偶者は原状回復義務を負っています(民法1035条2項・621条:賃借人の原状回復義務の規定を準用)

4 配偶者居住権の消滅と課税関係

 相続税法基本通達・第9条《その他の利益の享受》関係・9-13の2で示されています。

 まず、配偶者と所有者が合意により配偶者居住権を消滅させた場合、配偶者が配偶者居住権を放棄した場合、所有者による消滅請求により消滅した場合に、所有者が、その対価を支払わなかったとき、又は著しく低い価額の対価を支払ったときは、適正な対価の支払いなしに、建物等所有者が当初予定されていた存続期間の満了を待たずに居住建物等の使用収益ができることとなり、配偶者から建物等所有者へ居住建物等を使用収益する権利が移転したものと考えられるとして、原則として相続税法9条の規定により、配偶者が有していた当該配偶者居住権の価額に相当する利益又は当該土地を当該配偶者居住権に基づき使用する権利(敷地利用権)の価額に相当する利益に相当する金額(対価の支払があった場合には、その価額を控除した金額)を、当該配偶者から贈与により取得したとみなされ、贈与税が発生することとなります。

 これに対し、配偶者居住権が、配偶者の死亡存続期間の満了又は居住建物の焼失等による全部滅失等により消滅した場合には、配偶者から所有者へ移転することができる経済的価値は存在しないとして、原則として相続税法9条の適用はなく、したがって贈与税は発生しない、ということになります。

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