相棒の歩行器

歩行器が私の相棒になってからは、行動範囲がすごく増えた。
談話室で友達や姉と何時間も話した。
いつしか、私が病室にいないと、談話室まで看護師が探しに来るようになった。
あとは、洗面所に行って歯磨きをする事が楽しくなった。外の景色が見えるから、歯を磨きながらずっと眺めていた。
わたしのベッドは廊下側で、病院は回廊だったから、外を見るのは洗面所だけだった。

リハビリが進んで、階段昇降のリハビリまでくると、1階まで降りる事を許可された。
1階のコンビニでアイスを買ったり、荷物を持ってきてくれた友達とこっそり会ってコーヒー飲んだりした。
彼女に、仕事終わりに毎日公園でコーヒー飲んだねと言われて、そうだったと懐かしく思えた。その日々からまだ1ヶ月も経っていなかった。

同室にはおばあちゃんばかり。
とにかくうるさくて仕方なかった。
ご飯が美味しくない。
どこが痛い。
退院したい。
かしましい限りだった。
途中で個室を頼んだけれど空きがなかった。
歩行器を使うようになって、私がうろうろし始めると、おばあちゃんの顔を覚えた。
廊下で会うと、あんたは何で入院してるの?と聞かれた。
訳を説明して、おばあちゃんは腰痛いんでしょ?と、会話するようになった。
誰とでも仲良くなる私は、そこからおばあちゃんとも仲良く話す事になった。

入院してもうすぐ1ヶ月が経つ頃だった。
急性期で1ヶ月を過ごしたら、次はリハビリ病院に転院すると教えられて、せっかく慣れたのにと悲しくなる時だった。

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