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寄席が嫌いになった場所~池袋演芸場

子供の頃から落語が好きでした。当時(昭和の時代の話です)は、NHKの教育テレビとかで落語がやっていましたし、特に年始になると寄席中継では漫才ブームが来るまでは落語が主体であった記憶があります。
圓生、小さん、志ん朝、小三治、 圓鏡とか、面白い落語家がたくさんいました。落語が好きなものでしたから、6冊組の落語全集とかを買ってもらったりしていました。

実際の寄席にいったことはなかったのですが、家から近いということもあって、行ってみようということで池袋演芸場に両親に連れて行ってもらったのは、小学校の高学年くらいの時だったと思います。
畳敷きの座敷席だったと記憶しています。(池袋演芸場のホームページを見てみましたが、現在は椅子席ですが当時は畳敷きだったの記憶通りのようです。)

落語の内容とか一切覚えていないです。落語のほかに色物もあったと思いますが、これもよく覚えていないです。
覚えているのは、小学生だった自分が珍しかったのか、子供がいることをまくらのついでに指摘するのです。そうすると、がらがらだったお客たちの自分のことを一斉に見るのです。ひどいことを言われたということはないと思います。小さなお客さんがいるとか、そんな感じのことを言われただけだと思いますが、演者からも客席からも注目される状況というのは、なんか緊張してしまいますし、気楽に落語を聞くという感じではなかったことを覚えています。
一人の演者からいわれたならばよかったのですが、出る人、出る人、同じように「今日はめずらしく、小さなお客さんがいる」といわれると、いい加減嫌になってしまって、そうそうに退出してしまったんだと思います。

それからは、テレビで落語は相変わらず見ていましたが、二度と寄席に連れて行ってもらうことはなかったです。


定年退職して、時間ができたので国立演芸場に行ってみました。まわりは、おじさん、おばさんだらけですから、自分が目立つことはありません。それに、池袋演芸場のようにがらがらではないので、その面でも安心だと思いました。
思っていたのですが、やっぱり客をいじる演者はたくさんしました。特に、色物だと、芸が決まった時とかに、拍手を強要する演者が多く困ったものだと思いました。拍手というのは、自然に出るものだし、手品でも曲芸でも本当にすごいと思ったときには、演者から催促されなくても大きな拍手がされていたし、周りが盛り上がれば自分も盛り上げようという気になるものですが、「拍手が小さい」とか言われて無理やり拍手されるのは、めんどくさいものでした。

小学生の時に、寄席が嫌だなと思ったのは、これだったのかもしれません。小学生の自分が注目されたのが嫌だったのかと思っていましたが、拍手を強制されるときに、目立っている小さなお客様である自分が、演者から見つめられてたら本当に嫌になってしまうのだと思います。

ちなみに、国立演芸場のトリは市馬でしたが、良かったです。みんなが、客いじりをせずに、普通に芸を演じてくれればよいのにと思います。


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