見出し画像

2期生楽曲『ゆっくりと咲く花』と『アナスターシャ 』~MVからみるそれぞれの意味~


 乃木坂46MV集第二弾「ALL MV COLLECTION2~あの時の彼女たち~」にて、2期生楽曲『ゆっくりと咲く花』のMVが公開された。これは2020年3月7日にSHOWROOMにて無料配信ライブの形で開催された「幻の2期生ライブ」のアンコールにて初めて披露された曲である。
 今回は、同日ライブ本編で初披露された『アナスターシャ』(MV公開はライブ直後)と合わせて、「MV」という観点から、この2つの2期生楽曲について考える。


(はじめに、本記事は両MVの視聴を前提に進めていきます。また全て自論であるため1つの解釈の仕方として受け取っていただけると幸いです。)




▶︎1カット撮影 と 『ゆっくりと咲く花』

画像1

 まず、今回初公開となった『ゆっくりと咲く花』のMVについて、視線と心情の変化に注目して見ていくことにする。

 『ゆっくりと咲く花』は都内の劇場にて「1カット撮影」をコンセプトに撮影されたMVで、成功までに7回(リハーサル等を合わせるともっと多く)ものTakeを繰り返したものである。1カット撮影ならではの、連続した物事のつながりや変化を感じられるものとなっています。


 特に視線と感情にポイントを当てて、MVの流れに沿いながら解説していきます。

 始めは、涙を浮かべながら椅子に寄り掛かり俯いている。「♪涙がなぜか溢れてとまらない」と歌っているように負の感情に覆われているような姿がそこにある。

 続けてメイク台の鏡の前で向かい合うシーン。鏡越しに自分を見ているようだが、どこか遠くを見つめているようにも見える。自分を見失い、分からなくなっている、そんな印象を受ける。

 次に楽屋・レッスン場で、鏡に向かってのダンスのフリ確認、曲や台本に時間をかける姿が現れる。再び鏡が出てくるが、ここでは自分と向き合い努力しているように感じる。「♪今できることをやるしかなかった」「♪自分と誰かを比べるのはやめよう」と歌われているように、一歩ずつ進む、前向きな気持ちへの変化が感じ取れる。

 1列に並び、ひとりひとりの顔が映されていくところでは、遠く前を見つめているが、その目の中には先程とは違う、その先の未来が見えているような光が宿っている。まだ、ステージ脇の影になっているところではあるが、目線の先には希望の光が差し込んでいるのが見えるのだろう。

 そして、輝くステージの光の中、踊る。お互いに向き合い、微笑み、繋がる。これまでの努力が実を結んだことによる、仲間との絆や、家族、関係者、ファンなどへの感謝が込められた歌詞と共に表現されている。


 最後は駆け上がった先の2階の客席から、笑顔で手を取り合い、今までいた場所を眺める。その先には、始まりの彼女らの姿が……。
 ここでは「♪自分なんかどうせダメだと思わずに 頑張ってみよう 誰かがきっと見ててくれる」と歌っている。

 私が初めてこの曲を聞いた時には、家族やファンなど、「味方はずっといるよ。」という意味で捉えていたが、このMVの作り方を見て、「未来の自分も見守っているよ、大丈夫。」という意味も合わせ持っていると感じさせられた。

 それを見て笑顔で楽しそうにしている姿は、過去を乗り越え、苦労も青春の1ページとして語り合っている、そんな今の強くなった彼女たちなのであろう。


 このように、「1カット撮影」によるカメラワークのつながりで、1人の心情の変化を、視線の変化と共になぞっているMVとなっています。




▶︎『アナスターシャ』に散りばめられピース

画像2

 次に同日に披露された『アナスターシャ』について話し、比較につなげていくが、本MVはおよそ半年前に公開され多くの人が話しているので、1つ1つの細かい部分についての説明は省略させていただきます。


 このMVは千葉県の富津岬で撮影されたもので、2期生と関わりの深い伊藤衆人監督が監督を務めました。この監督、MVに小ネタを仕込むのが上手で、『アナスターシャ』においても、MVの秒数やペアなど、たくさんの知る人ぞ知る要素が仕込まれています。

 この小ネタこそが、彼女たち2期生が歩んできた軌跡のかけらを散りばめたもので、各メンバーによって異なるピースとなっています。


 ここで話を全体の流れに戻して、このMVの構成を見ていきたいと思います。

 イントロでは、1つのテーブルに揃って理想の塔の完成に向けて、木を積み重ねています。これには、オーディション合格時、元々同じだったスタートラインで希望に満ち溢れている姿が現れています。

 1番ではバラバラになり、各地で1人で奮闘するメンバーの姿が。サビのダンスシーンでも1人1人が踊ったものを合成するなど、メンバーそれぞれが個人で頑張っている様子が映し出されています。

 そして2番では、動き始めた彼女たちが合流し始め、サビで全員合流し(一時的な離脱も含む)、始めに作っていた理想の塔と同じ、現実の塔に登って先を眺めています。境遇の違いのあるメンバーが再びひとつになって進んでいく、そんな彼女たちの今がそこにはあります。


 このように、MVの構成や隠されたピースによって、個々の、2期生のストーリーに注目し、歩いてきた道を詰め込んだMVとなっています。




▶︎ ふたつでひとつ

 ここまで簡単に両MVについてみてきたが、それぞれをまとめると以下のように比較できる。

『ゆっくりと咲く花』
  →主観的、個人の心情にフォーカス

『アナスターシャ』
  →客観的、2期生のストーリーにフォーカス


 同時期に2期生に与えられた曲であるが、それぞれのMVで視点を変え、伝えたい内容が少しずつ変わっているのが面白いと思った。この2つを見ることで、より2期生の歩みについて感じることのできる、2つで1つの大切なMVである。

 2つのMVが交わり合いながら、2期生の歴史を作り上げる。そんな意味をもったMVを持つ2曲が同日に披露されたことにも、何か意味があったのかもしれない。


 また、「幻の」ではなく「現実の」2期生ライブが開催される際にはこの2曲をしっかりと胸に刻み、前へと進んで行きたいと思う。




▶︎ 誰かがきっと見ててくれる

 ストーリーという点で、『アナスターシャ』はこの2期生にしか当てはまらない、2期生にとって、彼女達を愛する人にとって大切な作品である。

 対して『ゆっくりと咲く花』は、彼女達の感じた心情を歌った曲であり、似た境遇の人々にも当てはまり、共感やメッセージを与えうる作品になっている可能性がある。


 日が当たり過ぎる場所で枯れないよう必死で咲く花もあれば、光が当たらない日陰でゆっくりと成長する花もある。

 この『ゆっくりと咲く花』のMVのラスト、客席から昔の自分を見ているようなカットは、そんなゆっくりと成長し花開いた2期生達が今苦しんでいる人達に向けて、「きっと大丈夫。私たちが見守っているよ。」というメッセージを込めたものなのかもしれない。







 ゆっくりと。

 時間がかかったぶん、

 深みのある綺麗な花、開く。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?