見出し画像

びわコラム〜その3 忖度

 サロンでは当然ながら髪を切る、カラーをする、パーマをかけるという目的をもったお客様がくる。そしてデザインを提案し、店販を購入してもらう。試食販売ではビワを買おうと思っていない人の足をいかにとめ、ビワを手にしてもらいそして買ってもらうという、購入に至るまでいくつかのハードルがある。慣れた口調で声をかけ、試食をさせている兄を見ていると、サロンでデザインや店販を提案している事とやはり通づるものを感じた。
 まずは興味を引くこと、そのためにファーストインプレッションである声かけが重要だ。笑顔で目を見て、声のトーンを上げ言葉を発することで、机の前で立ち止まってくれる人の確率が上がってくることを感じた。
 自信の無い声で、ハイライトを提案しても「やってみたい!」
と思わせるのことはできずシングルカラーで施術した。そんな経験を皆さんもデビューした時に感じたことはないだろうか? お客様はデザイナーに絶対の自信を感じデザイン効果に共感して初めて、お金を出しやってみたいと思う。

 
 以前に読んだコミュニケーションの本に書いてあった。「伝えよう」と思ってどんなに言葉を尽くしても、「伝わっていなかった」「伝わりきれていなかった」という経験をしたこともあるのでは、と。

 ①不理解、誤解→やりたいことが伝わらず、印象が悪くなり逆効果

 ②理解→伝わってはいるが、理解以上の解釈がない

 ③納得→お金と時間に余裕があれば,やってみたいと思う方もいるのでは

 ④共感、共鳴→多少費用と時間をかけてでもやってみたいと思う

 試食販売における①は、印象が良くないのか前を通るが見てももらえない。全く気付いてもらえない状況。②は「ビワ」というものに興味を引かれ一瞬こちらを見て立ち止まってくれるが、試食すると買わなければいけない空気感に耐えられないのか、通り過ぎていってしまう状況。③は試食には至り、「美味しい~」という言葉はでるが、値段を見て購入するところまでは到達しない状況。さまざなジャンルや年齢層のお客様が立ち止まり試食をしていくが、この③の様な方がなんと言ってここを立ち去るのかを観察するは実に面白い瞬間である。ビワの皮を剥き一口食べる。おそらく甘くてジューシーと思って頂けていると思う。2口目を食べながらパックに記されている値段に目線がいっているのがわかる。その瞬間色々なことを考えるのだろうか。「うーん、美味しいけど少し高いな~」みたいな。何と言ってここを立ち去ろう、なんてことを3口目くらいには考えるのであろうか。試食している数十秒の時間、食べるのを見つめられているのも不快だろうと思い,違う方を見て声を出してみる。でも試食後の言動が気になってまた見てしまう自分がいる。

 昼休み中であろう制服姿のOLさんは試食後に「後でまた来ますね」と、やや申し訳なさそうな面持ちで立ち去っていく。 イサギのよい感じで「とても美味しかったです」と言って立ち去る、美容室には半年以上も行っていないのではないかと思わせる新生部の伸び具合の50代女性。当然新生部に見える白髪もついつい気になってしまう。イサギの良さは、最初から購入の意思はありません的な印象を受けてしまったくらいだ。販売する側としては、立ち止まって試食して頂けるだけでも嬉しいものだということは感じた。買わずに立ち去る後ろめたさは自分にも経験があるので、「よろしくお願いします!」といって挨拶をするだけだ。
 ハイライトを提案し断られた時でも、「わかりました、きれいに1色でツヤっとしましょうね!」と明るくさわやかに答え、変な空気感にならないように務めるようにする、感覚である。 日本人の相手に気を使う、忖度みたいな一面を垣間見る瞬間である。

 実に面白い。

 数時間が経過し、

つづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?