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びわコラム〜その2 体験

 ビワはそんなに安いものではない。このコラムを読んでいる美容師の方も、みかんのように毎日何個も食べているという方はそんなにいないだろう。
 「ビワ!?。そうだなー、むかし人んちの庭になっているビワを勝手にとって食べた事があるな。」
 という方ももしかするといるかもしれない。軽い、窃盗罪である。高級スーパーやフルーツ店に行けば1個あたり五百円くらいするのではないだろうか。(アマゾン調べ) それくらい、世の中に流通しているビワの1個の値段は高い。一般消費者のビワに対する、高級感の壁は結構高そうだ。

 11時くらいに日本橋に到着した。地下鉄の駅を出て歩いていると、富山、山口、島根、奈良、三重など多くのアンテナショップが立ち並んでいる。しばらくすると、長崎館の外観が見えてきた。チャンポンやカステラ、焼酎などの広告フラッグが立ち並んでいる。中を覗くと、長テーブル2つを並べビワの試食販売をしている兄がいる。こちらに気がつくと、手をあげ招くようにふった。自分を持ってきた荷物を置き、兄の横に並んで立ち周りを見回してみる。 

 試食販売の営業は初めての経験だ。しかも来た事もない場所なので、まずは空間に慣れる必要があると思いお店の中を一周してみる。そして次に、ビワを販売する上で重要な部分である、対象をいくらで販売しているのか、種類やサイズの違いはあるのかの確認だ。商品にはバーコードを貼ってあり、アンテナショップ内のレジでの精算になるので、幸いお金回りを気にする必要がなかったという事は少し気持ちを楽にしてくれた。かすかな緊張感の中、兄が声を張り試食を促す。

「いらっしゃいませー、ビワの試食販売をしております。いかがですか?」

「試食だけでも結構です!お気軽にお立ち寄りくださ~い」

「甘くておいしいビワですよ~」

 自分がまず発する事ができたのは、入ってくる方に「いらっしゃいませー」と言うくらいだ。やはり慣れない事もあり、声も張れないし恥じらいを感じていた。

 つづく


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