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小寺の論壇:多くの人が勘違いしている、堀越高校裁判の中身

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11月30日に各メディアが報じているが、堀越高校における男女交際を禁ずる校則に違反したとして自主退学勧告を受け、退学した女性が「校則は社会通念に照らして不合理」と訴えた裁判の、東京地裁判決が出た。判決は元生徒側の勝訴となり、話題となった。

・交際で自主退学勧告は違法 堀越高校に97万円賠償命令 地裁判決

だが多くの人は「男女交際を禁じた校則自体が社会通念に照らして違法」という判決であったと勘違いしているようだ。ニュースの見出しにも、そうした誤認を誘発させるものがいくつか見られる。

実際の判決は、男女交際を禁止する校則については「生徒を学業などに専念させるためのものとして合理的」とし有効だと判断している。その一方で、この女子学生を自主退学とした判断が不当である、という判決となっている。

法律を勉強したものからすれば、過去私立校の校則と処分に対する判例を踏まえたもので、「まあそうなりますよねー」という判決なのだが、それを知らなければ理解は難しい。単純に「校則が時代に合わない」だけではない、もう一歩深い判決理由を解説する。

■私立校の退学処分を巡る判例

私立校の退学処分に関する裁判として、最高裁まで争った有名な裁判が2つ思い当たる。

1つは、昭和49年の「昭和女子大事件」だ。これは同校の学生が、「政治活動を行う場合は予め大学当局に届け、指導を受けなければならない」という学則に違反する形で政治運動を校内で行なったことに端を発する。学校や保護者が再三にわたりやめるよう説得を続けたが、活動を改めなかったため、退学処分となった事件である。

女子学生2名が学生の身分確認を求めて訴え、1審勝訴、2審敗訴となり、最高裁では昭和女子大学の「生活要録(学則)」そのものが、思想や信条の自由を謳った日本国憲法に違反するとして争った。

・昭和女子大事件判例
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail3?id=54110

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