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小寺の論壇:砂城であることがバレてきたテレビ業界の行方

知財、IT産業、ネット、放送、買ったもの、ライフハックなど、コデラの気になるところを語ります。


例年4月と10月はテレビ番組の再編が行われるので、放送業界は3月と9月に繁忙期を迎える。番組が始まるということは、テレビ局から予算がバーンと降りてきて、一時的に景気が良くなるということを意味している。

ここ数年は人気番組維持の傾向が強く、新番組スタートもそれほど数が多くなかった。だが今年度はジャニーズの解体や松本人志の活動休止などが重なり、例年よりも番組改編が多く行われている。

ただ、景気のいい話はあまり出てこないようだ。4月頭にフライデーデジタルが報じたところによれば、フジテレビの深夜枠制作費が200万円だったという衝撃の事情が暴露された。

1時間番組の制作費としては、相当に厳しい。有名タレントは使えないし、撮影スタジオも押さえられない。これではネットの方がまだ予算がある、というのが記事の趣旨である。

ただそれでも、工夫次第じゃないかという話も聞こえてくる。今から15年以上前になるだろうか、まだマツコ・デラックスが無名だった時代、同氏を使用した深夜番組は、別の番組のセットの裏に暗幕を引いて、その一角でトークを収録していた。当然トークの内容は低予算という自虐やボヤキばかりになるわけだが、そのボヤキ芸が現在のマツコ・デラックスの方向性を決めることとなった。

かつてはフワちゃんなどのYouTuberを、タレントとして安く使う時代もあった。だが彼女の海外移住によって、そうした時代は終わりを告げたと言える。テレビよりネットの方が、海外拠点での活動はやりやすい。

今はテレビよりネットの方が利益率が高い。鬼越トマホークなど、テレビ出演を一番に考えていないと明言するタレントも出てきている。広告費でネットがテレビを抜いた2019年の時点で、こうしたことが起こることはわかっていたはずだ。

テレビの生命線とも言われる報道もまた、厳しくなっている。今年度TBS系列の複数のテレビ局が、共同通信からのニュース配信契約を打ち切ることが決まったという。共同通信は海外ニュースに強く、世界情勢を報じるには、重要なニュースソースだ。

海外ニュースを無しにするわけには行かないので、何らかの別ソースを根拠とする報道に切り替えるということなのかもしれない。元々共同通信は、2020年ごろには新聞不況の煽りを受けて、300人規模のリストラを行っている。共同通信もこの系列配信打ち切りで、かなり深刻なダメージを受けるものと思われる。

■危機に瀕する、プロ向け報道

世界最大の映像機材展、NAB 2024が4月13日からスタートしている。13日はプレスデー、14日から本会場開催となる。

映像ビジネス、特に放送関係者には世界動向などを知る上で重要なショーという立ち位置は変わらないが、業界関係者や、ショーを報じるメディアのほとんどが渡米していない。

理由のひとつは、強烈な円安だ。4月12日には、バブル崩壊後の34年ぶりという円安水準に振れたことは記憶に新しいところだが、渡航費はもちろん、現地滞在費も含めたツアー料金が60万円から80万円という金額になっている。ただでさえ制作費激減と言われているテレビ局が、いくら技術局は別とはいえ、呑気に物見遊山している場合ではないだろう。

もうひとつは、放送技術を報じるメディアの激減だ。映像新聞や電波新聞といった業界新聞系は、そもそも新聞を読むような年齢層が技術者にいなくなりつつあるという現状があり、未来が見えない。

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