小寺の論壇:ネット配信用中継車を見に行って学んだこと
「今週のごあいさつ」でお話ししたように、先週は大阪に出張したわけだが、その目的は恐らく世界発だと思われる、ネット配信向け中継車「CONNECT車」を見に行く事だった。
そもそも中継車というのは、現場に乗り付けてテレビ向けにライブで中継放送するための設備一式を搭載したものを指す。最近は大型トレーラー型のものが多いが、昔は屋根にパラボラアンテナを積んで、衛星回線を中継したり、あるいはマイクロ波で飛ばしたりできるようなものも多かった。
中継車を作るには数億円の費用がかかるため、普通は放送局が所有するものであり、大手撮影会社でも持っているところはある。またレンタルもある。
そんな中継車を、ネット配信のために作ってしまったというのが、株式会社シーマの「CONNECT車」である。中身はパナソニックのKAIROSを搭載することでIP化されているが、SDIベースバンドでの入出力もできる。
株式会社シーマは、ステージ設営や機材レンタル、大型LED映像送出を行なう、いわゆるイベント屋さんとしてはかなり大手だ。ステージ映像のついでにネット配信もやってくれ、と言われて10年ぐらい前から配信業務をスタートさせているが、とうとう中継車を作るまでに配信事業が成長したというのが、驚きである。
CONNECT車の中身やIT化によるメリットの話は、今後さまざまなメディアでご紹介していくことになると思うが、今回は多分どこにも書いたりしゃべったりする予定がない、記憶に残るお話しをまとめてみたい。
■株式会社シーマの正体
当時の社名は、株式会社ビデオサービスステーション。1961年創業だが、当時は家庭用ビデオなどは存在しない。放送用としては2インチVTRの時代であり、一般家庭にはまだカラーテレビも普及していない。社名に「ビデオ」を入れるあたり、先見の明があったということだろう。
そこから規模を大きくして、次第にホール設計や音響設備施工なども手がけるようになっていった。今も会社の半分はこうした設計施工業務だそうである。むしろイベント設営業務は、あとからやり始めた業務だという。
そんなことから、パナソニックとは資本関係はないものの、かなりの強い協力関係にある。そんなことから、IP中継車にKAIROSの採用となった。開発陣も大阪にいるので、トレーニングなどもやりやすいというところもあったのだろう。
これまでイベントで使われてきたスイッチャーは、放送用とは全く種類や考え方が違う。業界で最も使われてきたのが、Barcoの「Encore Presentation Switcher」であったという。最近は後継機種の「E2」がよく使われるそうである。
シーマ本社の2階に機材博物館的なスペースがあり、そこでEncore Presentation Switcherの実機が展示してある。筆者も初めて見る機材だ。
正直コントロールパネルを見ても、使い方がさっぱりわからない。スイッチャーとしての考え方が、放送用とは全く異なっているが、イベントではこれが使いやすいのだろう。逆にこのスイッチャーから、放送向けスイッチャーを扱ったら、使い方がさっぱりわからないのではないだろうか。
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