編集部から見た「AV Watch20年」の歴史 (5)
毎回専門家のゲストをお招きして、旬なネタ、トレンドのお話を伺います。
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AV Watch創刊20周年を記念して、現編集長の山崎健太郎さんと、前編集長で現Impress Watch編集長の臼田勤哉さんとの鼎談もいよいよ最終回。
昨年から今年にかけて、ホームAV業界の中心はオーディオだったように思う。新しいサービスが登場し、完全ワイヤレスイヤホンも毎月新モデルが複数登場するに至っては、どこまで市場があるのか、底や天井が見えない状態である。
もちろん、ライフスタイルの変化という意味では、Afterコロナの動向も見逃せないところだ。最終回となる今回は、そうした未来のトレンドの話を伺っていく。
小寺:ちょっと、オーディオのトレンドの話を聞きたいんですけど。2000年代初頭ぐらいに、第一次イヤホンブームってあったと思うんですよね。SHUREとかが台頭して、非常に高級なイヤホンのブームというのがあったと思うんですけど。わりとイヤホン・ヘッドホンって、あのブーム以来、そんなに失速せずにここまで来てるような気がするんです。感触的にはいかがですか。
山崎:うーんと……。そうですね。SHUREの4万円、5万円のが高級モデルとして人気があって、ヘッドフォン祭りとか、ポタフェスとかにいっぱいお客さんが来て、どんどんハイエンドなモデルを買っていく、という、いわゆるポータブルブームは、やっぱりAirPodsが出てしばらくすると、なんというんですかね、“下のほうのユーザー”というんですかね。下のほうが本当にごっそり、完全ワイヤレスに入れ替わってしまったな、という感じが今はしてますね。
低価格な有線イヤホンというのが、そもそももうそんなにウケない感じにはなっちゃってますね。だから、新製品とかも、イヤホンの高級機というと10万円以上で、7、8万円の有線イヤホンとかだともう中途半端な存在みたいになっちゃって、あんまり動きがない、という感じがしますね。
昔は2、3万円ぐらいが主戦場みたいな有線イヤホンの市場が、もう完全に、このあいだのソニーの1000XM4みたいな、ああいう機種に完全に切り替わったな、という感じは感じてますね。それに付随して、高級ハイレゾプレイヤーとか、Astell&KernのAKとか、ウォークマンとかも出てましたけど、それ自体もそんなに、前ほどはウケないな、という感じが正直ありますね、今は。
小寺:結局、全体的には低価格化しましたよね? 昔は、7万とか平気……ではないですけど、けっこう無理してみんな買ってたのに、今となっては7万円のヘッドホンってなんやねん、みたいな。
山崎:そうですね。特に、完全ワイヤレスとかは本当に安いモデルでも立派な音がするので、逆に困っちゃうというか。相当ハイエンドなものなら、本当に音が良くないと。やっぱり中途半端なモデルが本当に厳しいな、という感じがしますね。
小寺:昔は、7万とか5万とか出して聴いてた時って、MP3とかだったでしょ? 今は、ハイレゾもあるし、ロスレスもあるし、今、高級モデルがマニアのものだけにしまってる、というのはけっこう残念な市場構造になってますよね。
山崎:まあ、スマホからイヤホン端子もなくなってしまったので。だからといって、ポータブルアンプをみんなが持ち歩くか、と言われると、それもやっぱり厳しいとは思うので。
実力が上がった有線イヤホンを、ワイヤレスでちゃんと利便性を高めて使いこなせる、という、きれいな切り替わりがあんまりできないまま、今まで来てしまってるな、という感じがしますよね。有線イヤホンの資産を活かす術がない、というか。ワイヤレスケーブルとか、いろいろ方法はあるんですけど、みんなが求めてるような簡単さみたいなところにはまだちょっとたどりつけてないのかな、というのはありますね。
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