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小寺の論壇:懐かしのアナログハイクオリティサウンド、アシダ音響「ST-90-05」

最初どこで見かけたのか忘れてしまったが、アシダ音響の音楽用ヘッドホン「ST-90-05」が定価6,600円とは思えない、いい音がするという記事が目に入った。写真を見てみると、「ああーこれかー」と思い当たった。

アシダ音響「ST-90-05」 

1986年から1990年まで、筆者は渋谷NHKに編集者として出向していた。当時ビデオ編集者は、他の職種に比べると労働時間が長すぎるため、組合規定の労働条件から外れすぎるということで、正社員で雇用していなかった。よって編集者は、NHKの外郭団体にいったん所属して、そこから出向という形でNHKの中で仕事するしかなかったのである。

外から見ればNHKの中の人だが、NHKの中では外の人という、曖昧な状態だったのだが、それゆえに色々な体験をさせてもらった。NHKは基本的には生放送主義なので、放送時間に技術者総動員してエイヤッとと放送を出してしまうのだが、当日スタジオのやりくりができないとか様々な理由で、生放送スタジオを使って「事前収録」を行なう事もあった。

民放のスタジオ収録は、ブロックごとに撮ってあとで編集で1本にまとめるのだが、NHKの場合CMが入らないので、最初から生放送と同じ勢いでスタジオ収録もやってしまう。途中で失敗しても、収録は止まらない。そこからやり直しではなく、失敗したところを編集で切るか、最初からやり直しするかを検討する。

最初からやり直すとめちゃめちゃ時間がかかりそうだが、案外そんなこともなかった。あとで編集の手間が要らないということを考えたら、頭からもう一回やりなおしたほうが、トータルでは早い事になる。

そんな事前収録の際には、編集者もスタジオの副調整室に呼ばれる。つまり収録に立ち会って、失敗したところが編集可能かどうかを判断するわけである。

そんなスタジオ副調にあったヘッドホンが、アシダ音響の「ST-90」というモデルだった。ルックスを見れば、いかにも昭和のヘッドホンである。当時は有線のスタジオインカムも、アシダ音響製だったはずだ。

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