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小寺の論壇:昨今のアニメ作品がダルい

知財、IT産業、ネット、放送、買ったもの、ライフハックなど、コデラの気になるところを語ります。


この10月、話題のアニメ作品としては、「葬送のフリーレン」と「薬屋のひとりごと」が挙げられる。どちらも2011年にマンガとして連載がスタートし、シリーズ累計1000万部を超える大ヒット作である。アニメとしてはどちらも日本テレビ系列で放映のほか、Amazon Prime VideoやNetflixでも配信中である。

コデラにしては珍しく、どちらの作品もすでに連載マンガの時点から読んでおり、むしろそんなに人気作品だったとはアニメ化されてから知った次第である。早速Prime Videoでアニメ作品を見始めたところだが…どうも調子が狂う。

すでに知っている話ということもあるのだろうが、アニメ上で転載される話運びのリズム感が合わない(遅い)のである。この感覚は何だろう、というのを考えてみた。

■「作り方」としては正解なのだが…

過去小説やマンガから映像化した作品は数知れず存在する。これまで視聴した中には原作を知っているものもだいぶあるが、これまでそのような作品を見ても、あまり違和感は感じられなかったように思う。ではなぜ昨今の作品とも言えるこの2作で、リズムのズレを感じるのか。

これは細かく検証したわけではないが、どうも昨今のマンガからのアニメ化作品は、原作からあまり離れずに作られているように思える。原作に動きが付き、声が付けば、ある人にとってはキャラクターのイメージが違うと感じることもあるだろうが、そこを飲み込んだとしても、話運びからカット割りに至るまで、かなり原作を忠実にトレースしているように思える。

それが悪いと言いたいわけではない。むしろマンガのファンをガッカリさせないため、というか最低限の評価を確保するための方法論だと言える。

だがマンガにしろ活字にしろ、それらは人それぞれ固有の読むスピードがある。ある意味、ストーリー展開のリズム感は、書き手と読み手間で成立する呼吸で作られているとも言える。

そこには緩急もある。バトルシーンは素早く通り過ぎるだろうし、台詞回しが多いシーンではゆっくりになるだろう。それはアニメでも同じようなタイム感で表現されているはずだが、そこに間の悪さを感じる。それというのも、ある意味「間」の平均値を取り過ぎているような気がするのだ。

映像化作品は、原作を知らない人でも楽しめるように作るのが基本だ。だが初見の人にもわかるようなリズム感で展開されているということは、すでにストーリーを知っている人にはリズムが遅すぎるわけである。もちろんマンガで大ヒット作とは言っても、テレビにかかればまた分母が違ってくるので、初見の人の方が圧倒的に多い。方法論としては正しいのだ。

アニメ・ドラマを早送りで見るという方法論は、すでに若い人の間では一般的なものになり、「タイパ」というキーワードで語られることも多いが、コデラも今回初めて、早送りで見たくなった。むしろマンガ版でキーになる部分がアニメでどのように表現されているのか、アニメでも同じように面白いのかをチェックするような見方になっている。つまり、検証目線で見ているのだ。

これはある意味、損な見方である。「あーこうなるのねはいはい」といった格好で、純粋に楽しむことができない。そして同様に、作り手としても損な作り方である。

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