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ニュースクリップ 2月21日から2月27日号

2月21日から2月27日に発表されたニュースの中から2人が気になるものをピックアップして、その裏側に隠された意味を考察します。

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《西田セレクト》

■米FCCが生活困窮者に対し緊急時にブロードバンド接続を提供する補助事業を起案(Techcrunch Japan/2021年2月23日)
https://jp.techcrunch.com/2021/02/23/2021-02-22-fcc-proposes-rules-for-emergency-broadband-program-to-keep-struggling-families-online/

・西田
コロナ禍の中で、十分な速度で利用できるネット回線の存在がライフラインの一つである、という認識は広まったと思う。それを考えると、このFCCの施策は非常に正しい。日本でもすぐに追随を検討すべきだ。

携帯電話の値下げ議論の中でも何度か述べてきた話なのだが、「携帯電話料金が国民にとって負担だ」というのはわかるが、それ以前の話として、「料金は安ければいいのか」「必須ならばなぜ税負担が新聞より大きいのか」「セーフティネットは確保されているのか」という課題がある。要は、通信を必須のものとして生活の中に位置付ける政策がないのだ。

値下げ値下げというだけでなく、こうしたセーフティネット施作についても検討をお願いしたいし、それ以前に、通信が「国民の生活にとって必須のものである」認識を、ちゃんと持って欲しい、と政府の側にはお願いしたく思う。

・小寺
インターネットへのアクセスを保証するという点では、フィンランドでインターネットアクセス権を法的に定義した動きと似ている。実は日本においても、インターネットへのアクセス権は2002年という早い段階から提唱されているのだが、実現されずに来た。

・我々にはインターネットにつながる権利がある~村井純教授講演
https://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2002/0717/wj01.htm

情報がライフラインの一つである今、低速回線でもいいから無料でアクセスできる施策は意味があることだと思うが、国民の人気取りという意味では携帯料金の値下げが効くと思っているのだろう。

《西田セレクト》

■お墨付きの翼竜化石、スッポンの骨だった きっかけは鍋(朝日新聞デジタル/2021年2月27日)
https://digital.asahi.com/articles/ASP2V7G12P2KUJHB00F.html?ref=tw_asahi

・西田
見出しだけ見ると「今のスッポンの骨が翼竜化石と勘違いされた」ように読めるが、そうではない。スッポンの骨の化石と翼竜化石が混同されていた、というお話で、どちらにしろ貴重なサンプルであることに変わりはない。

骨からの品種同定というのは極めて専門性が高くて、非常に興味深い世界ではある。一方で推理もののようなダイナミズムもあり、こうした記事は読んでいてドキドキする。

まあ、現地で「翼竜で町おこし」をしていた人々には残念な話だろうが。世の中そういうものである。

・小寺
翼竜とスッポンとどちらが町おこしに効果があるかといえばやはり前者にはなるだろう。しかし別のすっぽんの化石も相次いで見つかっていることから、白亜紀にはそのあたりにはかなりのスッポンが生息していたようだ。というか恐竜の時代からすでにスッポンがほとんど今の姿で存在していたということも相当びっくりである。

ひたちなか市にはぜひスッポンを名物に町おこしをしてほしい。翼竜は食えないが、スッポンは食えるではないか。

《小寺セレクト》

■パラマウント+がついに始動! Netflixに挑む大物VODの内容が明らかに(MOVIE Collection/2021年2月26日)
https://www.moviecollection.jp/news/73106/

・小寺
ディズニー+に続いてパラマウントも、独自のサブスクサービスに参入するというが、各社バラバラにサービスを立ち上げるのは正直「ワンストップ」さには欠ける。

消費者が見たいのは「パラマウント映画」ではなく、「面白い映画」であって、それがどこで作っているかには興味がない。その点では、出版社が本屋に自分たちの専用棚を確保したり、テレビ局が個別にVODやったりしてきたが機能的ではなかったのと構図は同じである。

いずれこういったバラバラのサービスは、ワンストップで見られるようにまとめられることになるのだろう。だがその利益を第三者に持っていかれるのではなく、広告代理店仕切りだったとはいえ自分たちで会社を立ち上げて運営しているTVerは、うまいことやれたほうだと思う。

一方で「看板商売」であるハリウッドはどうなるのか。この動きは長い目で見ておきたい。

・西田
完全に自社に閉じる形になると、この動きはうまくいかないだろう。なぜなら、映画会社の中で、コンテンツの中身と自社のブランドが1 to 1で消費者の中にできあがっているのは、ディズニーくらいのものだからである。よっぽどの映画ファンでなければ、好きな映画がパラマウントなのかMGMなのかFOXなのか、それともライオンズゲートなのか、みたいなことは覚えているはずもない。

ディズニー+が成功しつつあるのは、ディズニーという強力なブランド+スターウォーズやマーベルといった強力なブランドのセットであるからで、ディズニーだけが特別なのだ。

とはいえ、映画会社としてこうしたい、というのもわかる。なぜなら、そうしないと「コンテンツを提供する側」でしかなく、プラットフォーマーとしての旨みが出ないからだ。また、コロナ禍で劇場公開がしづらくなり、オンライン公開でスタートすることになる状況下で、「オンライン公開での注目度と収益の安定性」を確保したい、という意図もあるだろう。

だから、「自社サービスがあっても、他社へも供給する」「ただし、自社サービス先行」というのがパラマウントの戦略だと思われる。売りが「劇場公開から45日で視聴できる」ということなのは、そういう話だ。自社に閉じるディズニー+とはちょっと違う流れになるのではないか……と予想している。

《小寺セレクト》

■NHK受信料値下げへ放送法改正案閣議決定 支払い逃れに割増金 (メディア名/2021年2月26日)
https://mainichi.jp/articles/20210226/k00/00m/010/065000c

・小寺
そもそもNHKは公共団体であり株も買えないので、積み上がった利益は分配する先がない。近年新しく放送局ができたり放送波が増える見込みもないのに1450億円もの繰越金をキープする必要はないのである。公共団体なら利益追求ではなく、本来は収支がほぼトントンの低空飛行で飛ぶべきであろう。

それを受信料値下げの原資にするというのは当然の話である。ただこれが通るということは、受信料支払いは選択制ではなく、義務化の方向に大きく傾くことにはなる。NHKとしては、値下げしても義務化のほうがメリットがあると踏んだのだろうが、そもそもそういう利益体質なのが問題なのであって(以下無限ループ)。

・西田
ことの根幹にあるのは「NHKへの支払い義務化をどう捉えるか」という話になる。今でも法律上は支払うべきなのだが、完全義務化へと強く流れると、「公共放送」という曖昧な立ち位置から「国営放送」に近づいていく。放送局としては一線を引きたくても、収益構造的には義務化したいという、とても曖昧な部分がいつまで経っても解決できない。

NHKは社会インフラの一つとして必要だが、だとするなら、そろそろ立場を明確にすべきではないか。

とはいえ、同じような問題はイギリス・BBCにもあり、あちらでも揉めている。NHKよりBBCの方が海外収益などの取り組みも含め先進的だと思うが、まあそれでも、イギリス国内では色々評判が悪いのだ。

この際、収支と安定、どちらに舵を取るのか、はっきりした方が良いように思う。はっきりしないから支持を得られないのだ。

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