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小寺の論壇:Google Geminiの影響の大きさを考えてみる

知財、IT産業、ネット、放送、買ったもの、ライフハックなど、コデラの気になるところを語ります。


今月13日のGoogle I/Oで、Googleは自社製AI Geminiを様々な自社のサービスへ組み込んでいく方向性が示された。これまでチャット型と言われるAIは、単に入力待ちのウインドウがあるだけという、いわば白紙状態での待機というシンプルなUIがあるだけだったが、すでに存在するサービスの裏方としてAIが入っていけば、馴染みのあるツールが変わるという体験を得ることができる。

まず手元で試せる機能としては、Googleサーチエンジンへの組み込みである、「AI Overview」がある。現在日本語版はまだラボ機能として提供されているのみなので、利用するにはGoogle検索画面内にあるラボアイコンをクリックして、AI機能をONにする必要がある。

こうすると、検索結果内に「AIによる概要」が示されるようになる。試しに「餃子の消費量が一番多い都道府県は」と、AIに聞く要領で検索欄に入力すると、検索結果の一番上に、「AIによる概要」が表示された。


日本語による「AI Overview」の使用例

回答の元になった記事などの情報も示されるので、その根拠に当たることもできる。こう見ると、上手く動いているように見えるだろうが、実際には色々検索してみても「AIによる概要」が表示される回数はかなり少ない。

例えば「餃子の消費量が一番多い自治体は」と入力すると、AIによる概要は表示されず、一般の検索画面に戻る。どうも「自治体」が都道府県とニアリーイコールであるということがわからないようだ。

「自治体は」に変えると「AI Overview」が出てこない

まあ、気持ちはわからなくもない。市町村も自治体なのだが、市町村レベルの統計データはまず見つからないだろう。利用者が知りたいのはだいたい都道府県レベルでわかればいいんじゃないかという推測まで、もう一歩ということなのかもしれない。

同じ質問を、ナマの「Gemini」に投げてみた。するとそもそもデータの指標が色々ありますよね的なところから回答が始まる。回答のパターンも3つから選べるので、「AI Overview」よりも深いレベルで回答しようとするようだ。

「Gemini」のほうがより深く答えようとする

Geminiは現在、最新のGemini 1.5 Proを使用する「Gemini Advance」の、2カ月無料キャンペーンを実施している。早速申し込んで試用しているところだが、餃子の質問に関しては、だいたい同じレベルの回答であった。1.5 Proの能力を使うまでもないということだろう。

Gemini Adovanceは現在2ヶ月間無料キャンペーン中

Geminiは、YouTubeとも連携できるのが強みとなる。Geminiの設定画面で、YouTubeとの連携機能をONにすると、YouTubeが参照できる(デフォルトでONのはず)。

Geminiの設定で拡張機能をチェック

例えば英語のキーノートでやけに長い、これをサマりたいと思うのは当然だろうと思うわけだが、先日のGoogle I/OのキーノートをGeminiに食わせてサマリーを作らせることもできる。

YouTubeのURLをはりつけたあと、「この動画の内容を日本語でサマリーにしてください」みたいな呪文をくっつけると、サマリーを作ってくれる。これもGeminiとGemini Advanceを比較してみたが、Advanceのほうが若干細かくサマリーを作ってくれるようだ。このあたりがエンジンの余裕の部分だろう。

YouTube動画のリンクを貼って日本語サマリーも出せる

逐次翻訳を見たい場合はYouTubeの字幕機能で、サマリーだけ確認したい場合はGeminiに食わせて、という使い分けになる。サマリーは必要な動画を探す上でも有用なので、そのうちYouTubeにもサマリーを作る機能が搭載されるかもしれない。

■検索とAIは同レベルという幻想

新機能「AI Overview」は日本ではまだ試験運用中だが、米国ではすでに提供が始まっている。そして早速ニューヨークタイムズが、「AI Overview」が誤った答えを出したと報じている。日本のNHKもこのニュースを拾って記事にしている。

すでにAIを使っている人にとっては、こうしたハルシネーションは起こりうることとして認識しているだろう。評価としては、いささか厳しすぎるように感じる。

GoogleのAIは、昨年2月にロイターが報じたところによれば、「Bard」が誤った回答を生成したということで、株価が急落した。また今年2月にも、フォーブスが報じたところでは、「Gimini」が不適切な回答をしたということで株価が下がっている。メディアはまさに、「株価下がり祭り」に群がる傾向を見せているが、我々利用者はこうしたメディアのお祭り騒ぎにむやみに相乗りしてはいけない。

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