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小寺の論壇:我々の老後は何色か

毎週小寺信良が、知財、IT産業、ネット、放送、買ったもの、ライフハックなど、コデラの気になるところを語ります。


本メルマガの購読者の年齢層は、50〜54歳が最多で、次いで45〜49歳、40〜44歳と続く、ほぼ男性である。筆者よりもだいたい5〜10歳ぐらい若い層が中心という事になるが、アラフィフと言われる年齢では、親の介護や死と直面することで、老後を考える機会もまた増える年代でもある。

その一方で、自分自身の老後はまだ先の話だと考えているだろう。そして自分が高齢者になる頃には、社会も変わっているだろうと感じているはずだ。

実は筆者も50歳ぐらいの頃はそうだったのだが、現在58歳となり、WHOの定義による高齢者の65歳まで、あと7年程度となった。この7年で、社会は大きく変わるだろうか。確かに世界でも類を見ない高齢化社会が加速し、団塊の世代と言われた人たちがどんどん亡くなっていくことで、社会問題としては深刻化するだろう。

だが高齢者の生活自体は、あと10年経っても20年経っても、今とそれほど変わらないのではないだろうか。なぜならば、高齢者になればアクティブに動くことができなくなり、今の状態を維持するだけで精一杯になるからである。

高齢者問題と言えば、多くはお金の話に重心が偏るところであるが、今回は友人関係や生きがいといった部分に注目する。今の高齢者が抱えている問題は、我々が高齢者になるころには違うといい切れるのか、そうしたことを考えてみたい。

■誰に頼れるのか

内閣府が定期的に行っている調査の一つに、「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」というのがある。日本、アメリカ、ドイツ、スウェーデンの高齢者に調査を行っているもので、昨年3月に第9回の調査結果が発表されたところだ。

・高齢者の生活と意識に関する国際比較調査https://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/chousa/index.html

この中で特に、「友人・知人との交流・社会活動、情報収集」という調査にフォーカスしてみよう。調査が行われたのは、令和2年12月中旬から令和3年1月にかけてである。したがってすでにコロナ禍の中にある。

・7. 友人・知人との交流・社会活動、情報収集https://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/r02/zentai/pdf/2_7.pdf

まず人と直接会って話をする頻度を第8回と比較したグラフだが、すべての国で「ほとんど毎日」の比率が下がっている。最も落差が激しいのはスウェーデンで、次いで日本となっている。ドイツは比較的差が少ないが、元々の頻度が低いので、他国と同様のレベルではある。

人と会って話をする頻度(前回比較)

年齢別に見ると、年齢が高くなるにつれて、対面でのコミュニケーション頻度が下がってくる。会う人には同居の家族やホームヘルパーも含まれるが、日本において80歳以上で4割弱の人が毎日人と話すわけではないということは、それだけ独居になっている可能性が高いという事だろう。

人と会って話をする頻度(年代別)

筆者が80歳になったころ、上の娘は40歳、下の娘は37歳である。30歳ぐらいで結婚、35歳ぐらいで子供を生んでいれば、子供はまだ2歳か5歳だ。そんな家庭に、80歳の親が同居できるだろうか。まあ、無理であろう。娘たちは「田舎とは遠くにありて思うもの」を地で行く生活をしているはずだ。

では同居の家族以外の誰に頼れるのか。病気の看護や、一人ではできない生活に必要な作業を誰にやってもらえるかという調査では、別居はしているが家族や親族が最多ではあるものの、日本においては友人や近所の人という比率が非常に低い。

同居の家族以外に頼れる人(前回比較)

「頼れる人はいない」はドイツを除いてあまり変わらないわけで、つまり他国では頼れる相手が複数いるが、日本では家族親族一本頼みということになっている。

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