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庄司昌彦教授に聴く、行政DX最前線(2)

毎月専門家のゲストをお招きして、旬なネタ、トレンドのお話を伺います。


武蔵大学社会学部メディア社会学科教授の庄司昌彦さんに、地方行政DXの今を伺う2回目。

多くの人は地域行政に関わる機会というのは、ほとんど引越とか結婚出産のような、窓口というかフロントエンドのところしか接点がないのではないだろうか。とはいえそうしたフロントエンドでさえ、番号札とって書類書いて待ってる、みたいなことである。

登記などはWEB上で申請できるとはいっても、受付時間が9時5時だったりして、なんでWEBサービスに勤務時間があるんだよみたいなことになっていたりする。

行政DX化によってそれらが解消できる…はずなのだが、現時点ではあまりいい話が伝わってこない。そもそも、各地方でそれぞれが同じようなシステムを開発する必要があるのか。どうもそのあたりが腑に落ちない。


小寺:地方の業務って多岐にわたっていて、2000個だか、4000個だかある。それがDX化の対象になるかどうか、棚卸しはもう終わったぐらいなんだろうとは思うんですけれども。

庄司:はい、そうです。

小寺:数をカウントして、それぞれ開発へ向けて業者を集めて、統合していって……みたいなプロセスになりますよね。今、プロセス的にはどの辺りを走ってるとこなんですかね。

庄司:結構、志が低いというか。

例えば、介護保険なら介護保険のシステム、僕の関係してるやつだと地方税とか生活保護とかあるんですけど、そのシステムはその自治体仕様にすごくカスタマイズがされてるわけですね。一応、富士通なら富士通、日立なら日立のシステムを使ってるんだけど、めちゃくちゃ、その自治体仕様にカスタマイズされてるわけです。

それに対して、今度は国が統一して「こういう機能を持つこと」、あるいは「こういう機能を持ってはいけない」とかってことを書いた仕様書、標準仕様書ってのがある。

で、「これは国の仕様書にない機能なんですけど、どうしますか。やめますか?」とか、あるいは、別システムとして切り分けなきゃいけないので、切り分けて再開発して繋ぐようにしますか?とか、「フィット&キャップ」と呼ばれる、機能の何が違うかとか、維持するか、切り離すかとか、そういう検討をしてくださいというのが、もうそろそろ終わってなきゃいけないという段階なんですね。

小寺:うん。

庄司:本当は、この段階で「ベンダーロックイン」というのを外したいので、今までは富士通さんにお世話になってたけど、日立さん、NECさんどうですか、NTTデータさんどうですか、とか聞いて、じゃ今度はこっちのシステムに乗り換えようとかってのができるようになるのが建前なんですけど、正直、他社に乗り換えてる余裕はないという。

小寺:そうよね。1から話をしなきゃいけないんじゃ……。前のベンダーがシステムの設計書とか、いろいろ見せてくれるわけでもないし。

庄司:そうなんですよ。そこで喧嘩とかされても困るので。正直、今までの業者の方に今回の標準システムへの移行をしていただくというのがほとんどだと思う。

小寺:そうなりますよね。

庄司:なので、ベンダーさん集まってください、というよりも、今お仕事してるベンダーさんに、このカスタマイズ機能を外して、新しい標準システムに行きましょう、とか、そういう相談をそろそろ終えてねという、そういう時期ですね。

小寺:なるほど。

庄司:で、ベンダーさんのほうは、標準システムというのはパッケージを1個作ればいい話のはずなので、それを今やってる。で、多分来年度から――早いところは既にやっちゃってるとこもありますけど、大体来年度と再来年度で、移行作業が始まっていくという感じですけどね。ただ、データ移行というのは大変らしいですよ。

小寺:それ、ベンダーさんの実力的に、手に負えるんですか? 力不足のベンダーさんも結構あるんじゃないかと思ってるんですけど。

庄司:これ僕、あんまりよく知らなかったんですけど。標準システムというものに既存のシステムから移行するとともに、その標準システムを載せる基盤をガバメントクラウドというクラウド環境にしなきゃいけないわけですね。

そうすると、今までのカスタマイズしたシステムは、富士通、日立、NECが自分のところで用意したサーバーに、自分たちの設定でやってたものを、Amazonの環境――今、ほぼほぼAmazonの1社独占になりそうなんですけど、Amazonの環境に置きかえて、プラットフォームとソフトウェアの間のいろんな調整だのなんだのをやらなきゃいけなくて、そこの人材が不足しているらしいですね。

小寺:そうですよねえ。自前サーバは面倒見られても、クラウド技術者がいない。

庄司:普通の企業だったら、「うちの会社のクラウドは全部Amazonにします」とかするわけですよね。だけど、自治体の場合、介護保険のシステムは富士通がAmazonの上で作っていて、生活保護のシステムは、NTTデータがOracle Cloudの上で作ってて、とかというふうに、マルチベンダー、マルチクラウドみたいな感じになっちゃうんですよ。

小寺:そんなに細かく分かれてるんですかね。

庄司:それも各システムで業者が違ったりとかもするので、その連携が本当にうまくいくのか?みたいなところが結構大変みたいで。で、撤退するベンダーが出てきている、という。

小寺:でも、連動するために共通化してるんじゃないでしたっけ?

庄司:そうそうそう、そうなんですけど。「大変すぎて、うちは無理です」みたいな。

小寺:ああー、お手上げになっちゃうところが出てきてるということなわけですね。

庄司:あと、標準システムという名前ですけど、一応、オプション機能というのが定義されていて。そのオプション機能を載せるかどうかというのはベンダー次第なんですけど。でも、お客さんのいろんなニーズに応えるためには、全部オプション機能をつけといたほうが本当はいいんですが。やっぱり、「これはうちでは無理です」みたいなのが結構あったり。

小寺:うーん。

庄司:やっぱり、ある程度お客さんが見込めないと、そのオプション機能はつけません、みたいなのも多分あったりするんでしょうね。なので、こっちの仕様書を作ってる側は、こういうニーズもあるよねってことで用意したオプション機能なんだけど、実際には開発されないんじゃないか疑惑みたいなのがあって(笑)。

小寺:そうなんだ(笑)。

庄司:ちょっと思った通りにいかないな……みたいなところがあるけど、問題はですね、実態がわかんないんですよ。

どこの会社がどれぐらい行けそうか、行けなさそうなのか、オプション機能は全部みんな対応してるのか、してないのか。そういう情報が断片的にしか出てこない。事例としてとかは出てこないので、全体的なデータ、統計がわからないという状況ですよね。

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