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初めての採卵

数週間前に初めての採卵に挑んだ。

私たち夫婦は体外受精からの治療スタート。通常はタイミング法、人工授精、体外受精へとステップアップしていくものとのことだが、検査結果と私の年齢からすぐに体外受精へと進めたことはとても良かった。

採卵の前段階、自己注射についてはまた別の機会に書きたいと思う。

約1ヶ月の準備期間を経て迎えた採卵の日。当日は朝早くから目が覚め、絶飲開始時間の少し前に水を一口飲み、落ち着かないままクリニックへ。休日だったため私以外の患者はほとんどいない静かな空間で待つこと数分、待合室のベッドへ案内された。

そこで当日の流れや提出したばかりの精子の状態について報告を受ける。

着替えを済ませ、点滴が始まる。看護師の方に麻酔方法について聞いてみた。どうやら点滴を通して行うとのこと。看護師の方は終始とても親切に対応してくれた。

そして横になって待っている間、窓の方へと目をやると外から太陽の光が差し込んでいた。「今日はとても天気の良い日だな」ふとそう思った時、急に涙が溢れてきた。

「怖い」

漠然とそう感じてしまったが最後、もう涙が止まらない。

様子を見に来た看護師の方に泣いているところを見られてしまい、ティッシュの箱を差し出されながら「大丈夫ですよ」と慰めてもらった。あぁ、いい歳して子供みたいで情けない。

そして手術前最後の排尿を行ったあと、いざ手術台へ。担当してくれる先生はクリニックの理事長。とても評判の良い先生で、この先生を目当てに遠方から通う患者もいると多くの口コミを目にした。

私が泣いていたことを耳にしたのか否か、理事長先生はとても明るく陽気に声をかけてくれた。手術台に横たわった際に目が合った培養士の方にも優しく励まされ、また涙が溢れた。理事長先生との他愛のない話をしていた途中から記憶がなくなり、起こされた時には既に待合室のベッドへ移動されていた。

麻酔で眠っていたのは1時間くらい?あっという間の出来事だった。

様子を見に来た看護師の方から、この後培養士の方との面談があるのでそれまでしばらく安静にするようにと指示を受けた。それに続けてこんな話もしてくれた。

「いつもは患者様を見送る立場ですが、以前自分が患者として手術台に上がった時は、とても怖くなって。ぶつぶつと独り言をつぶやきながら平常心を保つようにしていたんです。いま思い返すと、なんだか恥ずかしいです」と、笑いながら話してくれた。

数時間安静にした後、着替えをして培養士の方の元へ。今後の流れについての説明を受けている途中、担当してくれた理事長先生が入ってきた。

「あっという間だったでしょ?」

ニコニコしながら先生は続けた。

「今(年齢は)いくつだっけ?この後移植する時に1個にするか2個にするか。まぁ、2個の場合のリスクは双子になる可能性があることだけどね。なるべく最短で妊娠できるようにやっていこう。ご主人とも相談しておいてね」

その時はまだ双子になることのリスクがなんなのかよくわかっていなかったが、後々情報を得るにつれてどうしたらいいものかとても悩んだ。

インターネット上には数多くの情報が溢れており、どれも一般論や研究データの羅列ばかり。結局、私にとっての最善は何なのかがどんどんわからなくなってきた。「ネット上の情報を見すぎるのは良くないな」と、私はそれ以上検索することをやめた。

後日、採卵後の結果を聞きにクリニックを訪れた。無事に胚移植へと進むことができるとのこと。そして胚をいくつ戻すかを選択する。

不妊治療に関するどんな研究データでも断定ができないのは、神様が宿してくれる命はとても尊く奇跡の連鎖で起こるものだからだと思う。正しく生命の神秘。

「きっと妊娠する時は何をしててもする」

そう信じて、移植する胚については次の診察で先生の意見を聞き、なるべく自分の心が穏やかでいられることを大切に選択していこうと思う。

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