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『ヒトかモドキか、ホンモノたち』

「うーん。うーん。あーだっりぃなあ、起き上がれないや。」

「アンタもうくたばるんですか?タンポポモドキさん。」

「タンポポだったらとっくにお空に飛んでっちまってるのになあ。」

「アンタはタンポポじゃないでしょう。まだ早いですよ。」

「それでもいつかはお空になるのさ。スズメモドキ君もどこかに飛んで行きたまえよ。」

「私は正真正銘のスズメですよ。それに今飛んでいったって私、何度だってここに来れます。待たなくても動かせる羽ですからね。このニンゲンモドキの巣から出るニセウモウを拾ったら一旦帰りますよ。」

「あれれ?ここにいるのはただのニンゲンじゃなかったかい?頭に毛が生えていないやつだろ?」

「モドキもいますよ。ニンゲンモドキと、ニセニンゲンダマシと、どうやらほかにも似たような種が共生しているとか。ところで、頭に毛が生えているならそりゃニンゲンダマシマガイじゃなかったですか?唇が薄めのやつらでしたっけ。」

「さあ?どうだったかな?ニンゲンってのは天敵除けのためにネコを世話する習性があると聞いたが、そのまがいもの達もそうなのかい?」

「ああ、ここにもネコはいますよ。でも、この前食べ物を与えていたのはニンゲンモドキだったかしら。そんなことより、ネコって怖くないですか?私ネコ苦手なんです。いつも遠くから襲うタイミングを伺ってる気がして。」

「ん~、ネコって色んなやつがいるからなあ。そいつがたまたま狩り好きなんじゃないか。いつも呑気に寝てるネコもいるじゃないか。足が長いネコ、足が短いネコ、毛が長いネコ、天パのネコ、鈍くさいネコ、賢いネコ、太ったネコ、高く飛ぶネコ、斜に構えたネコ、ひもじいネコ、ふてぶてしいネコ、社交的なネコ、一匹ネコ。目の色も色々みたことがあるなあ。あ!そういえば!全身が黒いネコを見かけたら不幸になるって本当かな?知り合いの友達と株を分けたやつの友達の知り合いのペンペングサさんが言ってたらしいよ。」

「ああ、その都市伝説ね。そんなホラを吹いて歩いてるのはペンペングサさんじゃなくってイヌナズナですよ。」
「ナズナってペンペングサさんのことだろう?同じじゃないか。」
「黄色い花を咲かしてなかったですか?ペンペングサさんは白を咲かしてるナズナさんですからね。」
「まあ、会ったことは無いからなあ。」
「アンタ素性の知らないやつの話を信じてたんですか。まったく、土から動けないやつは。アンタの友達の見聞の広~い私が思うには、どんなネコでもネコはネコ。おっと、噂をしてたら来やがりました。失礼。」

そう言ってツバメは飛んで行った。

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