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目『非常にはっきりとわからない』

12/15(日)、観賞直後に書いた雑感。
ネタバレ厳禁ということで、展示期間が終わってから投稿しようと下書きに保管してありました。

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千葉市美術館の展示。
TwitterのRTで回ってきたのを見て、面白そうだなと思った。
年末くらいまでやってるみたいだし千葉市ならそう遠くないから、まあ行けるときに行こう…と思っていたら機会を逃しそうだったので、思い立ったが吉日ということで急遽、行くことを決めた。

好きで追いかけているTwitterの人がこぞって感想をツイートしていて、そのなかにネタバレもありそうだったが目を瞑ってTLをスクロールすることでなんとか凌ぎ、「会期中なら何度でも入場できる」「とにかくスタッフの動きをよく見ろ」以外の前情報ゼロで千葉市美術館へ。

日曜と言うこともあってか、チケット売り場には列ができていた。千葉市美術館は改装中らしく、外も中もそこかしこが養生されていた。
チケット売り場への列に並ぶと、スタッフの方より写真の撮影は禁止だとか、飲食禁止だとか、あと展示スペースは7階・8階の2フロアだが、どちらから見ても構わないという説明があった。
チケットの代金は一般1200円で、久しぶりに美術館に来たのでそれが安いとも高いともいまいち相場が分からないが、たぶん安いのかなと思いながら財布を出す。
チケットに名前を書いたのは初めてかもしれない。マットなブラックの、厚めの紙でデザインも洗練されていた。

チケット売り場の方の指示通り、左胸に「AUDIENCE」と書かれた黄色いシールを貼り付け、とりあえずまずは7階で降りる。
エレベーターのドアが開くと、そこも養生テープだらけだった。この美術館は改装中ということだし、改装の過程を展示する、というコンセプトなのかな、と思いながらフロアをぐるっと歩く。展示物はどれも現代アート?という感じで、よく分からない、丸い赤い石?みたいなのが壁に掛かっていたりとか、秒針が動いている時計の針?が大量に天井から吊り下げられたりしている。

こういうの展示施設の裏側って感じで面白いな~、学芸員の仕事ってこんな感じなのかな~と思いながら上行きのエレベーターに乗る。

8階で降りると、ここもまた養生だらけだった。こんな作業の途中なのに人がたくさん出入りして大丈夫かなと思って右に進むと、全てが、全てのもの、さきほど見た7階の展示物と、床に落ちてるゴミ、工具箱、木箱に貼ってあるテープの「千葉市美術館」の字、養生テープの段ボール………全てのものが7階と全く同じだった。
いや、全く同じように見えているだけかもしれない。展示スペースは撮影禁止なので記憶が100%正しいという自信は無い。
もしかして、見比べるのにエレベーターを挟まないといけない、大規模な間違い探し?
と思って再度7階へ。
いざ7階へ来てみても、8階がどんな感じだったか正確には思い出せない。でも気をつけて見た部分(木箱に書かれた文字や数字)は全て同じだった。

たぶん出口に答えがあるんだろう。それで、「非常にはっきりとわからない」とは、人間の記憶力の曖昧さを指摘する展示なんだろうなと思いながら、3往復ほどして1階へ降りた。

7,8階を何周もしながら期待していた答え合わせなんてどこにも用意されていなくて、とりあえず今展示のフライヤーを1枚もらって「非常に、はっきりと、わからなかった………」と、頭に「?」を浮かべつつ美術館を出た。

お腹が空いたので近くのパスタ屋さんでお昼ごはんを食べる。隣の席に座っている女性二人組も同じフライヤーを持っていて、同じ「非常にはっきりとわからない」仲間であることを認識する。
さっきもらってきたフライヤーにヒントがあるのではないか?と目を通したが、そんなに易しくはなかった。
Twitterで「非常にはっきりとわからない」と検索するとたくさんの来場者のツイートが表示されるが、ネタバレを固く禁じられているので、どれも詳しい内容までは書かれていない。

ある人の「設定で人間の視覚と行動の自由を奪う仕掛け」という文言を見て、頷く。つまり、改装中という設定をこれでもかと見せつけることで、観客は常にどこかにヒントを求めてソワソワしてしまう。
うわ~、そういうことか…運営の思った通りの動きをしてしまった(笑)
二度めにはニヤニヤしてしまう、というのは、何も知らずにそわそわしている初回の人たちを見て、ということかな。

お腹が満たされたので再び美術館へ。
Twitterで「奥で寝ている人がいるけど、死角になっててよく見えない」というツイートを見て、そんな人いたっけ?と思ったので、その確認もしたかった。

入場のとき黄色いシールをつけていたので、あっさり展示スペースへ向かうことができた。7階で降りると、まっさきに「寝ている人」を探しにうろうろ。確かにいた。そこまで見てなかった…!

大量の時計の針の展示室に着くと、人だかりができていた。設営スタッフが二人、黙々と作業をしているようだ。午前中に来たときにはスタッフなんて一人もいなかったのに…。
時計の針に近づく通路は閉鎖され、スタッフたちが次々と木箱を移動していく。
壁に掛けられていた丸い赤い石は、白い布で覆われていた。

どういうこと?これで「改装中の展示室で2フロアにわたる間違い探しをさせる展示」の線は完全に消えてしまった。
それにしても設営スタッフの動きも表情も本当に自然で、これがもし演技だとしても会期中これを毎日やっているとは思いにくい。彼らの着ている服もペンキや汚れで程よくくたびれていて、この展示のために用意したとも思えない。
8階では他のスタッフが設営作業をやっていて、刻一刻と展示室のものの配置は変わっていく。

何も分からない………。

さっきの階ではどうだったっけ?とエレベーターに向かうも、さっきの階が何階で、いまここが何階なのかも怪しくなってきた。というのも、4基あるエレベーターの中央にあるはずの、階を示す数字が養生テープで隠されている。いじわる…!

「やっぱり、非常に、はっきりと、全く、わからない」状態で、やっと1階へ。

感想を募集する「わからない収集プロジェクト」 なる箱が用意されていて、収集された来場者の「わからない」がTwitterで毎日更新されていくらしい。
「わからなくて面白かった」とか「なにがやりたいのかわからない」「分からなくてイライラした」とか、いろんな人のいろんな感想があり、これもすごく楽しめた。

「わからない」収集プロジェクト (@me_wakaranai)さんをチェックしよう https://twitter.com/me_wakaranai?s=09

私が美術館を出たのは午後3時頃だったが、その頃にはチケット売り場の列は私が午前に並んだときの倍ほどの長さになっていて、最後尾はフロアの外へ飛び出していた。

もともと千葉市美術館のメイン客層は50~60代より後ろということらしいので、この「非常にはっきりとわからない」で20代以降の幅広いが列を為すのはかなり珍しい風景だったのかなと思う。
50代半ばくらいの婦人が、チケット列を整理するスタッフの人に「誰の絵(が展示されているの)?若い人たちに人気の人?」と尋ねていたのが印象的だった。

写真は千葉市美術館入り口の柱
来場者の誰かがいたずらで「AUDIENCE」の黄色いシールを帰り際この柱に貼ったのが始まりらしく、今はたくさんの人が上から貼り重ねていってビールみたくなっている。

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https://www.yusukefujiki.com/post/「目_非常にはっきりとわからない」について「スケーパーと目méが対談」