とある友人の話②

前回に引き続き、僕の変わった友人の話をしたいと思います。

彼と友達になったのは小学校4年の時です。2人とも野球好きということもあって、すぐに仲良くなりました。裕福な家庭だからでしょうか、やはり当時からどこか世間とズレているような印象でした。

夏のとある日、仲のよい友達と夏休みの予定について話していました。家族で国内旅行に行く人もいれば、おばあちゃんの家に行く人もいます。すると、やけに機嫌の良さそうな彼がやってきて、目をキラキラさせながら僕たちに言います。

「夏休み俺ラオス行くねん!」

ラオス?? 当時小4だった僕たちには分からない地名でした。ただしお金持ちが行く海外旅行です。そして彼があまりにも嬉しそうに自慢するので、きっとハワイやグアムを超えるリッチなリゾート地に違いない!ラオスに対する幻想が膨らみます。その気持ちはおそらく彼も同じだったでしょう。彼はクラスのみんなに自慢して回ります。僕たちはラオスがどんなところだったのか、どんなすごいお土産をくれるのか、彼の報告が待ち遠しくて仕方ありませんでした。

まぁ、その後の展開は言うまでもありません。小4の少年がラオスに行って楽しいはずがありません。人生の苦楽を経た大人が行くからこそ楽しめる国です。僕たちは詳しい話をあえて聞かず、お土産にもらった変な風味のチョコレートを黙々と食べていました。初めて気を遣った瞬間でした。

なぜ親御さんは息子のはじめての海外旅行にラオスを選択したのでしょうか。不思議でなりません。


お金持ちエピソードがもうひとつ。野球をして遊ぶ約束をしていたある日、またもや彼が自慢げにやってきます。どうやらグローブを買ってもらったみたいで、その価格はなんと3万円というのです。少年野球用のグローブなんて高くても1万円程度です。スポ少にも入っていない彼がそんな高価なグローブを買ってもらえるのが羨ましくて仕方ありませんでした。

グローブ見たさにみんなが彼を囲みます。硬式用で、黒とオレンジ色のミズノ製のグローブでした。革も上等で、確かに3万円でも頷けます。

それにしても黒とオレンジって珍しいなぁ、、、

しかも表面(親指入れる方)が黒で、裏面(親指以外の4本の面)がオレンジって変わった配色やなぁ、、、

ん?違うぞ!

みんなが唖然としました。僕たちが黒色だと思っていた面ですが、よく見ると革の色ではありません。マジックで書かれた文字がずらっと並んでいます。

『    ○○ ○○(名前) 1998年1月2日生

  〒520-○○○○ 滋賀県大津市○○町○○-○○

  TEL: 080-○○○○-○○○     』


どんだけ失くしたくないねん!

僕はこれほど個人情報が記載されたグローブを未だかつて見たことがありません。親御さんはどんな気持ちでピカピカの3万円のグローブに極太の油性ペンを走らせたのでしょうか。先ほどのラオスの件といい、彼の親もどこか変わっています。そして何故彼はこの個人情報モロ出しグローブに疑問を抱かないまま無邪気に自慢できたのでしょうか。彼のポジションはショートなので、もし彼の家に泥棒が入ったなら犯人は相手チームの二塁ランナーに違いないです。


これでは守備はできてもプライバシーの守備はできまへんで!

・・・

お後がよろしいようで。

余談ですが、それ以降職務質問を受けた時や役所で手続きをする時は免許証のかわりにそのグローブを提示しているとかしていないとか、、、


話はまだまだ尽きません。また気が向いた時に。。。








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