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ニンジャスレイヤーTRPG:追加ソウル案『イツワリ・ニンジャクラン』


始めに

 この記事は「ニンジャスレイヤーTRPG」第2版に「イツワリ・ニンジャクラン」を追加する非公式のルールセットである。NM(ニンジャマスター)はこのルールセットに含まれるルールを自由にセッションへ導入することが出来る。イツワリ・ニンジャクランのPCをセッションに持ち込む際は、専用効果を使用してよいかNMに確認を取ること。

『イツワリ・ニンジャクラン』

イツワリタイ……

イツワリ・ニンジャ:事象

概説:かつて中国奥地にいたとされる、謎めいた性転換のジツを持ったリアルニンジャに師事したイツワリ・ニンジャは、クラン開祖となるとしばしばトリカエ・ニンジャクランと抗争を起こし、個人の潜伏能力をより高めるための前衛的なジツを開発していった。
 そうしたイツワリ自己鍛錬の果てに彼(または彼女)はやがて自らの虚と実が一体となって自我を失い、姿形の定まらないアブストラクト存在になることを悟り、自らの弟子にクラン当主の座を正式に譲った上で同じくアブストラクト存在と化しつつあったトリカエ・ニンジャとともに泉下へと沈んでいった。

効果:公式の基礎ジツと同様の形でジツやスキルを獲得できる。

※性別を変更するジツについては以下記事も参照。

追加のスキルやジツ

イツワリ・ニンジャクランのジツ/スキルリスト
『☆◉イツワリ・マスタリー』
『☆◉交渉:腹話術』
『☆◉交渉:ボイスチェンジ』
『★◉イツワリ装束作成』
『☆イツワリ・ジツ(LV1-3)』
『★イツワリ・ゲン・ジツ』
『★★グレーター・イツワリ・ゲン・ジツ』
『★★★不定形化』

イツワリ・ニンジャクランの些細なジツスキル
『☆◉ディープフェイク』

イツワリ・ニンジャクランの生い立ち&マイナースキルリスト
『〇男の娘』
『〇漢女』
『〇オメーンの下の素顔』

☆◉イツワリ・マスタリー

このニンジャは平時から超自然的なアトモスフィアを発散しており、誰かになりすますことに長けている。

前提:イツワリ系の【ジツ】値1以上

あらゆる幻覚系のジツの『発動判定』難易度が-1される。
また、【精神力】による効果自動延長が+1ターンされる。

☆◉交渉:腹話術

このニンジャは声帯を使わずに発声できる。その代わり、リップシンク(音声と唇の同期)がやや遅れる。

「◉交渉:欺き」に準ずる。また、自分のスキルスロットにこのスキルと「◉交渉:欺き」を重ねて取得することはできない。
具体的内容:顔が見えない通話で他人になりすます、その姿にふさわしい声色で会話する

☆◉交渉:ボイスチェンジ

このニンジャは声帯から発する声の波形を変えて異なる声色を出すことができる。

「◉交渉:欺き」に準ずる。また、自分のスキルスロットにこのスキルと「◉交渉:欺き」を重ねて取得することはできない。
具体的内容:地声より高い声や低い声に変える、その姿にふさわしい声色で会話する

★◉イツワリ装束生成

このニンジャは超自然の糸から全身のニンジャ装束を生成してしまう。

前提:【ジツ】値2以上 または 『◉◉戦闘系ソウルの力』

このニンジャは、何も装備していない「頭部」「胴体」「腕部」「脚部」の防具スロットに「イツワリ生成装束」を装備した状態でシナリオを開始できる(防具とみなす)。これはどの部位でも緊急回避ダイス+1をもたらし、またどれも【万札】0である。脚部は『脚力ダメージ軽減1』も持つ。これらはシナリオ終了時に消滅する。

4部位全てに「イツワリ生成装束」を装備し、かつ【ワザマエ】値7以上の場合のみ、上記に加え、以下の一式装備ボーナスを得られる。なお、その生成装束がどのタイプの一式装備ボーナスをもたらすかは、シナリオ開始時に宣言できる:

・標準的な:【回避】+1
・重装な:【体力】+1
・魔術的な:【精神力】+1
・俊敏な:【射撃】+1

【ジツ】値4以上(または『◉◉戦闘系ソウルの力』+【ニューロン】値5以上)となった場合、上記の各種一式装備ボーナスに【体力】+2と【回避】+1が追加される。加えて、このスキルを持つニンジャが『◉◉アーチ級ソウルの力』もしくは『◉◉◉アーチ級戦闘系ソウルの力』を獲得した場合、このスキルをコスト無しで直ちに『★★★◉アーチ級装束生成』へとアップグレードしてもよい。

☆イツワリ・ジツ(LV1-3)

このニンジャは超自然的なアトモスフィアを発散しており、モータル(常人)をたやすく魅了したり、NRSと呼ばれる恐慌状態に陥れたりする。

使用タイミング:手番「攻撃フェイズ」
コスト:精神力1、1行動
発動難易度:【ニューロン】+【ジツ】:NORMAL
効果種別:精神攻撃
制限:「戦闘兵器」には効果を発揮しない

6マス以内にいて視線が通っているモブ敵モータルX体を直ちに戦闘不能状態にし、マップから取り除く。Xの値は【ジツ】値に等しい。

【6,6】:直ちにターゲットを1体追加し、同じ効果を与える。ターゲット選定の条件は変わらない。

【6,6,6】:直ちにターゲットを2体追加し、同じ効果を与える。ターゲット選定の条件は変わらない。

【ニューロン】7以上:上記効果とは別に、このキャラは『交渉判定』をシナリオ中1回だけ振り直せる(【精神力】1をコストとして支払うこと。)

★イツワリ・ゲン・ジツ

脳神経に作用する精神波を用い、敵の戦闘意欲を削ぐ。

使用タイミング:手番「終了フェイズ」
コスト:精神力1、瞬時
ターゲット:環境
発動難易度:ニューロン+ジツ:HARD
効果種別:環境効果、幻覚、精神攻撃、効果継続(戦闘中)
 制限:「戦闘兵器」には効果を発揮しない
 制限:他の環境効果ペナルティとは累積しない

このジツの効果が継続している間、術者と同じ部屋(または同じ屋外エリア)にいて、かつ術者よりもイニシアチブ値の低い敵全員は、ターゲットを問わず『近接攻撃判定』と『射撃判定』の難易度が+1される。このジツの効果は、術者が気絶するか、戦闘終了まで継続する。また、術者に対してダメージが与えられ【体力】か【精神力】が1以上減少した場合も、そのフェイズの終わりに効果が終了する。

★★グレーター・イツワリ・ゲン・ジツ

脳神経に作用する精神波を用い、敵にこのニンジャと同じ姿に変わる幻覚を見せる。

使用タイミング:手番「攻撃フェイズ」
コスト:精神力2、1行動
ターゲット:なし(特殊)
発動難易度:ニューロン+ジツ:HARD
効果種別:特殊

『発動判定』に成功した場合、以下の効果を使用できる:

アワセ・カガミ:自分の周囲3マス以内にいて視線が通っているキャラ1体をターゲットに指定すること。ターゲットは『回避判定:HARD』を試みられる。回避できなかった場合、敵は眩暈と混乱によって【精神力】をD2失い、ターン終了まで『崩れ状態』となる。

★★★不定形化

このニンジャは自我を失い、ただ恒久的な偽りを望むのみのアブストラクト存在となった。

効果種別:ジツ強化

『★★グレーター・イツワリ・ゲン・ジツ』が以下の効果に強化される。Xの値は術者の【ジツ】値に等しい:

ドッペルゲンガー:Xマス以内にいて視線が通っているキャラ1体をターゲットに指定すること。ターゲットは『回避判定:U-HARD』を試みられる。回避できなかった場合、この敵と術者は直ちに互いの位置を「瞬間移動」によって強制的に入れ替えられたうえ、敵は激しい眩暈と混乱によって【精神力】をD3失い、ターン終了まで『不覚状態』となる。なお、味方に対してこれを使用した場合、味方はこれらの不利な効果を一切受けない。

イツワリ・ニンジャクランの些細なジツスキル

☆◉ディープフェイク

このニンジャはごく一般的な監視カメラ(カメラ付き携帯電話を含む)や生体センサー程度であれば集中の必要もなくハッキングし、その姿や声を欺くことができる。

前提:【ジツ】値1以上(イツワリ系)、【ニューロン】3以上

このスキルを持つニンジャはNMと相談し、モータルのサイバネアイに見られる、市販のデジタルカメラ(カメラ付携帯電話を含む)に撮られる、一般的な監視カメラに映る、一般的なセンサー類に触れるといった場合に正体を隠すための『ハッキング判定』を自動成功したことにしてもよい。判断に迷う場合はマスターが決定する。
またこのスキルで生まれたフェイク・データ(映像や画像、生体情報など)が消去されず第三者に検証される場合、その者は『知識判定:HARD』を行い、成功するとデータが改ざんされていることが発覚する。

ルールセット作成者による補記:なにげなく表を歩くだけでサイバネアイや監視カメラの目がどこにでもあるネオサイタマでいちいち正体が隠れているかどうか決める『ハッキング判定』なんかしていたら、時間がいくらあっても足りないのでこの些細なジツを用意した。
 ただし☆◉ディープフェイクを持つニンジャの正体を疑っているニンジャとの【ニューロン】による『対抗判定』や、より高性能の光学機器やセンサー類(低く見積もっても「▶▶サイバネアイLV2」以上)にさらされて「ここで正体が割れるかもしれない」といった状況では使えない、ということをルールセット作成者として強調しておきたい。
 また結局はそのディープフェイク画像(あるいは映像)のデータも、見る者が注意深く見れば改ざんの痕跡がわかるようにしたい。そうでないとフェアじゃないからだ。あくまでもこれはイツワリ・ニンジャクランのニンジャがモータルを騙す手段のひとつにすぎないのだ。
 つまり現代において、幻覚のみを用いたイツワリ・ジツは相当弱い立場にあるということである。
 そもそも、撮られるのがフィルムカメラとかだったら何も役に立たない。

イツワリ・ニンジャクランの生い立ち&マイナースキルリスト

〇男の娘

「おとこのこ」と読む。

この者は男性らしい骨格をメイクアップや服の着こなしなどによって女性そのものに見せかけている。
永続的な【カラテ】-1と【ワザマエ】+1の修正を受ける。
1つ選択:『◉知識:ファッション』『◉知識:伝統的アート』『◉交渉:欺き』『◉交渉:誘惑』

〇漢女

「おとめ」と読む。

この者は女性らしい骨格をメイクアップや服の着こなしなどによって男性そのものに見せかけている。
永続的な【カラテ】+1と【ワザマエ】-1の修正を受ける。
1つ選択:『◉知識:ファッション』『◉知識:スポーツ』『◉交渉:欺き』『◉交渉:誘惑』

ルールセット作成者による補記:「男の娘」も「漢女」も一種の同人用語であり、特に後者は「あやめ」という読みの異義語とのまぎらわしさが指摘される。しかしながら作成者のイメージに適した日本語が現時点で思い浮かばないため、これを使用する。

〇オメーンの下の素顔

この者は正体を隠し、別人になりすましている。そのため、正体が割れぬよう常に周囲へ気を配っている。
永続的な【ニューロン】-1の修正を受ける。『◉不屈の精神』を得る。
2つ選択:『◉交渉:欺き』『◉交渉:卑屈』『◉交渉:駆け引き』『◉交渉:共感』

当記事のデータを利用したNPC

◆ローズリリー(種別:ニンジャ)初期装備:カタナ アイコン:ロ
カラテ     3  体力    3
ニューロン   4  精神力   6
ワザマエ    5  脚力    3/H
ジツ      5  万札    10

近接/射撃/機先/電脳  3/5/4/4
回避/精密/側転/発動  5/5/5/9
   緊急回避ダイス  
     即応ダイス  

◇装備
▶生体LAN端子LV1

◇ジツやスキル
☆イツワリ・ジツLV3
★イツワリ・ゲン・ジツ
★★グレーター・イツワリ・ゲン・ジツ
◉不屈の精神
◉交渉:卑屈
◉交渉:共感
☆◉交渉:ボイスチェンジ
☆◉ディープフェイク
◉◉グレーター級ソウルの力
〇オメーンの下の素顔
◆イツワリ・ニンジャ:事象(種別:リアルニンジャ)アイコン:偽
カラテ     7  体力    14
ニューロン   10  精神力   10
ワザマエ    10  脚力    5
ジツ      7  万札    24

近接/射撃/機先/電脳  7/10/10/10
回避/精密/側転/発動  10/10/-/17
   緊急回避ダイス  
     即応ダイス  

◇ジツやスキル
☆イツワリ・ジツLV3
★イツワリ・ゲン・ジツ
★★グレーター・イツワリ・ゲン・ジツ
★★★不定形化
◉◉アーチ級ソウルの力
★★★◉アーチ級装束生成

ルールセットの改訂について

 このルールセットは試験的なものであり、予告なく改訂される場合がある。変更、追加が行われた箇所は表記ゆれの統一などルールに影響を及ぼさない些細なものでない限り基本的に明記される。NMは最新のデータに拘らず、好きな版のデータを用いて構わない。

2024/09/18 記事投稿(Ver1.0.0)

利用規約

 このルールセットのデータが含まれるリプレイなどを公開する場合、公式ルールとの混同を避けるため可能な限りこの記事を引用元として明記すること。「ダイハードテイルズ」公式以外による無断の商用利用は法的に認められた例外を除いて原則不可。

参考資料:
「ソウルワイヤード」ダイハードテイルズ
「ニンジャスレイヤーTRPG:シナリオ案『性転換の秘宝』」古矢沢=サン
(参照2024-9-16)
「ニンジャスレイヤーTRPG二版非公式追加ソウル:『カイジュウニンジャ・クラン』」なぎ=サン
(参照2024-9-16)
「薔薇で造った百合の造花」ピクシブ百科事典
(参照2024-9-18)

付記:ライナーノーツ

 イツワリ・ニンジャクランは身分や正体を偽装したり、誰かになりすましたりするジツに長けたクランだ。その一例として上記に上げたローズリリーというニンジャはもとはあるヤクザクランのテッポダマだったが、誘拐事件で死んだオヤブンの娘に幻覚を使ってなりすましている(おれの次元ではだ)。
 とはいえ現代におけしイツワリ・ニンジャはアルセーヌ・ルパンや怪人二十面相のような変装の名人ではなく、擬態といって昆虫や植物が生まれながらにして別の生き物のかたちをまねるようなものに近い。
 ほぼ古矢沢=サンの解釈の引き写しだが、かつて中国奥地で生まれたとされる謎めいた性転換のジツはここでは肉体操作や身体構造の変化によるものとし、そこからナナフシだとかハナカマキリなどに着想を得て幻覚やファッションで「姿を偽る」ということに派生していったわけだ。

 しかしなりすます、ということはもともとの正体があってのことだが、ニンジャソウルの力を引き出すごとにそうした過去は薄れてゆき、やがては自我を失って、人間に根源的な恐怖を与えるドッペルゲンガーやシェイプシフターのような不定形の存在になる。

 なおトリカエ・ニンジャクランとイツワリ・ニンジャクランは抗争を繰り返したという設定は、現実でのTSF(トランスセクシュアルフィクション)と異性装のクラスタがしばしば対立したことに由来する。性転換ものを謳いながら実は異性装ものだった、というあの時代の混乱は双方にとって不幸なことだった。
 最後は泉に沈んだというのも古典的TSF「らんま1/2」の呪泉郷にオマージュを捧げている。というか、そもそも中国奥地で謎めいた性転換のジツと言ったらどうしてもこの作品を想起せざるを得ないのだが。

 このルールセットはゲン・ジツの下位互換またはハッキング系スキルとの併用を主軸として、幻覚とハッキングの両方を取ろうとするとどっちつかずになるくらいのバランスを目指したつもりだ。
 幻覚は機械や戦闘兵器には効果がない。しかしハッキングならば効き目がある。このルールセットを作るうえで、まずはその関係を頭に叩き込んだ。

 なぜ二種類のニンジャクランをつくったかというと、オブリージュ(トリカエ系ニンジャNPC)のような正統派TSキャラもいい(その性転換過程も思い描ければ遥かに良い)が、どうしてもローズリリーのような、現実には性転換していない(だから厳密にはTSキャラではない)のだけれども気持ちは女性化している……だが、そういった仮面を被るようにして自分の本性を偽っているのである……という複雑なキャラクターをニンジャスレイヤーTRPGの舞台で動かしてみたかったからだ。
 ジェンダーに関する議論は今なお過渡期にあり、やぶへびにもなるが、おれは自分が初めてTSFに触れた時の、それこそニンジャのジツめいた性転換によって「男だから云々」というある種のタブーや性差の垣根を飛び越えるあの痛快さを何よりも大事にしており、このルールセットを用いたセッションでも、現実から離陸した……それが胡乱さでもいい……有り体に言えばブッ飛んだオモシロさであってほしい。もちろん卓メンバー同士の奥ゆかしさとリスペクト、ラブの土台の上で、それが叶うことを願ってやまない。

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