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【七峰】月村手毬のドヤ顔で、白飯がウマい

いらっしゃい。

 おれはおれ以外の何者でもない。だから書く。

 おれは一枚のファンアートから、月村手毬というアイドル候補生の魅力を知った。そしてアプリをダウンロードし、彼女をプロデュースし始めたのだ。

 そもそも、おれは現在主流の「長々としたシナリオを読ませ、ログインボーナスと各種の周回でひとの余暇を拘束し、金回りと運の良かったやつだけ上に行く」ソシャゲにハマったことがない。多少デイリー周回のスパンが短かったとしても、半年も経てば繰り返し作業に飽きてやめてしまう。

 そんなおれが『学園アイドルマスター』でまず第一に気に入ったところは、シナリオ周回の早さだ。

 さすがにイベントをいちいち見ていればそれなりに長いのだが、早回しすればちょうど30分ほどで終わる。

 どうせ休日に十何時間もぶっ通しでやるのが「効率的」にはなってしまうだろうが、日常の中の30分というのは意外と転がっているものだから、これは一日一回でもプレイしやすいと感じた。

 第二に、このゲームはいわゆるローグライト(不思議のダンジョンよりも簡素なゲームデザインのローグライク、と解釈している)の様式────麻雀にも例えられるが、山札から手札を引き、コンボを決めながら目標値(あるいは合格点)に近づけてアイドルをより強く育成していく遊びを提示している。

 決まった攻略法こそあれ、それこそ回転寿司で流れてくる皿をどう取るかといったような選択のストレスとジレンマはそれなりに頭を使うため、プレイヤーは積極的にゲームへ参加することになる。なにせ自分の選択によってアイドルの順位に差が出るのだから、これは死活問題だ。

 第三に、月村手毬のドヤ顔で白飯が食える。

 おれはそう思いながら白飯を食っている。


 月村手毬は、人が生きていれば誰しも平等に後悔する挫折や不摂生を体現するキャラクターだ。

 それでいて、いまどき眉根を寄せて冷たい言葉を投げかけるだけでクールキャラぶってるやつを誰も好かないので、実はええかっこしいなだけで内面はそうでもない、ということをプレイヤーにだけ聞こえる彼女の心の声で表現している。
 ゲーム全体を通して、このメタ読心術でキャラクターの二面性とそのギャップから興味を惹かせる試みは成功していると感じる。「行間を読み取って察して」の時代からすれば隔世の感あり、だが。

 今のところおれは定期公演『初』のシナリオを周回して月村手毬の親密度を最大まで上げる段階にいるが、ボーカル値1000にはちっともたどり着けない程度のサポートカードパワーだ。

 真面目に攻略する気があるならリセットマラソンをするべきだったわけだが、時間さえあればいずれSRサポカが充実してきてそこそこのエンディングにはたどり着けることがウマ娘で完全に証明されており、さほどシリアスには考えていない。

 それよりも、あまりに月村手毬の激しい歌声しか聞かないので、彼女の歌「Luna say maybe」のサビがおれの頭の中を延々とループし続けることに、すこし困っている。

 月村手毬をトップアイドルの舞台へ立たせるプロデュースの道半ばにいるおれからの頼みをおまえがどう受け取るかはわからないが、どうか彼女を応援してほしい。

 そしておれのIDは「U8T3JHSC」だ。名刺入れの片隅に、しまっておいてもらえば助かる。

(終)

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