透明になった恋
ここ最近、思い出す事がある。一度思い出してしまうとその頃に戻って胸がギュッとなる。
好きだった人がいた。
いつからかメールして時には長電話もした。今になってはメールの頻度も電話の頻度も思い出せない。話し下手だった私だけど、話は尽きなかったと思う。
夜一人で運転してたら花火が見えて、それを彼に話した。その時、彼も花火の音が聞こえた。そう言ってた気がする。
思い出す事が多いのに記憶は曖昧だ。
はっきり覚えてるのは、友達が遊びに来ている時にベランダに出て電話したこと、目が子猫みたいと言われたこと、数人で飲んだ時の誘い方が下手だったこと、彼には長く付き合ってる彼女がいたこと。
何日か、何十日か経って彼は彼女と別れた。私は違う人と付き合った。
月日は当たり前のように流れていった。
何年か経ってあの時私のことが好きだったと共通の知人から聞かされた。私たちは気持ちをお互い伝えないまま歳を取った。
恋は伝えないと透明になる、透明のまま。ってちょっと有名な人が言ってたけど納得した。この恋の答えがまさにそれだった。
ずーっと思い出してたわけではない。ふとした時にたまに思い出して切なくなる。もう出会う事もない。完全に透明になってしまった恋。こんな名前が付く恋も素敵じゃないか。
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