雑記 / ブループラネット

▼ブループラネット
https://www.youtube.com/watch?v=-2KzcaiyBFo

少し経ってしまいましたが、ブループラネットのMVの監督をつとめさせていただきました。
非常に多くの方に支えられながら、たくさん挑戦をさせていただいた一作となりました。本当に感謝しております。

 作品の具体的な内容についてはどこかで語る機会はいずれ訪れるだろうなと思うので、公開後の比較的新鮮な気持ちとして綴っておけたらと思って文章を書いています。


 今作はマネキンが人の感情から生まれるたったひとつの初音ミク(いわゆるうちの子概念だったりアーティスト像だったり)を「個」のミクの物語と捉えると、ブループラネットは真逆の「群」のミクについての物語だと考えて制作しました。一人一人が考える初音ミク像、それらの集合体とでもいうんでしょうか、カルチャー全体として浮かび上がってくる初音ミクの物語です。そして同時にクリエイター、リスナー問わず携わる人全ての人間の物語
なのだと思っています。
 この音楽の界隈の歴史を見つめれば見つめるほど、初音ミクという非人間的な存在が中心にはいるものの、そこには強烈な生きた人間そのものが魅力として存在している事を実感します。人の素朴な感性に美しさを見出し、賛辞を送る。そういった小さくも美しい積み重ねが今日まで続いてきた、それだけの事だと思います。それを二度とない16歳になる折に、彼女の命と呼び、忘れないように遺しておきたいなと思ったのが制作にの始まりの純粋な気持ちです。
 どうしてもこういった素朴な美しさは、当たり前すぎるゆえに世の中の移ろいや、人々の期待する大きな物語の前でかすみ、度々忘れ去られてしまうものですが、作品さえあればタイムカプセルを開くように思い出す事ができます。振り返っていくために人は石碑とかを遺すものだと思うので、この作品が未来から見たときに、一つのマイルストーンになればなと思っています。
   
 それらがうまく達成できたかは数年後に振り返ってからわかる事ですが、歳月を重ねていく事、積み重なっていくものを肯定しながら前を見据える眼差しの美しさを写し鏡であるミク自身から少しだけでも感じてもらえたら嬉しいなと思っています。
 あと、動画コメントでも結構触れてくれている方も多いのですが、とある映画のオマージュでもあります。古い映画ですが、いまだからこそ伝わるものも多い名作だと思います。生き方について非常に私も影響を受けていて、素晴らしい作品なので是非見て欲しいです。

 ここからは非常にわたくし事ですが、実はマネキンMVの絵コンテを描き始めたのがちょうど8月31日なので、そこから計算するとまるまる一年間「初音ミクとは一体何?」と問い続ける年でした。これだけ初音ミクについて考えたのは人生で2回目で、1回目は10周年記念の「Re:Start」のアルバムのADとデザインを担当した時でした(名義は当時所属していた会社のものです)。その時から悲喜交々な6年でしたが、自分自身の中で変わった事、変わらない事含めてこの一年をかけて気持ちを更新するつもりで臨んだので、自分の人生の中継地点としてもうまくおさまりのつく制作ができたのではないかなと感じています。

 そんなこんなで「個」と「群」と、この1年でだいぶ対極にあるミクの存在について200%で考えてきたので、若干燃え尽きで次は何しよう〜と考えている最近です。次も面白いことができたらいいなあ。

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