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VMwareはすでにレガシーになったという事実

いつもご覧いただきありがとうございます。

この記事は以下の2024年5月22日の sdxcentral の記事を意訳したものです。意訳後に記事についての考察を述べています。

How should Broadcom changes impact your VMware strategy?
Broadcomの変更がVMware戦略に与える影響


1. BroadcomによるVMwareの価格上昇

BroadcomによるVMware買収と、BroadcomがVMwareのライセンスモデルに変更を加えたことによって、長年のVMwareユーザーにとっては、新しい急激な運用変更を余儀なくされています。

Forrester ResearchのプリンシパルアナリストであるNaveen Chhabra氏は、これに対応するためのテンプレートを提供するレポートを最近発表しました。このレポートでは、Broadcomの変更が「製品マーケティングのクラシックな5つのP(製品、価格(およびパッケージング)、場所、プロモーション、人(パートナー))」すべてに影響を与えると述べています。

「あるVMwareユーザは、現在のVMware製品の使用状況と新しいライセンスおよびパッケージングに基づいて、500%の価格上昇を経験している」と報告しています。

Chhabra氏はSDxCentralとのインタビューで、これらの価格変更は予想されていたものであり、彼と彼のチームは「世界最大の企業の20%がVMwareスタックから離れ始める」と予測していたと述べました。

「彼らは一夜にして完全に置き換えるわけではありませんが、部分的に離れ始めるでしょう。私はそれが今まさに起こっているのを見ており、その予測が正しかったと主張するためにさらに5か月待つ必要はありません。それは起こっています」とChhabra氏は述べました。

レポートはまた、BroadcomがVMwareの流通構造を変更したことによって引き起こされた課題にも触れています。これには、BroadcomがAmazon Web Services(AWS)からVMwareの流通を引き継いだ最近の動きが強調されています。

「もう一つのVMwareユーザは、特定のチャネルパートナーと独占的に取引していましたが、そのパートナーがもはやVMwareの再販業者でなくなったため、新たなビジネス関係を確立する必要があります」と報告されており、「一つの変更でもVMwareとの関係において耐え難いものになる可能性がある」と述べられています。

2. VMwareへの影響を理解する

これらの課題を乗り越えるために、Chhabra氏の最初の推奨事項は、組織がVMwareインフラストラクチャへの正確な影響を理解することです。

「それがなければ、あなたは目隠しをしていることになります」とChhabra氏はSDxCentralとのインタビューで述べました。
「内部だけでなく、パートナー、プロバイダー、および VMwareの競合他社と議論を開始してください。その初期調査がなければ、あなたは目隠しをして飛んでいることになります」

これは、VMwareの広範な製品ポートフォリオに広く依存している大規模な組織にとって特に難しいかもしれません。

「VMware製品は、組織内の多くの異なるステークホルダーによって購入されてきましたが、すべてがCIOに報告されています」とChhabra氏は述べました。
「ネットワークチームについて考えてみてください。ネットワークチームはサーバーチームと話しません。彼らはストレージチームとも話しません。そして私たちはこれらすべてのチームのために製品を持っていました。そして今、新しいバンドルや新しい製品パッケージが発表されたとき、既存のすべての製品、たとえばネットワーキング用のNSXやストレージ用のvSAN、仮想化スペシャリストやサーバースペシャリストのためのvSphereなど、すべてが1つのパッケージにまとめられました。今や、内部でどれだけ使用しているかに関係なく、1つのパッケージを購入する必要があります。これは在庫を確認する必要があるもう一つの理由であり、最適化の機会を得ることができます」

この影響は、組織全体に広がるプラットフォーム依存性にも及ぶ可能性があります。

「クライアントと話すときには、依存関係があるため、VMwareハイパーバイザーを他のハイパーバイザーに単に置き換えることが簡単ではないかもしれないと伝えています」とChhabra氏は述べました。
「VMwareの強みはVMwareテクノロジーによるものではなく、ネットワーク効果によるものです。それは、VMwareが長年にわたって開発してきた北と南のエコシステムパートナーシップの両方によるものであり、それがVMwareのオプションに力をもたらします」

その最適化の機会を活かすためには、組織がVMwareの影響を正確に把握し、将来に向けてそのVMware影響を合理化するために必要なステップを踏む必要があります。

「私は多くのクライアントに最適化の機会を特定するのを手伝っています」とChhabra氏は述べました。
「これはVMwareにどう伝えるか、これは何を尋ねるか、これは何を伝えるか、そしてその後決定を下す方法です」

VMwareの競合他社はこの状況を非常に意識しており、積極的に代替案を提供しています。Chhabra氏は、CitrixやMicrosoftの最近の動きを例に挙げて、「市場に種を蒔いている」と述べましたが、これも潜在的な「混乱」を増大させています。

「VMwareのパッチを適用する方法は、CitrixやMicrosoftの環境にパッチを適用する方法とは異なります」とChhabraは述べました。
「彼らの哲学、パッチリリースサイクルなどが非常に異なっているため、スキルについても考える必要があります。」

3. VMwareを離れるのは賢明か?

これらのすべての要素がVMwareエコシステムからの移行を示唆する場合、Chhabra氏はタイミングが重要であると述べました。彼は、VMwareの問題が多くのクライアントの心に浮かんでいるが、「残念ながら、そのうち非常に少数のクライアントが積極的である」と述べました。

「ほとんどの他の技術決定者は、決定を下すまでに1年から6週間以内にいます」とChhabra氏は述べました。
「彼らはあまり時間が残っておらず、ほとんど全員が価格の影響を見ています。なぜなら、次の5、6週間または5、6か月以内に決定を下す必要があるからです。」

企業が代替案を模索する際に直面する可能性のある課題の1つは、他のベンダーがBroadcomの道を辿り、レガシーライセンスモデルを変更する可能性があることです。Chhabra氏は、これは価格の引き上げや割引の減少を意味する可能性があると述べました。

「なぜ競合他社がテーブルにお金を残すのでしょうか」とChhabra氏は説明し、これらのVMwareライバルが関心を持つパーティの流入を期待していることに注目しました。
彼は、パンデミック中の不動産市場で売り手が運転席に座っていた状況に似ていると述べました。

「VMwareには価格を引き上げるための堀があり、その競合他社は単にVMwareの顧客を引き付けるために価格を下げることはないでしょう」とChhabra氏は述べました。

このモデルは、BroadcomのVMwareのライセンス構造の変更により「新規顧客を獲得し、市場シェアを獲得するための重要な数年間の機会がある」と述べたNutanixのCEO Rajiv Ramaswami氏によって強調されました。

Microsoftは最近、VMwareユーザーがワークロードをハイパースケーラーのAzure VMware Solutionsサービスに移行し、実行するのを支援するための新しいライセンス特典と割引を提供しました。

この移行プログラムは、1年、3年、5年の期間で設定された価格で予約済みインスタンスへのアクセスを提供します。これらの予約済みインスタンスは、Azureでアプリケーションを実行するためのインスタンスの使用料を前払いする方法であり、従量課金モデルよりもインスタンスごとに低い料金が設定されています。

Microsoftは、新しい1年の予約インスタンス期間を購入する顧客に対して、Azure VMware Solutionの20%割引を提供することで、予約プッシュを奨励しています。この購入は年末までに行われる必要があります。5年間のオプションは6月末までの購入のみ可能です。

Microsoftはまた、新しい予約インスタンスプランを購入する顧客に最大120,000ドルのAzureクレジットを提供しています。このクレジットは、Azure VMware Solutionまたは他のAzureサービスに使用できます。

Chhabra氏は、BroadcomのVMwareに対する動きが市場に混乱を引き起こし、すでに過労状態にある企業IT部門にストレスを追加すると述べました。これは、企業がそのコストを受け入れる方が理にかなっていると感じた場合にはBroadcomに利益をもたらし、代替案を模索する時間をかける場合には競合他社に利益をもたらす可能性があります。

「人々はそれに慣れる必要があります」とChhabra氏は述べました。「それはまた別のベンダー、また別の現実であり、スムーズな道ではないかもしれません。それにはカーブや曲がりくねり、アップダウンがあるかもしれませんが、最終的には、そのコストを受け入れることができなければ、移行する必要があります。」

以上が、sdxcentral の記事の意訳になります。

この記事の考察(今後どうなるのか?)

VMware ESXによるサーバ仮想化が、検証・テスト環境ではなく本番環境で利用され始めたのは、2004年頃 ESX 2.5くらいからです。

つまり、すでに20年が経過しているため、ハイパーバイザー市場としては、これ以上の成長は見込めず、ビジネスとしては維持から縮退(終焉)に向かい始めていました

ハードウェアのスペックが上がったことや、昨今のクラウド(AWS、Azure、GCP)の利用が増えたことによりオンプレミスの物理サーバの減少に伴うライセンス販売減が大きな原因です。

しかしながら、VMware自体も、ESX以外のネットワーク(NSX)、ストレージ(vSAN)、あるいはエンドポイント(Workspace ONE、Carbon Black)、SD-WAN(VeloCloud)など、M&Aで非常に良い製品を手に入れていたのに関わらず、大きな成長が見込めないESXにしがみつき、これらを全く活かすことができず、ESXとの相乗効果すら生み出せなかったことが本当の原因です。

VMwareは、今後もどんどん値上げが続きます

VMware買収で、Broadcomを初めて知った方も多いのですが、今VMwareのライセンス変更や値上げをやっているのは、これまでのBroadcomを知っていれば当然のことです(いつもの事です)

Broadcomは、2018年に、CA Technologiesを買収、2019年には、Symantecを買収しています。
Broadcomという会社は、成長が伸び悩んでいる企業を買収し、その製品のライセンス体系を変更し、価格の大幅な値上げして成長をし続けている企業です。

まず、買収された企業の社員については、即クビ(解雇)です。
CAもSymantecも同じで、もちろんVMwareも同じです。
日本国内でも、昨年(2023年末)時点で多くの社員が解雇になっています(Carbon Balckの日本社員は全員解雇)
つまり、国内で同じ販売体制やサポート体制を維持することはできません。

次に、VMware製品を使ったクラウドサービス事業を行っている企業も、絞り込みが行われましたので、今後クラウドサービスを提供できなくなる企業がたくさん出てきます。
運よくクラウドサービスが継続できることになった企業についても、今後VMwareの料金が大幅に上がるので、サービス料金がどんどん上げざるを得なくなってきます。

さらに、VMwareを簡単にやめれなくなります

VMware製品をやめれば良いと思いますが、そう簡単には行きません(今後、行かなくなります)
ライセンス体系変更・値上げの次には、Broadcomが買収した企業(CA、Symantec)の製品を含めたセット販売規制が行われることになります。
つまり、VMware ESXを解約したくても、ESXだけ解約することができなくなります。
NSXやvSANなどはもちろん、Workspace ONE、Carbon Black、VeloCloudを一緒に解約しない限りは、ESXを解約できなくなるということです。
さらに、CA、Symantecも含まれますので、Broadcomの製品すべてをいっきに解約するしか手がなくなるのです。
特に、メインフレームでBroadcom製品を利用されている場合は要注意です。

VMwareが、Broadcomに買収されたということは、そういうことです。

つまり、すでにメインフレームと同じく、レガシーテクノロジーになった(なり始めている)ということなので、メインフレームと同じく、レガシーテクノロジーを使い続けるのであれは、今後は膨大なコストが掛かるよ、ということです。

現状であれば、Microsoft(Hyper-V)やNutanixへの移行が可能ですが、20年以上経過したハイパーバイザーを使い続けるリスクを、そろそろ企業として検討すべき時期に来ていると言えます。

最近は、クラウドの技術しか知らないITインフラ・エンジニアが非常に多くなってきています。
※実際には、クラウド"技術"を習得しているのではなく、単なるクラウド"操作方法"を習得しただけのポチポチ・エンジニアですが、、、

つまり、物理的にサーバを組み立てて、ハイパーバイザーを導入すること自体が古くなっているのです。

じゃあ、すべてクラウドにすべきなのか?と言うとそうではないと思いますが、今後は、新たなオンプレミス環境と、AWSだけに集約するのではないマルチクラウド環境を前提したハイブリッド環境が、今後は主流になると考えています。

VMware(サーバ仮想化)が流行し、ハードウェアは、DellでもHPでもNECでも何でもよくなったように、クラウドもIaaS、PaaSは、AWSでもAzureでもGCPでもOCIでも何でもよくなります。
さらに、コンテナが進めば、オンプレ・クラウドについても、何でもよくなるので、古いテクノロジーに捕らわれずに、新しいテクノロジーへの取り組みを積極的に進め、本質をとらえることが一番重要になります。
AWSも、2006年3月にサービスを開始しているので、すでに18年になります。

いずれにしても、Broadcomの方針による、VMware値上げや、セット販売による悲鳴は、今後も当分の間は続くと思いますが、テクノロジーの本質をとらえ、将来に向けた正しい判断をすることが重要です。

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