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Vシネ風のシナリオを書いてみた。タイトルは「皆殺し、ふぁっきんふぁざーず」※導入部のみ

《概要》

橋本一監督の『探偵はBARにいる』に触発されて2,012年頃に書いたものでしたが、どこかの何かにコンペに出そうかと思ってホカしていました。
したがって、AV業界の描写等、今ではまったく使えないものになってしまいました。
1月中にでも全編を掲載する予定です。

《あらすじ》
研三は札幌のエロ系弱小プロダクションの社長。
ある日のこと、研三は何かと頭の上がらない、金融屋の筒井から「(ボーカリストとして)育ててほしい」と、雪子という女性を預けられる。
気乗りしない研三だったが、雪子の歌声を聞いたとたん、元ミュージシャンの血が滾るのを感じ、筒井の本意がわからないまま、レッスンを始める。
なぜか聞き覚えのあるその歌声……程なく研三は、雪子が、そのむかし釧路でバンドを組んでいたときのボーカルだったアキナの娘であることを筒井から知らされる。
”まさか、雪子の父親は……”訝る安川。
やがて組織犯罪組織を巻き込む、”大復習劇”がこの時すでに、始まっていたことに、研三も筒井も気付いていなかった……。

《人物》
安川研三(42)芸能プロダィクション社長
山崎マヤ(本当は37)デリヘル嬢。
奥野雪子(19)シンガー志望の娘。
筒井(44)暴力団の舎弟企業の金融会社社長。
奥野努(42)元船員。雪子の養父。
安部 道警本部捜査4課(組対)刑事
桑原 (61)暴力団員
黒木 (54)同上
加賀美(57)元暴力団員 
デブのアキラ 京都から来た仕事人。
ノッポのヒロシ 同上

《本文》

◯オープニング
  若い女の嬌声『パパ、パパ、パパッ、もう、パパったらぁ』

◯『芸能プロダクション』応接室
  今にも泣き出しそうな顔の安川研三(42)と、笑顔の筒井(44)、  
  ソファーに並んで座り、AVを観ている。

AVの音声『アッアッアッ、パパ、パパぁッ』
筒井「ホント17歳には見えないよ。このコ。なぁ、ケンちゃんよ」
研三「スイマセン。マジ、スイマセン」
筒井「この子、姉貴の運転免許証借りて来たってんだろ?やるよね。まあケ
 ンちゃんも被害者ってワケかも知れねーけどさ。でもマズイよね。危うく
 書類送検。いや実刑だよねぇ」
研三「今後は十分に気をつけます。はいッ」
筒井「(研三の顔をガン見)あっ」
研三「なんですか」
筒井「ヤバイわケンちゃん」
研三「え?」
筒井「若いのが『このラーメン、ガチでヤバイッす』の肯定形のヤバイ…… 
 じゃなくて」
研三「じゃどんな否定形のヤバイなんです」
筒井「女難のヤバイ系」
研三「まじっすか」
筒井「やっぱ、ホモ系も適当にやっか」
研三「アレはもうイイですよ」

AVの女の声『アッアッ、アッ〜』
  研三と筒井、テレビを凝視。
筒井「確かになぁ。どう見ても23、4。いやぁ30過ぎてもこんな感じに 
 バケてるのいるよな。怖いねぇ、オンナはさぁ」
   
 研三、鼻を啜り始める。

筒井「で、ケンちゃんは何で泣いてんの?」
研三「だってこのコ、どんな辛い人生歩んできたのかって思ったら」
   山崎マヤ(37)がコーヒーを乗せたお盆を持って入ってく
   る。
マヤ「筒井社長、コーヒーは砂糖三ツよね」
筒井「オヤ、マヤちゃん。今日、お店は?」
マヤ「今日は超遅番。それでダーリンといちゃつこうと思って事務所に
 寄ったら筒井社長が来ちまったダッチャ」
筒井「マヤちゃんは頑張り屋さんだよな。ケン坊には勿体ないよ。どう
 今度俺と遊ぼーか?」
マヤ「じゃ、指名で呼んでよフルオプで」
筒井「エライ。そのプロ根性。なあマヤちゃん(テレビがを顎で指し)
 このオネエちゃん幾つに見える」
マヤ「17か8」
   マヤ、スタスタと応接室を出て行く。
   研三と筒井、顔を見合わせる。
研三「ホント、オンナは怖いスね」
筒井「なあケンちゃん」
研三「なんですか」
筒井「焼き肉、食いに行こうや。暑気払い」
研三「イイですね」
筒井「お前さんの奢りだよ」
研三「はあ」

◯札幌・遠景(夕)
   初夏の札幌。

◯ファミレス・外観

◯ファミレス・店内
   研三と筒井、向かい合わせで座っている。
研三「で、ナンでファミレスなんですか」
筒井「まあ、いいから」
   ウェイトレス、席の横に立つ。
雪子の声「チャッピーズにようこそ」
   制服姿の奥野雪子(19)、仁王立ち。
筒井「お、ユキ、元気してた」
雪子「お疲れです。社長」
筒井「二日ぶりだよな」
雪子「で、オーダーは」
筒井「生ビール、二つ」
雪子「他にご注文はよろしいでしょうか」
筒井「欲しいのはユキの笑顔」
   雪子、筒井の耳元で何事か囁く。
筒井「(嬉しそう)もう、ユキちゃんたら」
雪子「(真顔に戻る)メニューお下げします」
   雪子、スタスタと去って行く。
筒井「ッたくドSでさぁ困ったもんよ『パパ、
 シバいちゃうぞ』だって」
研三「パパ?」
研三「二人だけの時はそう呼ばせてんの」
研三「筒井さんの……(小指を立て)っスか」
筒井「まあその話も含めてな、焼肉ナ」
  
◯焼肉屋・店内
   筒井、ジョッキのビールを飲み干す。
   研三、サワーをチビチビ飲んでいる。
研三「社長?」
筒井「なんだよ、ケンちゃん」
研三「エリカちゃん。これからどうなるんですかね」
筒井「誰だそれ」
研三「さっきの『アッアッ、パパぁ』です」
筒井「大丈夫。損失補填はきっちりやってもらってるから」
研三「ソープに沈めたんですか?」
筒井「お前、俺がそんな鬼畜だと思う訳? お前はさんはホント馬鹿。
 釧路でヤンチャしてた頃と全然変わって無いねぇ」
研三「スンマセン」
筒井「だってあの子は未成年よ」
研三「ですね」
筒井「だから、とりまブルセラ。あれ、エリカつうのは本当は姉ちゃんの方
 だろ?」
研三「そうでした。エリカは姉ちゃんの本名でエリカちゃんの本名は平田ノ
 リコです」
筒井「ややこしねぇ。まあとにかく二人の母親には了解もらってるから」
研三「はぁ」
筒井「まあ、利息くらいは稼げるだろさ」
研三「はぁ」
筒井「いずれはあの面とオッパイだもの。ピン女優になれっだろ」
研三「人生決まっちゃったんですかね。あの子の」
筒井「だってさ、ウチら500も損害出してる訳だしさー」
研三「500? ウチの損害は制作会社への補填とか入れてもせいぜい
 300ですよ」
筒井「あのなケン坊」
研三「はい」
筒井「あの子のねーちゃんはフリーター。母ちゃんはナマポで、父ちゃ
 ん行方不明」
研三「そうなんですか?」
筒井「ああ。ツイッターに書いてあった」
研三「筒井さん、そういうとこ流石です」
筒井「お前さぁ、もう少しタレント管理しっかりやっとけよ。ナンも調
 べてないだろ。肝心要のところをよ」
研三「スンマセン」
筒井「まあさ、こうやって家族三人が路頭に迷わない様に姉ちゃんにま
 で仕事世話したんだもん、感謝されないと。俺」
研三「ネーちゃんってエリカじゃないや、ノリコちゃんの姉ちゃんの 
 エリカ?」
筒井「そうだよ。シン・エリカ」
研三「どこにです」
筒井「マヤちゃんの処でだよ」
研三「デリヘル、すか……」
   筒井、ロースターの煙を手で払う。
筒井「それよりケンちゃん」
研三「どうしました」
筒井「店、変えようや」

◯市内のライブハウス・店内
   大音量のパンクミュージック。
   奥のVIP席に陣取る、筒井と研三。
   二人、大音響に押され怒鳴りながら会話をしている。
筒井「なあ、ケン坊、血が沢尻エリカだろ」
研三「はい、血が沢木耕太郎です」
筒井「誰、それ?」
研三「何でもないです」
筒井「思い出すよなぁ釧路のライブハウス。
 ケン坊の『皆殺し糞転がし』」
研三「『皆殺しファッキンファザー』です」
筒井「オレんとこの『人肉ウッシシ』との対バン。伝説だったよなぁ」
研三「『人肉シシカバブ』です。筒井さんとこのバンド」
筒井「そうか。そうだったな。まあ、俺なんかオンナ、コマすのと喧嘩
 したくてバンドやってた様なもんだからよ」
   男性ヴォーカルのバンドが演奏を終え、
   舞台に若い女性が立ち中島美嘉の『Glamorous sky』を歌い始める。
筒井「なあ、ケン坊、俺たちでもう一度あの日に帰んねーか」
研三「えっ?」
筒井「嘘だよ。嘘。それよりイイと思わねーか(ステージを顎で指す)あの
 コ」
   ステージ上で熱唱する雪子。
研三「あ、あの子、ファミレスの」
筒井「おっぱいもケツも冴えねえけど、歌はナカナカだろ?」
研三「(聞き入る)……悪くないです」
筒井「似てねーか」
研三「(聞こえていない)……」
   研三、雪子の歌を聴き込んでいる。
   雪子の熱唱が続く……。

◯走行中の筒井のベンツ・車内(深夜)
   研三と筒井、後部座席に並んで座っている。
筒井「ヨカッタろうが、ユキちゃん」
研三「ええ……」
筒井「なあケンちゃんよ」
研三「なんスか」
筒井「似てなくね?」
研三「え?」
筒井「だからさユキちゃんってさ、誰かに似てなくねかって聞いてるの
よ」
研三「……そういえば……」
筒井「誰よ」
研三「……『東京パフォーマンスドール』初代リーダーの木原さとみ」
筒井「レアすぎてワカンねぇよ!」
研三「じゃぁ……」
雪子の声「もう、いいですよ」
  雪子、助手席に座っている。
  バックミラー越しに視線を研三に。
雪子「もうイイですよ。筒井さん」
筒井「ゴメンねユキちゃん。コイツ本当に鈍くて」
雪子「そうですね」
研三「ハイっ?」
   雪子、助手席から振り返って研三をじっと見つめる。
雪子「初めまして。安川さん。私、奥野アキナの娘の雪子です」
研三「えっ」
   研三と雪子、見つめあう。
研三「……(ボーっとして)」
筒井「待っててなユキちゃん。今ケンちゃん、頭ン中で回想シーンがグルグ
 ル周ってっから」
雪子「大丈夫スか、このヒト」
筒井「大丈夫。全然大丈夫。いつもこうだから(運転手に)あ、加藤、その
 信号の先でユキちゃん、降りっから」

○深夜の国道沿いの歩道
   筒井のベンツが停車。
   雪子が降りる。
   後部座席のスモークガラスが降りて筒井が顔を出す。
筒井「明日のレッスン場、分かってるよね」
雪子「はい社長、オヤスミなさい。あ、安川さんも」
  研三、身を乗り出してきて、
研三「じゃ、明日ねヨロシク、ユキちゃん」
   筒井のベンツ、走り去る。
   雪子、去ってゆくベンツを見ながら、
雪子「どーいたしまして……『皆殺しファッキンファザー』、
 こちらこそヨ・ロ・シ・ク」
   仁王立ちの雪子、遠ざかるベンツに向かって中指を立てる。

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