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創作のヒントは「NO MORE 映画泥棒」?! 『異形頭さんとニンゲンちゃん』誕生の裏側に迫る【漫画家・三毛たま×担当編集・H】

皆さんは、『異形頭さんとニンゲンちゃん』という漫画をご存知でしょうか。現在、デジタル配信サービス「ナンバーナイン」(以下、「ナンバーナイン」)を活用して人気連載中の同作は、非商業連載としてpixivで連載を始めたのちに人気に火がつき、いまや連載版の電子書籍が既刊8巻で累計80万DLを突破(2024年6月24日時点)するヒットを飛ばしています。

「アメトーーク」(テレビ朝日)のマンガ大好き芸人(2024年6月13日放送)でも紹介されるなど今話題の『異形頭さんとニンゲンちゃん』ですが、この度紙単行本が6月21日に発売されました!

そこでこのnoteでは、単行本発売を記念して、作者の三毛たまさんと担当編集・Hのインタビューを前後編でお届けします。

なぜ異形頭の主人公が生まれたのか、個人連載から「ナンバーナイン」連載に切り替えた理由とは何か、担当編集・Hの凄さとは一体……。前後編を通して制作の裏話を聞いてみたいと思います!

*   *   *

漫画家なのに、描きたいものが描けない。”商業連載”のフラストレーションから生まれた『異形頭さんとニンゲンちゃん』

ーーまずは三毛たまさんの経歴や漫画家としての活動をお伺いさせてください。

三毛たま
『異形頭さんとニンゲンちゃん』という異形頭の世界に転移した社畜OLが、異形頭さんにペットとして養ってもらう……という、なんともニッチな作品を「ナンバーナイン」で連載しています。有難いことに、先日6月21日に紙書籍化しました! 

\6月21日発売/

幼い頃から絵を描くこと、漫画を読むことが好きで、自然と漫画家になりたいという夢を抱いていました。学生の頃は二次創作した作品を雑誌によく投稿していましたね。社会人になって一時、創作活動から離れてしまったのですが、ライフスタイルの変化もあって、二次創作を再開。そのタイミングである出版社から声をかけていただき、2020年に商業デビューしました。

ーー商業連載時代はどんな作品を描かれていたのでしょうか。

三毛たま
とある出版社さんの立ち上がったばかりのレーベルで描かせてもらっていたのですが、今とは全く違う作風です。ただ、イケメンを魅力的に描くのが自分には難しくて、商業は向いてないのかもと感じました。

ーー漫画家になりたいという夢は叶ったけど、好きなものが描けない、と。商業連載となると読者が求めるテーマや絵柄を描いてほしいという出版社側の意向があるのは理解できます。それが向いている漫画家さんもいらっしゃいますが、三毛たまさんは向いていなかったのかもしれませんね。

三毛たま
商業連載のお話をいただいたときは嬉しかったですし、いい経験になるかなと思って挑戦してみたものの、やはりそう簡単にはいかなくて。

二次創作や個人連載などずっと趣味として自由に描き続けてきた自分にとって、求められたものを描くという商業連載は完全に「仕事」。仕事は仕事、趣味は趣味なんだと痛感しました。

フラストレーションが募る一方で「好きなものを好きなように描きたい!」という思いも同時に芽生えてきたんですけど、そこで描き始めたのが『異形頭さんとニンゲンちゃん』です。

ーーそんな思いがあったとは…!ところで、”異形頭”というキャラクターテーマはどういう着想から生まれたんでしょうか?

三毛たま
もともと、人外と人間のお話を描いてみたかったんです。人外でパッと思いついたのが、映画館に映画を観に行くと本編が始まる前に「NO MORE 映画泥棒」のカメラ頭の方。前から異形頭のキャラクターも描きたかったこともあって、そこで描きたいものが合致しました。

あとは転生系のテーマが流行っていたので、そういう要素は取り入れようとか考えながら描き始めました。結構、思いつきのアイデアです。

ーーそうして、商業連載とは別に、また個人としての創作活動を再開されたんですね。

三毛たま
はい。もともと利用していたpixivアカウントを作り直して、2022年の秋ごろにゼロから『異形頭さんとニンゲンちゃん』をアップし始めました。

最初は、「異形頭と人間のお話は好きな人も確実にいるはず!」と言うくらいの気持ちでした。万人に受け入れられるものではないかもしれないけど、とにかく誰かには響くかなという思いで描き続けています。

ーー反響はいかがでしたか?

三毛たま
それが、思いのほか良かったんです......!

主人公・ラズのメカニックでスタイリッシュな見た目は感情が読みづらく冷たい印象を与えるのですが、その分話し言葉や仕草で感情表現が豊かなキャラクターになっていて、可愛いけどちょっぴり気弱なヒロイン・ちかとのバランスがウケたみたいです。

pixivは漫画が好きで描いたり、絵を見に来たりしている人が多いので、そういう癖を持っている人に刺さったんでしょうか。何より自分が描きたいものを描いて、それがちゃんと伝わって評価されていることが嬉しかったです。

pixiv人気連載作品が「ナンバーナイン」連載に切り替えたワケ

ーーここからはナンバーナインの担当編集・Hさんにも加わってもらい、作品にまつわるお話を詳しく聞いていきたいと思います。まず、Hさんが『異形頭さんとニンゲンちゃん』を読んだときの印象を聞かせていただけますか?

担当編集・H
僕は「尊い漫画をやらしい雰囲気にする人」というSNSアカウントを運用していて、Xに投稿される漫画をよく読んできました。『異形頭さんとニンゲンちゃん』もその一つで、連載当初の三毛たまさんのpixivのブックマーク数はたしか5000前後くらいあり、pixiv連載漫画としてはファンも少なくなかったのを覚えています。

人気作もたくさんあり作品数も多い異世界転移ものでありながら、異形頭という設定が非常にニッチだったんです。しかし、”異形頭”という顔が見えないキャラクターではありながら、感情がしっかり引き出されていて、読者に刺さっているのがわかる。そんな観点から、作品としての高いポテンシャルを感じていました。

ーー『異形頭さんとニンゲンちゃん』は2023年9月から「ナンバーナイン」での連載を開始しています。

担当編集・H
2023年3月頃に僕からお声がけさせていただきました。

電子コミックの普及によって読者が漫画を手に取りやすくなった一方で、クリエイターさんが一人でたくさんのストアに配信し、 まだ見ぬ読者に漫画を届けることは難しくなっている事実もあります。十分おもしろいのに、それ通りに評価されていない作品のおもしろさを最大限に引き出し、より広く届けるサービスこそデジタル配信サービス「ナンバーナイン」です。

僕は『異形頭さんとニンゲンちゃん』を読んだときに高いポテンシャルを感じましたし、事実、pixivでは根強い人気があった。一方で当時の三毛たまさんのXのフォロワー数は400〜500ぐらいで、まだまだこの作品の面白さを届けられると感じたんです。

ーー連載の話を聞いた時、三毛たまさんは率直にどう感じましたか?

三毛たま
まさかって感じで驚きました。本当に自分の描きたいように好き勝手描いてたので、「ありがたーい」と思って(笑)。

じつはそれ以前も『異形頭さんとニンゲンちゃん』を見て「別の作品を描いてほしい」というお話はあったのですが、『異形頭さんとニンゲンちゃん』を広めたいと言ってくれたのはHさんがはじめてで、とても嬉しかったです。

ーー個人連載からナンバーナイン連載に切り替えるにあたって、葛藤や不安はありませんでしたか?

三毛たま
むしろ頼りたかったので、葛藤や不安はありませんでした。

私生活も忙しい時期で、自分でスケジューリングをするのに限界を感じ始めていたタイミングだったんです。だからこんなにもありがたいお話はないなと思って、「頼れるところは存分に頼らせてもらおう!」と思い切ってお願いすることにしました。

おかげさまで昔とは異なり、自分の描きたいものを楽しく描き続けることができています。

担当編集・H
そもそも人気があった作品なので、僕が担当させていただくにしても、三毛たまさんの作家性を生かすことを大切にしています。

三毛たまさんが好きなものをのびのび描くのが一番良くて、雑音が入るのだけは良くないなと。だから担当編集としては、三毛たまさんが好きに描き続けられる環境を準備すること、そして「ナンバーナイン」だからこそできることを通じて『異形頭さんとニンゲンちゃん』を広めるお手伝いを精いっぱいさせていただいています。具体的には、これまで三毛たまさん一人ではできていなかった、pixiv以外のチャネルでの発信などです。

三毛たま
絵を描くしか脳がない自分にとっては、SNSは右も左もわからず……。なので、Hさんから学ぶことは多く、とても助けられています。

ーー後編では「ナンバーナイン」だからこそできるサポート体制や普段の二人の打ち合わせの様子、作品づくりについて迫ります。

(後編へ続く)

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編集・構成: ころく@ナンバーナインCXO
執筆: Moriya Ayuka


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