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響け!ユーフォニアム3、12話が賛否両論な件


※ネタバレを多く含みます。また、このような長文を書く機会があまり無くとても拙いです。



先日、アニメ「響け!ユーフォニアム」が約9年の時を経て幕を下ろした。

沢山の名シーンがあった。私は何度も見返しては泣いた。

それは3期に入ってもやはり変わらず、大好きなアニメを見終わった後の、あの喪失感の様な感覚を久しぶりに味わった。

この9年の間に、痛ましい事件もあった。
もう、あの北宇治の彼女達には会えないのかも知れないと不安になった人も居たのでは無いだろうか。

そんな時に発表された「ユーフォ、再始動」

嬉しかった。早く彼女達に会いたいとワクワクしたのを覚えている。

そして、アンサンブルコンテストを経て
2024年、久美子達は3年生になって帰って来た。

3期12話の原作とは違う展開

とても驚いた。見せ方もまた衝撃的で、


全国大会でのソロメンバー発表の際、黄前久美子の名前が呼ばれた。
ここまでは原作と同じ流れだった。だが次の瞬間、
黒江真由の名前も呼ばれたのだ。
本来あり得ない出来事に、部員達は動揺していた。
ここからの展開は、原作とは決定的に違う展開であり、原作を知っている人も、この時の部員達と同じように驚いた事だろう。
私も衝撃を受けた。


これで、原作を知っている人も知らない人も、同じ状態で
久美子を、真由を、見ることになったのだ。

私はこの12話がとても好きで、3年間の物語の中でもおそらく最も感動した一話だと思う。

原作から展開を変えるのは難しい事だったと思う。そこには葛藤や見えない壁、何人もの大人への説得があった上での決定だったことだろう。
それを成し遂げてくれたおかげで、こんなにも良いアニメを観ることが出来た事を、私は心から嬉しく思う。

だが、ネットの反応は様々だった。

批判的な意見も

約9年間この時を待っていたファンの中には、3期12話の展開が気に入らない人も居るようだった。
作品への感想は何においても人それぞれで、どんなに良いアニメや映画にも批判的な意見はあるだろう。
それだけ「響け!ユーフォニアム」が愛されているのだともとれる。
しかし、中には理解出来ない物もあった。

書いていたらキリがないのでここでは挙げないが、制作に携わった個人を攻撃するような投稿もあり、見るに耐えない物だった。
ただその中でも、どうしても引っかかる意見がいくつかあった。またそれは、このnoteを書こうと思ったきっかけにもなった。

「結局、真由は何がしたかったんだよ。辞退したいなら初めから辞退すれば良かっただろ。」
「そもそも真由は何でわざわざ北宇治を選んだんだよ。合奏が好きなだけなら北宇治じゃなくても良いだろ」


本当にアニメを見た?
何か別の事をしながら流していただけじゃないのか?
と聞いてみたい内容である。

だが同時に、こう言った意見ばかり見ていると不安にもなった。

私が感じたあの感動は間違っていたのだろうか。
何かを勘違いして、それがたまたま都合の良い様に重なり、勝手に感動しているのか。

1人では拭えないこの不安を紛らわせる為に、3期12話の私なりの解釈を纏めた。

本題:3期12話と、それまでの話のおさらい

3期12話の後半は、1期の11話での麗奈と香織の再オーディションの話と非常によく似ている。
なので、その辺りの話も含め所々割愛しながら振り返る。これを読んでいる人がもし居るのであれば、その時のシーンを思い出しながら読んで欲しい。またこれは、上にも書いたが私なりの解釈であり、本来の意味とは違うかもしれない。


3年生の香織は、2年生の時点で吹奏楽部において誰よりも上手かった。
だが当時の部の方針は、大会では上級生が優先で吹く事になっていて、ソロは香織ではなく、ろくに練習もしていない3年生が吹いていた。
それどころか、当時起きていた3年生による1年生への無視をやめるよう頭を下げ、
それらによって部を辞めようとする1年生を止める為に、コンクールメンバーを辞退までしようとした。
そんな香織だから、当時を知る同級生や下級生から慕われていた。

しかし、香織にとって最後のコンクールのオーディションでソロに選ばれたのは、1年生の麗奈だった。

その事について、滝先生と麗奈は知り合いだから贔屓したという疑惑が部の中で起き、滝先生への不信感が広がっていった。

それを受けて希望者には、部員全員の投票による再オーディションが行われる事になった。
そこで香織が手を挙げ、麗奈と香織のソロパートを懸けた再オーディションが決まる。

再オーディション直前
久美子と麗奈は
「音で決めるべきだ」「上手い人が吹くべきだ」
と誓う。
皆から慕われ、再オーディションが決まった後ですら麗奈を気遣う香織の事を、たとえ押しのける事になったとしても、麗奈が吹くべきだ。人に流されてはいけない。香織より、麗奈の方が上手いのだから。

この実力主義の誓いを、3年生になった3期でも貫いている。

しかしそれを3期10話であすか先輩は「黄前ちゃんのわがまま」と表現する。
大会毎のオーディションで1番上手い人を決めて、その人に吹いて欲しい。選ばれないならその理由を滝先生から説明して欲しい。
それら全てを「それって黄前ちゃんがスッキリしたいだけでしょ」と言った。

3期12話、2年前と同じ場所、同じシチュエーション。
再オーディション前の真由と久美子の会話。

真由「私の場合は、私のせいで、友達が音楽辞めちゃったから。
〜中略〜だから、心の底から皆と楽しく吹きたい。そう思ってる。
その為なら、どうでもいいの。オーディションとか、金賞とか。」

しかしそれに対して

久美子「コンクールメンバーじゃなくても皆と楽しく吹ければ良い。でもわざと下手には吹けない。
頼まれて辞退は出来ても、自分から降りる事はしたくない。演奏に、嘘はつきたくない。
知ってるよ。少なくとも真由ちゃんの演奏は、どうでもいいって思ってる人の演奏じゃないよ。」

と真由の本心を言い表す。

部の雰囲気を壊して、誰かを悲しませるような事はしたくない。
でも自分の演奏に嘘はつきたくない。

だから久美子に頼まれて辞退するならそれで良いと考えていた。

これは真由の「わがまま」

対して久美子は、
2年前に麗奈と誓った
「音で決めるべきだ」「上手い人が吹くべきだ」
という実力主義の誓い、あの時の気持ち、3年間信じてきた事を裏切りたくないという思いがあり、
だから真由にも
同情も、心配も、遠慮も要らない。自分の信じるものの為に吹いてほしい。
と願った。

これは久美子の「わがまま」

結局真由は久美子の「わがまま」を受け入れ、オーディションに臨み、選ばれた。

真由が選ばれた直後、部員達は動揺していた。
久美子を心配する声が上がり、ざわめき出す。
それを定まらない視線で見た真由の手は震え、皆の思いを壊してしまった後悔や、申し訳ない気持ちが混ざったような顔で俯く。
それを止めたのは、久美子の演説だった。

この結果が「北宇治」のベストだ。
真由は「北宇治」全員で選んだソリストだ。
これで全国金賞を取ろう。

これによって部は再び纏まり、前に進む事になる。

その後の、大吉山での麗奈と久美子のシーン。
麗奈は1番と2番、どちらが久美子かを聴きわけていたと話す。
アニメ3期の間、ずっと久美子と全国でソリを吹きたいと言っていた麗奈は、どちらが久美子か分かった上で、念願の「久美子とのソリ」を選ばず、実力で選ぶという2年前の誓いを貫いた。
久美子はそれが何より嬉しく、同時に、それを嬉しいと思う自分に胸を張りたいと言った。



私の感想


「オーディションやコンクールに興味がない。」
「みんなと楽しく吹ければそれでいい。」
「ずっと北宇治で頑張って来た人を押しのけて私が選ばれるのは申し訳ない。」

3期の間、真由はこんな事を何度も言っていた。しかしこれらは全てが本心という訳では無いのが12話で話されていた。
コンクールメンバーに選ばれなくても、皆と楽しく吹ければそれで良い。と言うのはある程度本心なのだろう。しかし、コンクールメンバーに選ばれたくない訳ではないのだ。
真剣に音楽をやっていて、その過程で友人が音楽を辞めるというトラウマを抱えた。
もうあんな思いはしたくない。
でも、それと同じくらい、
大好きな演奏で、自分から手を抜くような事はしたくない。
そんなチグハグな感情が、私はとても「北宇治」らしい人物だと感じた。

真由の心をずっと縛っていたのは「転校生」という鎖で、久美子の演説と、部員達の拍手によってそれが解かれたのでは無いだろうか。
私はあのシーンによって、
真由が「転校生」ではなく、「北宇治」のメンバーとしてソリストに選ばれたように思えた。

大吉山でのシーンで、麗奈があの場でも2年前の誓いを貫いた事が分かる。1番か2番かを答える直前、2年前の久美子との回想が入ったのはその為だった。
そして久美子は、それを嬉しいと思える自分に胸を張りたいと言った。
1人の奏者としての成長だけでなく、滝先生との回想からの演説、そしてあの大吉山でのセリフによって、久美子の大人への成長を表していると私は思っている。

正直に言うと、1年生の時から久美子達を見て来た身としては、
なんでも良いから、どんな展開でも良いから、久美子と麗奈に笑顔でソリを吹いて欲しかった。

2年前の麗奈と香織の再オーディションで、ソロが麗奈に決まった時、
香織があまりにも可哀想だとも思ったが
麗奈の方が実力が上なのだから、麗奈が吹くべきだと。
それが1番、北宇治の為になるのだと思うようにした。
にも関わらず3期12話で久美子が選ばれなかった瞬間は、その気持ちが大きく揺らいだ。
合理的な理由なんて無くていい。
久美子に報われてほしい。
という感情から「どうして久美子じゃないんだよ」と思ってしまった。
あの時の優子も、同じ気持ちだったのだろうか。
私は自分が思っていたよりこの「久美子」という人物が好きだったんだと思い知った。

だからその後の

久美子「奏ちゃんは実力主義派じゃなかったの?」
奏「それとこの気持ちは別です」

の台詞はグッとくる物があった。
思い返せば3期の奏の台詞は、視聴者の気持ちを代弁しているかのような台詞が多く、感情移入がしやすい構造になっていたのかも知れない。
だとすれば私は見事にその術中にハマっていた。

私が3期12話で好きなところ


12話は心を揺さぶられるというか、今風に言うとエモいシーンが多くて、何度も見返した。

再オーディション前の会話のシーン。
2年前、麗奈が座っていた1番右の席に、今度は久美子が座っていた。
立ち上がった後の
久美子「負けるつもりは無いから」
も2年前に麗奈が同じ場所で久美子に言った台詞を意識してしまう。

そして再オーディションのシーン。
2年前選ばれなかった香織と同じ、向かって右側に久美子が居て、2年前選ばれた麗奈と同じ、向かって左に真由がいる。
ここで流れる曲「重なる心」は
あの時この場所で、滝先生が香織に
「あなたがソロを吹きますか」
と聞いたシーンと同じ曲で、どうしてもあのシーンと重ねてしまう。奏が立ち上がり、目に涙を浮かべると同時にメロディが変わる。段々と強くなっていくピアノの音が動揺している心に響いて辛かった。

よく観ると発表直前の
真由と久美子のユーフォ二人の立ち位置と
麗奈の立ち位置は少しズレている。
ユーフォ二人は後ろにいて、麗奈が前に立つ。
その状態で選ばれた真由が、前に進んで、麗奈と真由が同じ列になる。
その時のユーフォ二人を背後から撮った、久美子が真由より後ろにいるカットの遠近感が残酷な程に辛い現実を感じさせた。
だがその後、久美子は滝先生との回想を経て、前に進んで全員に向かって演説をする。
私はあのシーンで、久美子は麗奈と肩を並べたような気がした。

最後に

ここまで読んで頂きありがとうございます。何度も書かないと伝わらずに怒られるのでもう一度書きますが、これは私個人の解釈、私個人の意見です。これと違う意見を持っている方の所へ行って「おいお前その意見は違うだろ」と言いたい訳ではありません。だからここに書きました。
どちらかと言えばそういった人より、私と同じような意見の人の目に触れて、自分と同じ考えの人が居るんだと思って欲しいです。

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