真実の盗撮事件簿 六、仮想店舗の復元

映像を確認した次の段階である盗撮被害現場の特定作業に着手する。
本書では盗撮二次犯罪を想定し詳しくは書けないが、施設の構造上動かせない部分や特色のある部分を一か所、一か所パソコンに取り込み、類似する部分を集める作業から始める。

 通常の業務としての「撮影してきた映像から報告書作成のため、キャプションしていく作業」と同じなので、なんら問題もないのだが、盗撮ビデオのキャプション作業においては、雑にすると全く違った施設になりうることから慎重に取り込んでいく。

 そしてそれら取り出した画像を、一旦フォルダに一括していれ、ここからが大変な作業なのだがその画像を個別に分けながら、フォルダ別にしていく。つまり、パズルのピース作りのやり方である。
 数件の浴場施設に行った事がある人なら分かると思うのだが、近年の浴場施設ブームのためか、各店舗によって思考を凝らしたコンセプトで設計されている。

 和風・洋風・アジアン・ヨーロピアンと様々なコンセプトの元、オリジナルな空間を演出している。その基本的なコンセプトとは別に、脱衣所の壁の色や柄、注意書きなどのポップ、ダクト、観葉植物、ロッカーの形状、照明の位置、ドレッサーの色や形状、サッシのフレームの色など。浴場内ならそれ以上の特色がある。

 私達は、それら特徴のある共通のポイントを50ヶ所以上を決め、盗撮ビデオからそれらのポイントをパソコンに取り込み、切り出し、繋ぎ合わせバーチャルだが浴場施設を復元していく。

 この作業を日々の調査業務を終了してから毎日5時間がかりで解析するのだから、終わるのは毎日深夜3時を回った頃だった。

 私達はこの気が遠くなる作業に数ヶ月間を費やし、徹底的に解析した結果、パソコン上には数軒の仮想店舗の復元像が完成した。

 今だから書ける当時の裏話なのだが、この頃事務所で使用していたパソコンは、報告書作成用のワードと簡単な画像処理ができる程度のスペックしか要していなかった。

 だが、この復元作業を始めると膨大な画像処理能力が必要不可欠となる。画像の量が多い分、処理能力の限界を超え固まってしまう。

 その度に作業が止まり、やり直しとなるわけだから取り込む調査員の苛立ちは積もるばかりであったため、仕方なく作業ロスを抑えるために、ハイスペックのパソコンを新調することになった。その結果、ストレスなく快適に解析することができたのだったが……経営者の私からすれば痛い出費だったのは事実である。

追記 雑談
私達がしている特定方法は、本当にアナログ。
施設のパンフレット・温泉系の雑誌・ホームページの写真の本物の資料と仮想で作って資料との見比べなんだけど、施設の特徴ある部分のタイルの枚数からダクトの位置・形状いくつものポイントを照らし合わせ確信したうえで現場に出向き画角位置から手口など調べていくので100%この場所ですという自信を持っている。 だから文春をはじめとして私が特定した現場に疑いは一切なかったし、当該企業も否定されはことはない。
ある人が言った言葉だが、「平松さんが無料で動くことほど怖いものはない
」って言われたことがあるが、探偵としてのプライドと判断が間違っていた時のリスクを考えたら確信していても自分自身が納得できなかったら言えないし。その反面、事実が判明した時の脅威と本心で「ここで盗撮されています。施設の利用を辞めてください。」って言いたかった。
この続きの追記は後日書きますが被害者の顔を見ているだけに辛かったよ。

 

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