真実の盗撮事件簿 十八 盗撮防止法

 2006年2月某日、私は以前から交流のある田中氏(元月刊プレジャー副社長)のお誘いで、自由民主党参議院議員世耕弘成議員の後援会「わいわい会」に誘われ参加する事となった。

 本来、閉鎖的な職業柄の為か、人の多いところには余り好きでないのだが、田中氏をはじめ主催者の方とも面識があったことから参加させて頂いた。

 その場所へ、某地方新聞社主催のパーティーを終えた世耕議員がお越しになられた。
 その時、主催者の方から「平松さんが今活動している事を少しお話しをしてみては・・・」とお声がかかった為、私が活動している「盗撮犯罪の脅威と法整備の必要性」を酒の勢いもあり熱弁してしまった。

 世耕議員は、興味深く私の話を聴き「それ程酷い現状なら盗撮防止法を議員立法として作りましょう」と言った。
 まあ酒の席でもありそう深く考えてもなかったのだが、その後4月8日事態は大きく変わったのだった。

 世耕議員は当社の事務所に来られ実態が、法整備に向けて私なりの考えや、実情を伝えた。 そんなやり取りをしている中で、事態は突然動いた。

 「性的盗撮」に自民党の盗撮防止法ワーキングチーム発足
 朝一番で、M探偵社のM氏から電話がかかってきた。「平松さん、今朝の新聞を見ましたか。世耕さんが委員長となって盗撮防止法ワーキングチームが自民党に出来たという記事が載っています。」

 私は「一度新聞見て電話するわ」と言って一旦電話を切り、自宅で取っていた新聞を見たが載っていない。そこで、近くのコンビニへ行き読売新聞を購入した。世耕氏からは、2月の「わいわい会」の席以降連絡もなく「まさか」が素直な思いだった。そして新聞を購入しその場で見ると、私が世耕議員に話をした事やホームページにも書いている事を中心として法案が構成されていたのだった。
 
■「性的盗撮」に懲役刑、自民が禁止法要綱案自民党の盗撮防止法ワーキングチーム(事務局長・世耕弘成参院議員)がまとめた盗撮行為を厳しく罰する性的盗撮禁止法案の要綱案が22日明らかになった。
 性的盗撮や盗撮写真の提供・販売を禁止し、違反者に懲役2年以下または罰金200万円以下の罰則を科す内容だ。
 自民党は要綱案に基づいて法案を6月上旬に参院に提出し、今国会での成立を目指す。要綱案では、
〈1〉住居・浴場・更衣場・便所などで人が衣服をつけていない状態
〈2〉人のしゅう恥心を害する体の部分や下着を正当な理由なく撮影するこ      
とを「性的盗撮」として禁じた。性的盗撮写真については、販売だけでなくインターネット回線を通じた提供も禁止。

 提供目的の所持も禁じている。
罰則は「懲役2年以下または罰金200万円以下」とし、厳罰による抑止効果を狙っている駅。・百貨店・公衆浴場・電車・バスなど不特定多数の人が出入りする場所や乗り物の管理者には盗撮防止の努力義務を課した。盗撮については、芸能人を映したとされる映像やホテル・露天風呂等の映像が販売されるなど、営利目的の事件が相次いでいる。

 しかし、現在は盗撮自体を罰する法律がなく、軽犯罪法か各都道府県の迷惑防止条例の違反に問うことしかできない。罰則も、軽犯罪法違反では科料1万円未満か拘留で、厳罰化を求める意見が出ていた同チームは不自然な形の撮影器具の所持を禁じることも検討したが、報道機関の取材目的の撮影の規制につながりかねないとして盛り込まなかった。
(※読売新聞より抜粋)
 
 まさか、あの酒の席で世耕議員に話した事が、現実として打ち出されたのだから驚いたのは事実だった。世耕議員と会ったあの日から一度も連絡もなければメールすらない。そんな中で、盗撮防止法と思いながら何度となく新聞を見返したのだが、私がホームページに掲載している内容とさほど変わらない。
 そんな状況の中で私が主張してきたことが世の中に出て良いのだろうかと感じただけだった。
盗撮防止法が発表され2ヵ月がたった2006年6月26日、突然世耕議員から電話があり、事務所に来られたのだった。その第一声が、「思ったより早かったでしょう。
 本当に大変でしたよ。」だった。約一時間程だったが、法案にある「企業の努力義務」を中心に経緯をお伺いし、現場で苦戦しているとのことから、「盗撮映像の入手と現場特定等」について当社から資料を渡し、早期制定と盗撮に関する市場の動向などを話しただけだった。

 その後世耕議員と面会をしたのは、同年の末だったと思う。その時、手渡しで渡したのが次の内容である。
 「女性の羞恥場面を盗撮する社会問題について」
近年の撮影機器の進化向上に伴い、過去には想像もできなかった犯罪がまるで社会現象のように氾濫していることはご承知の通りであります。

 しかしながら、当社は、これら個人犯罪よりも組織化されしかも、営利目的でこれら一連の行為を行う集団または個人に強い憤りを感じております。

 そこで、請謁ながら次の通りこれまでの調査結果を踏まえ、若干の意見を記したいと考えておりますので、ぜひともご一読お願い申し上げます。
「制作」
法案制定直後・盗撮場所が特定されやすい映像(公衆浴場・脱衣所等)については、多くの発売元が販売を自粛しているようです。

 トイレ、医療機関、いたずら、パンチラ、ナンパ盗撮等は通常どおり販売をしておりますが、「制作・企画会社」など、責任を求められる可能性のある場合を考えてか、意図的に社名ない「不明商品」の販売が目立ってきています。又、ホテルの盗撮映像が裏DVDとして多数販売されているのが現状です。

 法案の発表後、盗撮映像の買い取り業者は、一時的に盗撮映像の買い取りを中断していましたが、別紙資料のとおり、買取を再開しました。
又多くの盗撮映像を専門に販売をしていたところは、店頭販売からインターネットを利用した、会員制サイトでの配信に移行しているようです。

 「その他動向について。」風呂盗撮などを販売しているセルビデオ店の店頭より回収し、一部の販売店や直営店での投げ売りが行われております。また配信元不明のダウンロードサイトについては、諸外国のサーバーを経由し、日本向けに配信するという手の込んだ方法を使用し、決済方法はクレジットカード払いを取っています。

 表向き、海外に居住の日本人向きということで法の網から逃れている者だと思われますが、リンク状況からして日本国内向きの配信は明らかであると思われます。盗撮防止法案に取り入れて頂きたい事項として次に上げる点を検討して頂きたい。

 第三者からの通報・告発・盗撮映像等の中から、被害者もしくは盗撮現場が判明した時は、権限を有しない第三者であっても、警察などの捜査機関に対し告発できる法案作りを進めて頂きたい。

 当社では現在三十一ヶ所の盗撮被害現場を完全特定している中で、企業の保身及び被害者が気が付かない現状が盗撮犯罪を助長する結果となっております。

 その中で、犯罪を確認できたものについては第三者からの通報を捜査機関は聞き入れていただける体制作りが犯罪を縮小する大きな切欠となると思います。
 
【盗撮の定義について】
 盗撮犯罪を撲滅する為には、明確な定義が必要だと思われます。よく当社には、本物と偽物についた問い合わせがあり、一見見た目では判明できないものも多数存在します。そこで、盗撮に類似する商品(偽物盗撮・類似する名称等)についても規制する必要が出てきます。
 製造元の説明義務と責任当局から依頼があったときは、メーカー(発売元)は、作品の製作に至った「経過説明を説明しなければならない」とする義務を科す。又はビデ倫等を含む自主規制団体への規制強化を与える必要があると思われます。

・製作過程の明確化の義務・製作者・販売元の社名/代表者/住所/連絡先を明記する。
・明記されていない商品は販売してはならない。等の規制が必要と思われます。
 地位を悪用した盗撮・医療機関を含む有資格者が職務を理由とした撮影を実施する場合の基準・医療機関を含む有資格者が職権を利用して犯した盗撮犯罪の罰則の強化有資格事業者、医療機関関係者、警察官、司法関係者、学校職員、指圧師、浴場施設、宿泊施設、更衣室・脱衣所を有する企業、一般大衆向けにトイレ等を貸し出している施設、エステサロン等にてその職務的立場を利用して行う盗撮行為。映像送信型特殊風俗業の一部改正の必要性及び海外向け配信の禁止。
 
 この時、世耕議員との面会は、防犯アドバイザーの京師美佳さんと世耕議員の事務所を訪ねたのだが、この時を最後に世耕議員から一切の連絡もなく、郵政民営化の問題で国会が解散したため、断ち切れになったままである。

追記
 その翌年、自民党が制定したのは「映画盗撮防止法」で合って、性的盗撮防止法でなかったのは事実である。 また、各メディアが私への取材の中で、世耕議員に聞いてみたらどうですかと言ったあとの回答は、世耕議員はノーコメントを貫いている。


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