『会話の科学』 - ニック・エンフィールド

 twitter(x)か何かで話題になっていた宣伝されていたので買った。興味深いと思うところもあったし、そうでもない部分も多く、ムラが大きかった。
 会話には文法とは別の一定のプロトコルがあるという話なのだが、そこまで詳しく研究されてないみたいで、ふんわりした話で終わっていた。この分野はまだ始まったばかりという印象。
 僕は他人とろくに喋らない生活をあまりに長く続けてしまったせいで日常会話がかなり怪しくなっている。会話プロトコルについて書籍から学習できるならそうしたかったのだが。研究が進んでないのは残念だ。

 会話に一定のマナーが存在するのもそうなのだが、伝える内容それ自体にルールというかテンプレが多分ある。お笑い芸人や噺家ほど形式化されていなくても、市井の一般人がする会話も多分そうだと思う。
 意味構造的な「型」が何種類かあって、その中身を入れ替えて話すだけで大抵の日常会話には用足りるのでは。ある話に対する返答も数種類あるパターンの中から選んでいて…という風に、何かミーム的に伝播して普及する会話作法みたいなものがありそう。多分ある。その研究をしてほしかった。民族学者が世界各地の神話や民話を渉猟して一定の共通項を見出したり、型を分類して研究したように、日常会話もそういった(意味や中身による)分類ができそうだと感じてる。

 「え?」とか「ん?」という辞書に載らない単語が会話の修復に役立ってるという話に割とページ数が割かれているのだが、果たしてそこにそこまで価値はあるだろうか。
 話者交代を正確かつ素早く実現できるのは、話の内容それ自体に意味的なまとまりや型があるからではないのか。

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